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2007-02-25

ついにコンビニ・スーパーも「ICタグ」導入?

「ファミリーマートが東京・池袋の2店舗で『ICタグ』を利用した買物実験を始めた」という新聞記事を見て、さっそく体験してきました。

実験店舗の「ファミリーマート南池袋二丁目店」に行くと、1台のレジカウンターの上一面に「EXPRESS POS」と表示された厚さ5~6センチほどの電子タグリーダーというものが置かれていました。いかにもハイテク機器だなと思わせるデザインが目を引きました。
新聞には、「店頭で扱う商品のうち三分の一に当たるおにぎり、弁当、デザートや飲料など約800品目に約2センチ四方のICタグ付きシールを添付」と書いてあったので、まずは弁当ケースにある商品を見たのですが…、よくわからない。

「ICタグだから、金属っぽいものだよなぁ」
「きっと、スポーツクラブの会員カードに付いているのと同じような…」
200702191247000その私の先入観がいけなかったのですね。
ICタグは最近コンビニでよく見かける「お皿交換キャンペーン」シールのようなものでした (写真参照:帰ってから中身を出してみると極細の銅線がコイル状に巻かれていました)。

さっそく、ICタグシールが付いているパスタ2個を手に取りレジへ。
「EXPRESS POS」と書かれた電子タグリーダーにのせ、店のスタッフが何か操作をすると一瞬電子音が鳴り、レジ登録終了。
私はクオカードで支払いをお願いし、ものの5~6秒程度で会計が終了。
「早い!」
「すばらしい!」

買物カゴに入れたままでも、ICタグが付いているものは瞬時にレジ登録ができるので、バーコードを読み取るのは一部の商品だけで済むという店員の説明を聞いてますます感激してしまいました。

「ICタグ」とは、ICチップに様々な情報を記録し、無線アンテナを通じて外部とやり取りができるもので、バーコードに代わる商品識別・管理システムとして注目されています。
特徴としては、
①情報量が多い(記憶容量は最高約2キロバイト、バーコードの約150倍に相当)
②情報の書き換えが可能
③複数同時に読み取れる
④汚れに強い
などが挙げられます。

今回のファミリーマートの事例は実験段階ですが、実用化されている事例も多々あります(出典:YOMIURI ONLINE 大手町博士のゼミナール)
【事例Ⅰ】
大手百貨店の高島屋は、主要店舗の婦人靴売り場で、ICタグを使って客が靴の在庫をすぐに調べられるサービスを始めている。陳列されたICタグ付きの靴を、売り場にある読み取り機の上に置けば、別のサイズや色違いの商品の在庫が画面に表示される。
【事例Ⅱ】
高級食品スーパー「クイーンズ伊勢丹」は一部の店でワインの販売に活用している。ワインのボトルに付いたICタグを読み取り機にかざすと、産地や味わい、相性の良い料理などの情報が分かる。

この他にも図書館の書籍貸出業務管理や回転寿司の皿底に付けて精算をスムーズにするなど、利用範囲は広がりを見せています。
しかし、さらに実用化を進めるためには大きな課題が2つあるようです。

そのひとつ目は「コスト」。
現在のICタグは安くても1個20~30円程度するそうです。この価格では単価の高い靴や高級ワインに付けることができても、おにぎりやガムなどには無理ですね。ただ、量産型のタグは月に1億個程度生産すれば1個5円程度にはなるそうなので、期待は持てそうです。しかし、コンビニやスーパーの全商品につけることを前提にすると、5円でもまだ高いかも知れません。

ふたつ目の問題は、「個人情報の扱い」。
欧米では商品に付いたICタグが、店舗を出た消費者の行動を追跡する手段になりうるとして「スパイ・チップ」とも呼ばれており、一部の消費者団体が不買運動を起こした事例もあるそうです。

まだまだ解決しなくてはいけない問題はあるものの、ICタグの普及は人手不足と人件費負担増、売上減に苦しむコンビニやスーパーにとって、嬉しい技術革新だと思います。
というのも、ICタグが全商品に付けば検品作業はほぼ必要がなくなります。また、レジ会計の時間が短縮できるので、スタッフの必要人員を減らすことも可能となります。さらにレジ待ち時間短縮は、「お客様の時間的ストレス軽減」という副産物をもたらし、客数アップ(売上アップ)に結びつく可能性も生まれます。

ぜひ、1日も早いコンビニ・スーパーでのICタグ実用化を期待したいと思います。

2007-02-13

地域特性を活かした店作り

昨日の日本経済新聞朝刊一面“春秋”では、東京文京区にある「湯島天神」の梅が例年より5日ほど早く開花したことを受け、暖冬と地球温暖化の関係を取り上げていました。
確かに、「建国記念日」振替休日による連休中は、2月とはとても思えないくらい穏やかで暖かい日が続きました。

実はこの「湯島天神」、自宅から歩いて5分程のご近所なのです。
そこで天気の良さにも誘われて、「のんびりと梅の花でも見てくるか」と出かけてみたのですが、あまりの人の多さにビックリ!

