コンビニの加盟希望者獲得策
2006年11月9日(木)付けの日本経済新聞・朝刊に、“オーナー確保コンビニ加速”という見出しで、セブンイレブンの「派遣会社との提携」、ローソンの「休暇制度の充実」、さらにはサークルKサンクスの「ベンチャー制度」に関する記事が掲載されていました。
加盟店がスタッフの採用に苦労しているのと同様に、コンビニ本部もまたオーナー獲得に大変苦労をしているようです。
その要因としては、コンビニ店が全国で4万店を超え(2006年9月末時点で41,998店:大手15チェーン合計、月刊コンビニ調べ)、競合が激化してきたことにより成長ビジネスとしての魅力が低減してきたこと、さらには景気が回復基調にあり人材確保が難しくなっていることが考えられます。
記事によると、「セブン-イレブン・ジャパンはリクルートグループの人材派遣大手リクルートスタッフィング(東京・千代田区)と提携し、オーナー候補者を募集する。セブンイレブンは2007年2月期に過去最高の950店の新規出店を計画、うち9割以上はFC店の予定。自社のホームページや説明会による従来の募集だけではオーナー確保が難しいと判断、初めて外部企業と提携した」とあります。
この最後の“初めて外部企業と提携した”というところに、「セブンイレブンの苦しさが表れているな」と個人的には感じます。
というのも、セブンイレブンはもともと企業戦略・戦術を外部に頼らず内製化する傾向が強い会社です。そのセブンイレブンが加盟店獲得というフランチャイズビジネスの導入部として重要な業務を外部企業と提携するのですから、これは大きな変化です。
「隔週開催になったFC会議」「調味料やドリンクの値下げ」なども含め、セブンイレブンの成功体験が30年という月日を経て壁にぶつかっていることを感じます。
また、「ローソンはFC店オーナーを対象に年間7日を上限に、休みたい時に本部から店長の代行を有料で派遣する休暇制度を導入した」とありました。
この目的は新規のオーナー獲得策というよりも既存店のオーナーニーズへの対応、契約更新への動機づけとしての要素が強いようです。
さらに、サークルKサンクスの“ベンチャー制度”も紹介されていました。
これは「オーナー候補者に対して直営店で契約社員として最低半年間研修を受けることを条件に、加盟時に必要な加盟料などを軽減する」という制度。
1年間働いた場合、通常300万円かかる加盟料が65万円まで軽減されるとあります。新卒者向けの企業インターンシップ的要素と開業資金に余裕の無い希望者にも範囲を広げるということが目的です。
それぞれのチェーンがさまざまな工夫をしていますが、なかなか成果に結びついていないのが現状のようです。
私は、本部がさらに店舗展開を進めていくにあたり、新規オーナーの獲得よりも既存店オーナーの多店化をより促進することの方が効果的だと考えています。
というのも、コンビニ店同士や異業種との競合により、コンビニ1店あたりの商圏は次第に狭くなっています。さらにインターネットによる購入増加により、お客様の購入シェアも減少しつつあります。そのような経済環境の中で既存店が継続的に売上を伸ばし、利益を増やすことは困難です。
その結果、本部は増収増益(店舗の拡大による)・加盟店は減収減益という構図が生まれています。これでは、フランチャイズビジネスの基本理念である“共存共栄”は成立しなくなり、既存店主のモチベーションが下がると同時に、新規加盟者が減るのも当然です。
一部のチェーン本部では「複数店経営をすると管理レベルが低下する」という理由で、薦めていないところもあります。しかし、経営者として素質のある人が3~5店程度多店舗展開し、成功している事例はたくさんあります。また逆に経営センスの無い人は1店でもうまくいっていないのが実情です。
ぜひ、コンビニ本部には複数店経営のための環境整備、特にインセンティブの導入をより進めていただきたいと思います。なぜなら、そのことが優秀な加盟店主のモチベーションを上げ、オーナー確保に困らないチェーンを作る一つの手法であると考えるからです。