「棚卸減耗」と「万引」の相関関係
「全国万引実態調査報告書」(出所:特定非営利活動法人全国万引犯罪防止機構)を読みました。
今回の調査回答企業数は412社、ちなみにスーパーは87社、コンビニ・ミニスーパーは45社でした。年間の万引被害件数としては、回答小売業平均で285件、捕まえた万引犯の男女比は男性55.4%、女性42.2%。
職業別に見ると「無職」24.1%、「主婦」21.6%、「社会人」15.6%、「高校生」11.8%、「中学生」9.2%、「不明」7.7%、「小学生」4.4%、「その他」3.31%という順でした。
万引被害の増減状況はどうかというと、全体では1年前比較で「増加」28.0%、「減少」17.0%。3年前比較では「増加」30.1%、「減少」17.0%と増加傾向にあるようです。この要因としては「万引に対する犯罪意識の欠落」「従業員の防犯意識の低下」「長引く経済不況」などが挙げられていました。
確かに調査データを細かく見ていくと、収入減に伴い生活必需品を万引きするケースが多くなっていることは伺えます。ただ、最近の特徴として万引きした商品そのものを消費することよりも、現金化することが目的となっているケースが増加しており、その要因として「中古ショップの増加」と「インターネットオークションの出現」が挙げられていました。
万引の実態そのものにも興味はありますが、私が特に興味を持ったのは「不明ロス」とその中に占める「万引被害」の比率でした。「不明ロス」とは、いわゆる棚卸減耗(企業によっては“品減り”や“棚不足”ともいう)です。
調査データによると、回答企業209社の年間総売上高における不明ロス金額の平均比率は直近年度で0.97%。主な業態別では、
■生活協同組合・・・3.18%
■書籍・文具・・・1.77%
■服飾・服飾雑貨・・・1.54%
■総合DS・・・1.34%
■スーパー・・・1.23%
■コンビニ・MS(ミニストア)・・・0.78%
私は万引きの多い「書籍・文具」がダントツで1位だろうと思っていたのですが、生活協同組合の突出した不明ロス率には驚かされました。この数値は直近年度の特別要因かと思いましたが、その前年度も生活協同組合は3.41%、前々年度も数値は出ていませんでしたが、1位でした。生活協同組合は基本的にスーパーと同様の商品を扱い、同様の販売手法をとっているわけですから、この不明ロス率の高さは異常です。
また、コンビニ・MSの0.78%も高いと思います。これはコンビニだけでなく、MSも含まれているせいでしょうか。個人経営ではない大手のコンビニチェーンであれば、もう少し低めの数値(0.5%程度)になると思います。さらに、店の商品と人の管理が行き届いているコンビニであれば0.25%(日商50万円として売価で1日1250円)以下で管理できるはずです。
さらに、不明ロスの中で万引被害と推定される比率に対するアンケート結果と対応についても次のように問題提起されていました。
「10%未満:29.1%、わからない:23.8%、50%未満を合わせると50.7%であり(スーパーの47.1%は30%未満と回答)、残りは万引被害以外の不明ロスということになる。その中には従業員による不正(いわゆる『内引き』)、流通過程における盗難・減耗等が含まれると思われ、不明ロス問題は万引被害対策だけでは解消しないことを示唆している」
今まで小売業の棚卸減耗と内部不正の相関関係について調べることができるデータをなかなか探し出すことができませんでした。しかし、この調査報告書を読んで、「棚卸減耗」異常値が出た場合、要因の多くが従業員の内部不正(内引き)にあるのだということを確信しました。
コンビニ・スーパーの現場には、働く者にとって魅力的な商品とお金がたくさんあります。
最初から不正をしようと思って仕事を始める従業員は基本的に少ないはずです。しかし、その従業員が不正行為に手を出してしまうケースが多々あるのは、商品とお金の管理にスキがあるからです。
「つい魔がさして…」ということのないよう、人・物・金の管理を徹底することは重要ですね。