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2006-11-05

価格競争よりも「顧客・従業員」満足度

天気に恵まれた3連休の最終日、かすかな潮風の香りを感じる東京湾に面した江東区豊洲に行ってきました。目的は、10月にオープンした大型商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」に入っている食品スーパー「あおき」の視察です。
昨日届いた日経ビジネス:11月6日号(書店等では6日発売)に、「非効率ゆえ高収益の商人道」というタイトルで「あおき」が紹介されていて、ぜひ自分の目で見てみたいと思ったのです。

「あおき」は伊豆半島で5店舗、静岡県東部で5店を経営し、年商は180億円前後の規模は小さい地方スーパーです。しかし経常利益は9億円と、1~2%が当たり前の食品スーパー業界で5%という驚異的な数字をだしています。
この強さの源泉として記事内では「顧客満足度を高める仕組みが武器」と、次の4つの戦略を紹介しています。

①内装コストは百貨店の2倍
店舗の内装には徹底的にこだわる。人工大理石の床、鏡張りの天井など、坪当たり内装費で100万円をかける。店の入り口には自動演奏のピアノが置かれている
②バイヤーを置かない
鮮魚、精肉、青果など分野別に1店舗あたり8人のチーフを置く。売場の商品陳列はもちろん、自らトラックに乗り込んで市場に商品の買い出しに出ることまで1人でこなす
③非ドミナント出店
静岡県内では1店舗当たり20億円、首都圏では40億円売れる場所にしか出店しない。結果として、店舗間の距離は数十kmにもなる
④袋詰め係をレジに配置
レジには、会計係と袋詰め係(サッカー)を置く。人件費よりも、プロが袋詰めしてくれることで得られる満足度を優先する

実際に自分で行ってみて納得したのは①と②でした。
Photo_1特に驚いたのは店舗への入り口(写真参照)。
どうみても食品スーパーというよりは、ファッション関係の店の入り口です。
入り口すぐの左横には自動演奏のピアノがあり、イージーリスニングの洋楽が演奏されています(店内BGMにもなっている)。そしてピアノの隣は花売り場。
床はモノトーンのデザインがおしゃれな人口大理石。さらに天井の照明はやわらかな光のダウンライト、レジ上はハロゲンランプを使ったシーリングライトと店内全体におちつきと高級感が漂います。

そして右手には青果売場。
陳列ケースは一般的な白と蛍光灯ではありません。店全体で陳列ケースは黒が基調となっていて、照明も間接照明が多く使われています。そのため、特に青果売場のりんごの赤、レタスの緑、レモンの黄色などの色合いが引き立ち購買意欲をそそります。

価格を見ると、ほうれん草1束100円、レタス・キャベツも1個100円と、特売ということもあるのでしょうが安い! また、牛乳や納豆・たまごなどの価格を見ても決して一般のスーパーより高いとは感じませんでした。

また、記事ではハード面だけでなく、同じレベルでのソフト面の強さも書かれていました。
それが②です。
ちょうど、私が鮮魚売場を見ている時に、いかにも常連のご夫婦が売場の店員(チーフ?)と話をしていました。
お客様「今日はいいサバは入っている?」
店員「いや~、連休で築地が休みなんでね」
よく見ると、売場にはサバの切り身は並んでいました。しかし、お客様にそのサバがあることを知らせてはいましたがお薦めはしていませんでした。お客様の「今日入ったいいサバ」という要望は満たせないと判断したからでしょう。

あおきの社長は「商人であれ、商店主であれ」ということを常にチーフ達に伝えているそうです。そのための仕組みがマーチャンダイザー・バイヤー・販売担当者を兼ねた8部門のチーフなのです。

ただ、①~④のような仕組みではコストがかさむのでは?という記事内の質問には、
「コストを抑えることよりも顧客満足度と従業員満足度を高めることを優先する。そのためのコストは販売価格に反映させてもかまわない」
と答えています。

ここに「価格を下げなければ競合に負けてしまう」という一般的な考えを断ち切り、あくまでも価格以外の顧客志向で勝負をするという強い信念を感じることができます。

この点はいまのコンビニ業界、特にセブンイレブンには見習ってほしいと思います。

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