街頭取材
ビッグイシューの発売日は1日と15日。
夫がリビングのマガジンラックに手を突っ込んで、「新しいの買った?」と聞く。
まだ。
だって、このごろちっとも見かけないのだ。
たぶん雨降りのせい。
雨のときは、となりの駅の屋根の下で売るんだといってたから。
今日はひさしぶりに傘なしの外出。
青い空に大理石模様みたいな雲が広がっている。
この天気だったらいるかもしれない。
交差点に向かうと、横断歩道の向こうに販売者のよっしーが見えた。
「よっしー」というのは、彼からはじめてビッグイシューを買ったときに
もらった名刺に記されていたニックネーム。
いつもなら「帰りに買いますね」と声をかけてあいさつだけで通り過ぎる。
レッスンやトレーニングに行く道々に買うと、
薄いビッグイシューはバッグの中ですぐよれよれに曲がってしまうのだ。
でも、今日は先に買っちゃおう。
バッグの中にはクリアファイルが入ってるからだいじょうぶ。
右手に小銭を用意して信号が青に変わるのを待った。
横断歩道を渡っていくと、よっしーは誰かと話をしている。
先客?
だったら帰りにしちゃおうかな。
結構急いでいるし。
でも、私が横断歩道を渡り終えるころには、彼は話を終えて販売態勢に入っていた。
「こんにちは」
私はiPodのイヤホンを片方外して、300円を差し出しながらよっしーに近づく。
すると、さっきまでよっしーと話をしていた男性が
おもむろに大きなビデオカメラを肩にかついで私に向けた。
え? なに?
ちょっと面食らいながらよっしーとやりとり。
「暑いから気をつけてね」とかなんとか。
カメラはその一部始終を収めている様子。
地元のケーブルテレビでの紹介か何かかな。
じゃあね、とあいさつを交わしてふたたびイヤホンを耳に戻すと、大股で駅に向かいはじめた。
と、すこし歩いたところで、誰かが私の肩をたたく。
振り向くと、さっきカメラを向けていた男性だった。
「NHKですが、すこしお話を伺わせていただいてもよろしいですか?」
あら。
NHKの人がよっしーを取材してたんだ。
長くかからないならいいですよ。
そう答えた途端、男性はまたカメラを私に向け、
陰に隠れていた小柄な女性が長ーいマイクをぬっと差し出した。
いつも買ってるんですか、とか、中にはさまっている紙を知っていますか、とか、
3つ4つインタビューされた。
中にはさまっている紙は、よっしー手書きの手紙のコピーのこと。
もちろん知っている。
寒い日も、今日みたいな暑い日も、彼は交差点に立ち続けている。
その姿を見るたびに、ああ、がんばってるなあ、私もがんばろう、と思う。
がんばってる姿を見れば、応援しようと思う。
彼の姿が紹介されて、応援する人が増えるといいなと思う。
ところで、何の番組で紹介されるんだろう。
聞けばよかったな。
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