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2007-01-22

コンビニに対するエルダー世代の実態・意識調査

セブンイレブン・ジャパンが昨年11月、全国の30代~60代の一般男女・計2000名を対象に実施した「コンビニエンスストアに対するエルダー世代の実態・意識調査」の結果を見ると、50代~60代の人がいかにコンビニを上手に活用しているか、またコンビニを選ぶ際にどれだけ「お弁当」「おにぎり」を重要視しているかがよくわかります。
【調査結果の詳細はhttp://www.sej.co.jp/news/h18simo/121501.html

コンビニを取り巻く環境、特に商圏人口の年齢構成は大きく変化しています。セブンイレブンでもお客様の平均年齢は36.6歳と、10年前と比較して5.5歳も上昇しているそうです。この調査結果は、今後コンビニにとって大きな課題となる「高齢化問題」や「団塊世代退職問題」に対して、進むべき方向性を示唆しているのではないかと思います。

【質問①】
「コンビニエンスストアになくてはならない商品」(複数回答)
1位:お弁当     62.3%
2位:おにぎり    59.5%
3位:ペットボトル  54.4%
4位:雑誌      22.1%
5位:サンドイッチ  17.2%

特に1位の「お弁当」は、60代男性で見ると68.8%が回答しており、その支持の高さに驚かされます。ただ、実際に売場にあるお弁当類を見ると、この年代の需要を十分取り込んでいないチェーンや店が多々見受けられます。48歳の私でも買いたい弁当がないコンビニが多いのですから、エルダー世代はなおさらだと思います。

2位の「おにぎり」では、50代女性だと64.7%、60代女性ではさらに高くなり69.6%、同年代の男性よりも10ポイント以上高い点が特徴的です。
この数値の違いはどこからくるのでしょうか。
ひとつは男女の「消費シーンの違い」にあるのではないかと思います。

別の質問:「お弁当・おにぎりを食べるシチュエーションは」では、男性エルダー世代(50代・60代)の77%が「1人で」と回答しています。これに対して女性エルダー世代では、50代で52.3%、特に60代では45.7%の回答にとどまっています。

女性エルダー世代がコンビニを利用して食事をする場面としては、「誰かとおしゃべりをしながら楽しく」という消費シーンが浮かんできます。友人同士が集まって一緒に昼食という時は、お互いにおかずやお菓子を持ち寄ってというシーンも多いのではないでしょうか。そんな時は「お弁当」よりも、それぞれ好みの「おにぎり」の方が食べやすいのかもしれません。

では、その「お弁当」「おにぎり」を購入するコンビニはどのような基準で選んでいるのでしょうか。
【質問②】
「コンビニエンスストアのお弁当やおにぎりを購入する際に重視している点」(複数回答)
1位:美味しさ    74.9%
2位:価格      66.4%
3位:種類の多さ  41.2%
4位:食材、品質  33.7%
5位:安全性     31.2%

この結果からコンビニ各店が今後エルダー需要を取り組んでいくためには、本部の商品開発力と販促活動が大切であることがよくわかります。
特に回答率の高い1位の「美味しさ」(女性60代では83.6%)、2位の「価格」、これらは加盟店ではどうすることもできません。

「おにぎりが美味しいのはやっぱりセブンイレブン」
というエルダーの声をよく聞きます。
確かにセブンイレブンは他チェーンに先駆けてお弁当やおにぎり、さらには調理麺などの品質向上に長年努めてきました。しかし、最近では他のチェーンも力を入れ始め、品質格差が縮小してきています。あとはいかに今までのイメージを払拭するかがポイントとなります。
セブンイレブン以外のチェーンは、美味しくなったお弁当やおにぎりを食べてもらう「機会(試食会など)」をどのように増やすか、ここに焦点を当てた販促活動がますます必要になってくるでしょう。

そして、加盟店がやらなければいけないことは「発注レベルの向上」です。
いくら美味しい商品ができても、時間帯別の品揃え量が不適切で、便ごとの商品が重なり、常に古い商品を売っていたのでは美味しさのアピールはできません。また、本部推奨の種類が増えても、発注量が不適切で、たびたび欠品をしていたのではお客様に失望感を与えてしまいます。

私はこの実態・調査報告書から「高齢化問題」や「団塊世代退職問題」への対応は、本部と加盟店がそれぞれの役割を明確にし、実行することではじめて可能になるということを再確認しました。

2007-01-08

2007年は「ゼロベース思考」で考えよう!