梅見に来た年配のご夫婦やグループ、受験直前最後の神頼みに来ている受験生と親、さらには合格が決まり「合格御礼」の絵馬を書いている親子などで境内は大変な混雑ぶりでした。
Photo_3肝心の梅の花はというと、新聞には「早咲きが七、八分、遅咲きの種類はチラホラだ」と書かれていましたが、なかなかきれいに咲いており、十分楽しむことができました(写真)。
【今年の湯島天神梅まつりは、2月8日~3月8日まで開催中です】

「この地域にとって湯島天神の梅まつりは季節の重要な行事だな」と改めて思いながら、湯島天神下のコンビニを6店ほど見て回りました。
しかし、同じ町内や最寄り駅から湯島天神への途中にありながら、どの店も梅まつりに何の対応もしていないことに疑問を感じました。

コンビニ業界の売上低迷要因のひとつに、どこに行っても同じ品揃え、同じ販促手法というチェーン画一のマーケティング手法が挙げられています。
1月8日(月)付日本経済新聞朝刊「コンビニの針路①」でセブン&アイ会長の鈴木敏文氏は、次のように語っています。

「昔のセブンイレブンのようにどこに行っても同じものが並んでいるというオペレーションの時代ではなくなっている。地域によって1店舗1店舗が自分のマーケットを把握して商品構成を変えていくことを徹底しなくてはならない」

確かに鈴木氏の言うことはごもっともです。
しかし、「自分のマーケットを把握している」店は多くありません。また、把握したとしても、どのような対応策を打ったらよいのか分からないのが現状です。

湯島天神最寄り地下鉄駅出口付近のセブンイレブンでは、酒売場に大小取り揃え7アイテムの梅酒がありました。これだけ梅酒を取り揃えている店は他にはありませんでした。しかし、それらは陳列されているだけで、お客様へ訴えかけるPOPなど何もありません。
せっかく地元では「梅まつり」を開催しているのですから、梅まつりのポスターやチラシを活用して「梅酒コーナー」を作ったり、飲み方やメニュー提案、さらには開花状況のお知らせなどをしたりすれば、地域性をよりアピールすることができると同時に、お客様との会話も生まれると思うのですが、残念です。

しかし、このような状況が売上不振店の現状だと思います。言葉で「個店対応」というのは簡単ですが、店のみで実現するのは大変難しいことなのです。
最近では、加盟店の経営指導にあたるスーパーバイザー(以下SV)に個店別状況に合わせたマーケティング力を身につけさせようという研修を行うチェーン本部も出てきましたが、そこに手をつけていないチェーン本部がほとんどだと思います。

「1店舗1店舗が自分のマーケットを把握して商品構成を変えていく」
そのためには、店を客観的視点で見ることのできるSVのマーケティング力が不可欠だ、ということをチェーン本部は再認識する必要があるのではないでしょうか。

2007-02-03

スーパーの「惣菜・弁当」売り場が面白い!

最近、スーパーの惣菜・弁当(以下「中食」という)売り場を見るのがとても楽しみです。というのも、中食売り場を見るとその店(チェーン)のマーケティング力がよくわかるからです。
メニュー内容、分量、価格設定、提供方法、時間帯別品揃え、お客様への告知手法など自店の特徴が出しやすく、競合店との差別化を図りやすいのが中食売り場です。

その中でも注目は「惣菜」。
惣菜産業の市場規模は、女性の社会進出や時間重視型生活の浸透、さらには単身世帯の増加、人口の高齢化等の理由から大きく伸びています。

【惣菜産業の市場規模】(単位:百万円)
              1997年           2004年
総合スーパー     311,737         884,197(284%)
食品スーパー    1,337,108       1,561,971(117%)
コンビニエンス   1,546,124       1,947,542(126%)
 《資料出所:㈳日本惣菜協会

1月24日(水)の日経MJ一面は「スーパーの『中食』制す機動力」という特集でした。ここには2つのスーパーの取り組みが紹介されていました。

そのひとつが「大丸ピーコック下北沢店」。
下北沢というと「若者の町」というイメージが強く、スーパーで惣菜の需要があるのかと思われがちですが、時間帯別対応とレイアウト変更により下北沢店はしっかりと潜在需要を生み出しています。その結果が、惣菜部門売上:前年比45%増、客数:17.8%増という数値です。

下北沢駅周辺はオフィスビルが少なく、昔ながらの平屋建築の雑貨や古着を扱う中小商店、銀行、薬局などが並び、20~40歳代の人がたくさん働いています。そのため下北沢店の昼時は、弁当を主役にしてコンビニエンスストア並みの品揃えをしています。

しかし、夕方になると品揃えは一変します。
弁当類は大幅に減り、基本的な惣菜のほかに焼き鳥や枝豆など、酒のつまみになるような商品が積み上げられます。また、下北沢店の商圏では単身世帯が半数を超えるため、1人暮らし向けの少量パックも充実させています。

商品自体への取り組みだけでなく、中食売り場を店舗入り口付近に持ってきたことも、売上を伸ばすための大きなポイントだったようです。

一般的にスーパーの中食売り場は店の奥にあるか、青果⇒精肉⇒鮮魚(または鮮魚⇒精肉)と店を回遊した最後にレイアウトされています。
しかし、スーパーの近隣で働いている人が昼にお弁当を買おうと思った時、売り場が店の奥では「貴重な昼休みの時間が短くなってしまう」という気持ちが働き、来店機会の阻害要因になります(だからコンビニに行ってしまう)。

また、単身の男性(高齢者も含む)の場合、主婦の多い店内を中食売り場まで入っていくことには抵抗があります。特に「酒のつまみに惣菜を数品だけ買いたい、買い物かごを使うほどではない」という時などはなおさらです。

このようにお客様の時間的・精神的負担を解消することによって、新しい需要が生み出されるというケースは多々あります。

スーパーでは、季節感と新鮮さをアピールするために入り口付近に青果を持ってくるということは常識となっていますが、消費者ニーズの変化、さらには立地により求められる機能性が多様化してきている現在、その常識の枠を取り払ってみることも必要なのではないでしょうか。

中食は季節感と新鮮さをアピールできる上に、競合店との差別化がしやすい商材です。さらに利益貢献度も高いのですから、取り組みを強化するスーパーは今後ますます増えてくると思います。

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