« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »

2006-05-28

あなたのお店の定着率は?

「あなたのお店の『パート・アルバイトの定着率』、高いほうですか?それとも低いほうですか?」と聞かれたら、みなさんはどちらと答えますか?

先日、コンビニ経営者を対象とした「パート・アルバイトの効果的な採用法と定着化」というセミナーの中で、上記のような質問を会場の参加者に投げかけました。その時に参考にしてもらったデータは下記のものです。

          3ヶ月以上   半年以上    1年以上

学生       77.8%    62.6%     41.3%

一般       78.4%    64.6%     45.8%

主婦       84.8%    75.9%     59.3%

《平均》     《81.1%》   《69.1%》   《50.6%》

【資料出所:㈱アイデム 人と仕事研究所「パートタイマー白書平成17年度版」】

※種別の定義(有効回答数2729人)
「学生」…学生であって、学業の合間にパート・アルバイトで働いている者
「一般」…パート・アルバイトで働いている者で、「主婦」「学生」以外の者
「主婦」…結婚している女性で、パート・アルバイトで働いている者

会場からの答えは、私が予想していたものよりもはるかに悪い結果でした。
自分の店は「定着率が高い」という方に手を挙げた人は、参加者の1割もいませんでした。
上記のデータを見ると、コンビニの学生アルバイトであれば、10人採用した場合1年後に約4人以上は残っている状態。さらにスーパーの主婦パートであれば、同じく約6人以上残っていないと定着率は高いと言えないわけですね。

さらに、参加者同士のグループ・ディスカッションからは、
「1年どころか半年勤まらないのが半分以上だよ」
「最近はトレーニング期間中に辞めるのも多くなってきたよ」
という声も聞こえてきました。
確かに、働く場所がいくらでもあり経済的にも豊かになった今の時代、いやなことがあるとすぐに辞めてしまう人が多くなってきているのは事実だと思います。

しかし、私の知り合いで3年ほどスターバックスでアルバイトをしている大学生に上記の数値を見せると、
「ずいぶんと低い数字ですね」
という返事が返ってきました。

この違いはどこにあるのでしょうか?
もちろん、コンビニやスーパーという【流通小売業】と【サービス業】という違い、さらには【本部主導(直営方式)】と【フランチャイズ方式(個人経営)】という前提条件の違いもひとつの要因ではあるでしょう。
しかし、それだけではないと思います。

私が考える一番の違いは、経営者の姿勢です。
スターバックスの実質的な創業者であるハワード・シュルツ氏は、
「社員を家族のように扱えば、社員は誠実に働き、持てる能力のすべてを発揮してくれるだろう。会社が社員を支えれば、社員も会社を支えるようになる」(「『勝ち組の人材マネジメント』毛利英昭:商業界」より)
と人材マネジメントの重要性を経営理念の柱にし、その理念を現場に浸透させるためにさまざまな仕組みを作っています。

もちろん冒頭に紹介したように、店長の経営理念が「働くスタッフの成長と満足度」に焦点があたり、定着率が高く地域のお客様に支持されているスーパー・コンビニ店もあります。
ただ、まだ多くのスーパー・コンビニの経営者(店長)は、「社員やパート・アルバイトの働く上での満足度を高めることが売上や利益を増やすことに結びついている」ということに気づいていない、または気づいても実行していないのが現状です。

アンケートの数値を見て、「自分の店は定着率が低いなぁ」と思った方は、ぜひ自分の経営における人材育成の優先順位を見直していただければと思います。

2006-05-19

売場のメンテナンス

先日、出張の帰り道にJR駅構内にある回転寿司に行きました。
「時間は無いんだけど、ちょっと飲んで軽く食べたいなぁ~」
という時に、よく利用しています。
少し前までの回転寿司は寿司と生ビールぐらいしかありませんでしたが、いまは焼酎や冷酒、つまみも「お刺身盛り合わせ」や「大根のあら煮」など豊富にあり、ちょっとした居酒屋ニーズも満たしてくれます。

店内には私のような考えで飲んで、食べている男性が5人ほどいました。
「小売業だけでなく、このようなところも業態間競争が厳しくなっているんだな、どこも大変だよなぁ」
などと考えながら飲んでいると、30席ほどの客席は次第に空きはじめ、寿司を運ぶコンベアーの上も皿の間隔が空きはじめました。
すると、私の左側8席ほどの空席部分のコンベアーが閉鎖され、電車が線路の分岐部分で進行ルートを変えるかのように流れが変わり、皿の間隔も埋まって、コンベアー全体のボリューム感が出てきました。
なるほど、このぐらいの時間帯になるとお客が少なくなるので、使用する客席とコンベアーも減らせるようにしてあるんですね。

あるスーパーでは惣菜の盛り付けに皿を使っていますが、その皿の大きさは1種類だけでなく2~3種類用意しているという記事を読んだことがあります。つまり、販売ピークの夕方はたくさん陳列をしないと欠品する可能性もあるため、大きな皿が必要です。しかし、販売のピークを過ぎた夜8時頃に大皿を満たす量を作れば、廃棄ロスが多量に出てしまいます。
そこで、この時間帯になると残り具合に応じて、商品を小さな皿に盛り付け直すのです。そして、皿と皿の間に素材の野菜などを置いて、売場全体のボリューム感を演出するという内容でした。