新年あけましておめでとうございます。
昨年中は「石川和夫の流通業界ウォッチング」をご覧いただき、ありがとうございました。今年もコンビニやスーパー業界で見聞きしたことに関する「私見」を徒然なるままに書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

さて、年が明けて気になるのは今年の景気の行く末です。
報道によると、
「大手百貨店が4日まとめた『初売り』状況によると、過去最高の売上高を記録する店舗が相次いだ。伊勢丹が直営の七店舗すべてで最高となったほか、ミレニアムリテイリングでは西武百貨店池袋本店(東京・豊島)やそごう横浜店(横浜市)などの主力店が軒並み記録を塗り替えた。そのほか、大丸梅田店(大阪市)が過去最高となったほか、東武百貨店池袋本店(東京・豊島)も12億6000万円を売り上げて、創業以来最高となった。ミレニアムリテイリングではそごうの千葉店(千葉市)や川口店(埼玉県川口市)も記録を更新した。三越は全店合計で前年比2%増加。銀座店は来店客数、売上高とも同10%増となった。」(日経)とあります。

過去最高になった初売り状況を捉えて、今年は小売業界にも景気拡大の影響(所得増)が広がると多くのメディアが報道しています。その影響もあり、年明けから百貨店業界の株価が上昇しています。
2006年は「いざなぎ超えの好景気」といわれながら、個人消費は盛り上がりを欠きました。株式市場全体が年初平均を上回ったにもかかわらず、業種別日経平均の小売業株は同期間で約20%下落のままでした。この年始の朗報が、今年の小売業界を示唆するものであることを願っています。

ただ、コンビニやスーパー業界は景気拡大の恩恵は受けにくいと考えます。なぜなら、所得が増えたとして下記のような生活費を圧迫する要因があり、将来に対する不安は払拭されず、日常的な買物はできるだけ節約をしようとする心理が働くからです。

【2007年の負担増】
1月・・・所得税(国税)の定率減税廃止 《年間で最大125,000円》
4月・・・国民年金保険料の引き上げ 《月額13,860円⇒14,100円》
6月・・・住民税(地方税)の定率減税廃止 《年間で最大20,000円》
9月・・・厚生年金保険料率の引き上げ 
             《月額14,642円⇒14,996円(月収20万円の場合)》

今年も昨年に引き続きコンビニ・スーパー業界は業績回復を景気拡大に期待せず、自助努力を図る必要がありそうです。

そのときにぜひ試してほしい思考法があります。
それは「ゼロベース思考」です。
「ゼロベース思考」とは、固定概念を取り払い視点を変えるための思考法です。売上が伸び悩んでいる店の多くが、
「うちの店の立地は特別だから…」
「この辺のお客さんは…」
「業界全体がダメだから…」
などと先入観や固定概念(自店の経営管理レベルに対する妥協)で自分の店を捉えています。

本当にそうでしょうか?
もう一度、商圏環境(競合を含む)と商圏人口構成を調べ直してみてください。
そして、本来あるべき「品揃え」「接客(サービス)」「販促活動」「クリーンネス」ができたならば、今よりも5%や10%売上が伸びる店はいくらでもあるはずです。

ぜひ「ゼロベース思考」で店を捉え、本来あるべき姿と現状とのギャップ(差異)を確認してください。
そこに自分の店の“問題点”が見出されるはずです。
その問題点に優先順位をつけ、ひとつひとつ解決していくことが「景気拡大の恩恵」を受ける最大の近道だと思います。

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