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2006-11-27

コンビニの加盟希望者獲得策

2006年11月9日(木)付けの日本経済新聞・朝刊に、“オーナー確保コンビニ加速”という見出しで、セブンイレブンの「派遣会社との提携」、ローソンの「休暇制度の充実」、さらにはサークルKサンクスの「ベンチャー制度」に関する記事が掲載されていました。

加盟店がスタッフの採用に苦労しているのと同様に、コンビニ本部もまたオーナー獲得に大変苦労をしているようです。
その要因としては、コンビニ店が全国で4万店を超え(2006年9月末時点で41,998店:大手15チェーン合計、月刊コンビニ調べ)、競合が激化してきたことにより成長ビジネスとしての魅力が低減してきたこと、さらには景気が回復基調にあり人材確保が難しくなっていることが考えられます。

記事によると、「セブン-イレブン・ジャパンはリクルートグループの人材派遣大手リクルートスタッフィング(東京・千代田区)と提携し、オーナー候補者を募集する。セブンイレブンは2007年2月期に過去最高の950店の新規出店を計画、うち9割以上はFC店の予定。自社のホームページや説明会による従来の募集だけではオーナー確保が難しいと判断、初めて外部企業と提携した」とあります。

この最後の“初めて外部企業と提携した”というところに、「セブンイレブンの苦しさが表れているな」と個人的には感じます。
というのも、セブンイレブンはもともと企業戦略・戦術を外部に頼らず内製化する傾向が強い会社です。そのセブンイレブンが加盟店獲得というフランチャイズビジネスの導入部として重要な業務を外部企業と提携するのですから、これは大きな変化です。
隔週開催になったFC会議」「調味料やドリンクの値下げ」なども含め、セブンイレブンの成功体験が30年という月日を経て壁にぶつかっていることを感じます。

また、「ローソンはFC店オーナーを対象に年間7日を上限に、休みたい時に本部から店長の代行を有料で派遣する休暇制度を導入した」とありました。
この目的は新規のオーナー獲得策というよりも既存店のオーナーニーズへの対応、契約更新への動機づけとしての要素が強いようです。

さらに、サークルKサンクスの“ベンチャー制度”も紹介されていました。
これは「オーナー候補者に対して直営店で契約社員として最低半年間研修を受けることを条件に、加盟時に必要な加盟料などを軽減する」という制度。

1年間働いた場合、通常300万円かかる加盟料が65万円まで軽減されるとあります。新卒者向けの企業インターンシップ的要素と開業資金に余裕の無い希望者にも範囲を広げるということが目的です。

それぞれのチェーンがさまざまな工夫をしていますが、なかなか成果に結びついていないのが現状のようです。

私は、本部がさらに店舗展開を進めていくにあたり、新規オーナーの獲得よりも既存店オーナーの多店化をより促進することの方が効果的だと考えています。

というのも、コンビニ店同士や異業種との競合により、コンビニ1店あたりの商圏は次第に狭くなっています。さらにインターネットによる購入増加により、お客様の購入シェアも減少しつつあります。そのような経済環境の中で既存店が継続的に売上を伸ばし、利益を増やすことは困難です。
その結果、本部は増収増益(店舗の拡大による)・加盟店は減収減益という構図が生まれています。これでは、フランチャイズビジネスの基本理念である“共存共栄”は成立しなくなり、既存店主のモチベーションが下がると同時に、新規加盟者が減るのも当然です。

一部のチェーン本部では「複数店経営をすると管理レベルが低下する」という理由で、薦めていないところもあります。しかし、経営者として素質のある人が3~5店程度多店舗展開し、成功している事例はたくさんあります。また逆に経営センスの無い人は1店でもうまくいっていないのが実情です。

ぜひ、コンビニ本部には複数店経営のための環境整備、特にインセンティブの導入をより進めていただきたいと思います。なぜなら、そのことが優秀な加盟店主のモチベーションを上げ、オーナー確保に困らないチェーンを作る一つの手法であると考えるからです。

2006-11-13

今年も高まる「おせち」予約合戦

買物に出かけたついでに百貨店(東京・池袋の西武百貨店)の「おせち予約コーナー」に立ち寄ってみました。
販売員に話を聞いたところ、今年は昨年より1週間展開を早めてのスタート、すでに限定高額商品(14万円~16万円)が7種類完売だそうです。また、今年の特徴として1万円から1万五千円程度の二人用の種類が増えているということです。その他に「洋風のおせち」が今年は人気がありますよ、とのことでした。

「おせちを作らずに買う」という現象は以前から一部にはありましたが、いつ頃から定着してきたのでしょうか。

一般的には1999年頃からだといわれています。
1999年末はコンピューターの2000年問題が取りざたされ、さらに2001年9月11日にはニューヨークで飛行機によるテロが発生しました。この期間、年末年始に海外旅行を控え自宅で過ごした人が「高級おせち」を購入、リピーターとなり「おせち」の価格帯と種類も増え、購入者層が拡大してきたと考えられています。

その他、女性の社会進出や「時間価値」重視型生活の普及も重要な要素として見落とすわけにはいきません。
 ①年末ギリギリまで働く主婦パートが、お正月の準備をする時間がない
 ②若い共稼ぎ夫婦の妻も年末年始ぐらいゆっくり休みたい
 ③時間とお金に余裕のある年配の主婦が自分の時間を優先させる
…などなど。

ただ、同じおせちでも伝統的な具材とスタイルのものは人気に陰りが見られます。そこで、今年は健康志向を反映したものや年末のパーティー需要を意識したオードブル中心の料理(洋風おせち)など、各社さまざまな工夫を凝らしています。

高島屋は「薬膳おせち」:52,500円
東京銀座の中国薬膳料理店、星福(しんふう)の製造で、クコの実や冬中夏草などを使い、健康に留意する顧客をターゲットにする。

三越は「まごはやさしい」:18,900円
まめやゴマなど体に良い7種類の食材を使用して健康をアピール。食材の最初の文字を並べて商品名に。食材のうんちくが学べる「すごろく」付き。

小田急百貨店は人気レストラン「クイーン・アリス」のおせち料理:39,900円
特徴はパッションフルーツやハイビスカス、マンゴー、ココナッツのゼリーを添えた色鮮やかなデザート類。年末年始のパーティー向き。

イトーヨーカドーは「関西おせち」:14,700円
明石のたこや神戸牛など関西ならではの食材と味付けで特徴を出す。昨年は「北海道おせち」が好評だったので、これに続く第二弾。

ついにここまできたかと思わせるのは、
セブンイレブンの「NEW YEARわんダフルおせちセット」:5,000円
この商品は飼い犬用で、ペットと一緒に正月を祝いたいという需要に応えるために開発されたという。取り扱いは東京23区など一部の店(1883店)。

内容はというと、獣医やペットの栄養管理士が監修したもので、サケの南蛮漬け、ビーフステーキなど十種類の料理が入り、いずれも砂糖の代わりにオリゴ糖を使用したほかアレルギー成分の表示もされているというから驚き!

今年もますます加熱する“おせち商戦”、「エスカレートしすぎでは…」と懸念しているのは私だけでしょうか。

2006-11-05

価格競争よりも「顧客・従業員」満足度

天気に恵まれた3連休の最終日、かすかな潮風の香りを感じる東京湾に面した江東区豊洲に行ってきました。目的は、10月にオープンした大型商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」に入っている食品スーパー「あおき」の視察です。
昨日届いた日経ビジネス:11月6日号(書店等では6日発売)に、「非効率ゆえ高収益の商人道」というタイトルで「あおき」が紹介されていて、ぜひ自分の目で見てみたいと思ったのです。

「あおき」は伊豆半島で5店舗、静岡県東部で5店を経営し、年商は180億円前後の規模は小さい地方スーパーです。しかし経常利益は9億円と、1~2%が当たり前の食品スーパー業界で5%という驚異的な数字をだしています。
この強さの源泉として記事内では「顧客満足度を高める仕組みが武器」と、次の4つの戦略を紹介しています。

①内装コストは百貨店の2倍
店舗の内装には徹底的にこだわる。人工大理石の床、鏡張りの天井など、坪当たり内装費で100万円をかける。店の入り口には自動演奏のピアノが置かれている
②バイヤーを置かない
鮮魚、精肉、青果など分野別に1店舗あたり8人のチーフを置く。売場の商品陳列はもちろん、自らトラックに乗り込んで市場に商品の買い出しに出ることまで1人でこなす
③非ドミナント出店
静岡県内では1店舗当たり20億円、首都圏では40億円売れる場所にしか出店しない。結果として、店舗間の距離は数十kmにもなる
④袋詰め係をレジに配置
レジには、会計係と袋詰め係(サッカー)を置く。人件費よりも、プロが袋詰めしてくれることで得られる満足度を優先する

実際に自分で行ってみて納得したのは①と②でした。
Photo_1特に驚いたのは店舗への入り口(写真参照)。
どうみても食品スーパーというよりは、ファッション関係の店の入り口です。
入り口すぐの左横には自動演奏のピアノがあり、イージーリスニングの洋楽が演奏されています(店内BGMにもなっている)。そしてピアノの隣は花売り場。
床はモノトーンのデザインがおしゃれな人口大理石。さらに天井の照明はやわらかな光のダウンライト、レジ上はハロゲンランプを使ったシーリングライトと店内全体におちつきと高級感が漂います。

そして右手には青果売場。
陳列ケースは一般的な白と蛍光灯ではありません。店全体で陳列ケースは黒が基調となっていて、照明も間接照明が多く使われています。そのため、特に青果売場のりんごの赤、レタスの緑、レモンの黄色などの色合いが引き立ち購買意欲をそそります。

価格を見ると、ほうれん草1束100円、レタス・キャベツも1個100円と、特売ということもあるのでしょうが安い! また、牛乳や納豆・たまごなどの価格を見ても決して一般のスーパーより高いとは感じませんでした。

また、記事ではハード面だけでなく、同じレベルでのソフト面の強さも書かれていました。
それが②です。
ちょうど、私が鮮魚売場を見ている時に、いかにも常連のご夫婦が売場の店員(チーフ?)と話をしていました。
お客様「今日はいいサバは入っている?」
店員「いや~、連休で築地が休みなんでね」
よく見ると、売場にはサバの切り身は並んでいました。しかし、お客様にそのサバがあることを知らせてはいましたがお薦めはしていませんでした。お客様の「今日入ったいいサバ」という要望は満たせないと判断したからでしょう。

あおきの社長は「商人であれ、商店主であれ」ということを常にチーフ達に伝えているそうです。そのための仕組みがマーチャンダイザー・バイヤー・販売担当者を兼ねた8部門のチーフなのです。

ただ、①~④のような仕組みではコストがかさむのでは?という記事内の質問には、
「コストを抑えることよりも顧客満足度と従業員満足度を高めることを優先する。そのためのコストは販売価格に反映させてもかまわない」
と答えています。

ここに「価格を下げなければ競合に負けてしまう」という一般的な考えを断ち切り、あくまでも価格以外の顧客志向で勝負をするという強い信念を感じることができます。

この点はいまのコンビニ業界、特にセブンイレブンには見習ってほしいと思います。

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