そんなことを考えながらの帰宅途中、コンビニの弁当ケースの前に立った時、
「この店は商売する気あるのか!」
と、思わず心の中でつぶやいてしまいました。

おにぎり、寿司、弁当の残数が少ない弁当ケース、さらには惣菜ケース、パンの陳列棚、どこを見ても歯抜け状態でとても売場といえる状態ではありません。時間帯的に商品が少なくなるのは仕方ないですよ。でもね、中央の棚段に商品を集めるとか、入り口の客動線側に商品を寄せるとか、もう少し「売場のメンテナンス」をしっかりやりましょうよ。

先ほどの回転寿司やスーパーの惣菜皿の例のように創意工夫をして、手を入れれば入れただけ売場は“活きて”きます。そして、その手間をかけた分はお客様にしっかりと伝わるものなのです。

2006-05-14

マンネリ化した売場の改革

5月10日(水)付日経MJで目を引いたのが、「日本の小売業調査 速報版」です。
見出しは“百貨店回復、攻めに転換”。景気回復を受け新富裕層の消費が活発化してきたことが、最大の要因だと分析しています。
それに反してコンビニは、“コンビニ、成長力に陰り 客単価低下”。記事の中では加盟店オーナー数人の声を紹介し、客単価の低下が売上低迷原因のひとつになっていると分析をしています。また、経営者の視点としてコンビニ業界からは2人のコメントが載せられていました。

【土方清・サークルKサンクス社長】
景気回復による消費支出増は百貨店、高級専門店に主に向かっており、コンビニには現時点でプラスに働いていない。商品のイノベーション(刷新)を進めて、団塊の世代以上の中高年層をさらに増やす取り組みをしなければいけない。店舗も今まで以上に積極的に立地移転を進めていかないと、既存店売上高の低迷には歯止めがかかりそうにない

【上田準ニ・ファミリーマート社長】
景気回復とは裏腹に、コンビニは業態の垣根を越えた競争の激化にさらされている。転換期を迎えた、あるいは過ぎたと思う。これをどう立て直していくか。どのチェーンに行っても代わり映えしないマンネリ化した売り場の改革が急務だ。

2人それぞれ独自のとらえ方をしていますが、私はファミリーマート・上田社長の意見に共感を覚えます。
コンビニ各チェーン共に地域ごと(東北・北関東・首都圏など)の商品開発に力を入れ、画一的な品揃えを脱しようと努力をしています。しかし、その地域内の店しか利用しないお客様側にとっては、ワンパターンの品揃えになっていることに変わりはありませんよね。ここに本部サイドの視点と加盟店、さらにはお客様とのギャップがあり、お客様から見たら「マンネリ化」は解決されていないわけです。

お客様の価値観が多様化し、さらに容易にインターネットなどを通して大量の商品情報を手に入れることが出来るようになった今、画一的な品揃えではとてもお客様の消費意欲を喚起することはできません。
「マンネリ化した売場改革」のためには地域(エリア)単位だけでなく、より細分化した個店レベルの特徴づけが必要なのではないでしょうか?

ここに、「マンネリ化した売場改革」に取り組んでいる事例を2店紹介したいと思います。
まず、1店目は私の学生時代の友人の店です。彼の店は決して恵まれた立地ではありません。しかし、開店後3年目でチェーンの平均日商を30%も上回っており、今も前年比をクリアしています。
先日、久しぶりに飲んだとき、「どうやって伸ばしているんだ?」と聞いてみると
「それはさぁ、いろいろあるけれど売場で遊ぶことだよ」と言います。
つまり、本部とのルールは守りつつ独自の売場作りをし、お客様が「ここの店はおもしろいなぁ」と思えるようにしているのだそうです。
例えば地元のお酒を独自のルートで仕入れ、ゴンドラ棚段1枚分に展開する。さらに、発注担当者が自分で味わった感想もPOPとして付ける(これは他の売場の担当者も行なっている)。つまり、売場担当者の顔が見える店なんですね。
このような事例はスーパーや百貨店ではあたりまえのことですが、コンビニで出来ている店はまだまだ少ないのではないでしょうか。

ただ、この店の売上が伸びている理由はこれだけではありません。雨の日に車で来店されたお客様がたくさんの商品を購入された場合、スタッフが車まで荷物を運ぶサービスもしています(実は駐車場が広い)。さらには地域の皆さんに“お店の存在そのもの”を知っていただく意味で、予約商品PRのチラシなどを定期的に新聞折込みに入れているそうです(予約を取ることを最優先目的にはしていない)。

もう1店は私の家の近所にあるセブンイレブンの事例です。
この店のデザートコーナーは近隣のセブンイレブンと全く異なります。何が異なるかというと、セブンイレブンが扱っているミールサービス(宅配サービス)のデザートをお店で販売しているのです。通常の手作りデザートよりも3~5割値段が高めですが、よく売れているようです。
ただ、POPに「販売数量限定」と書かれていることがよくあります。私も買ってみましたが、賞味期限が通常の手作りデザートの半分ぐらいと大変短くなっています。なるほど、防腐剤や人工の材料を使わないため、美味しいけど販売期間は短くなってしまう。これでは販売する店としてリスクは大きくて大変です。そこで「数量限定」=売り切りなんですね。
そうか、これなら欠品してもお客様に与えるマイナスイメージは軽減できますね。「数量限定」だと希少価値も高まり、購買意欲も喚起できますしね。

コンビニは24時間・年中無休という特性上、欠品することを「悪」としていますが、特徴づけをするためにはこのような方法も活用することが必要な時代なんだと思います。

« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »