離職率を下げる!「ジュニアコーチ」制度
「離職率の“七五三”現象」
この言葉、皆さんもどこかで一度は目にしていることと思います。これは、中学、高校、大学卒業後に就職はしたものの、3年以内に離職する割合を表しています。
厚生労働省の発表によれば、平成15年3月卒で中学卒の70.4%、高校卒の49.3%、大学卒の35.7%が3年間で退職をしています。ここから、「離職率の“七五三”現象」という言葉が生まれました。
また、参考のために見てみると、平成17年度卒の場合、中学卒の44%、高校卒の24.8%、大学卒の15%が1年目で退職しています。
(年次別詳細は右記アドレス参照 http://www.wakamononingenryoku.jp/pdf/data_1.pdf )
このように入社した若者が定着せず、短期間に退職してしまう現象が一般化している雇用環境の中、「3年間で71人入った高卒社員が今も全員働き続けている」という新聞記事に目が止まりました。
この記事は、日本経済新聞(2007年5月10日付:朝刊)の「人は財―雇用革新に挑む」というコーナーに掲載されていたものです。
「『やっとの思いで採用したのに』。ほぞをかむ多くの企業を尻目に、2005年に高卒採用を再開して以来、『脱落者ゼロ』を誇る会社がある。化学・セメント大手のトクヤマだ。3年間で71人入った高卒社員が今も全員働き続ける。秘密は高卒採用の再開と同時に導入した『ジュニアコーチ』制度にある。20代前半の社員が自ら仕事をこなしつつ、マンツーマンで新入社員に約1年間付き添い、仕事の進め方や上司との接し方を教える。先輩社員から必要なノウハウを自ら聞き出すのがこれまでのやり方だが、『指示待ち』の傾向が強い今の若者には通じにくい」
最近、このような制度を導入する会社は増えてきています。
というのも、入社したばかりの若者は人間関係や仕事そのものに多くの「不安」を抱えています。昔ならば、友人や同僚・先輩に相談するなどして、それらの不安を自分自身で乗り越えていくのが当たり前でした。
しかし、今の若者は社会人としてのコミュニケーション能力が著しく低下しており、会社側から手を差し伸べ、コミュニケーション環境を整えないと、「不安」を乗り越えることができない場合が多いのです。
ただ、この取り組みに対して、「最近の若者への甘やかしだ!」と思う方もいるかもしれません。
しかし、それは違います。
この制度は「コーチ」という名称がついているので、「コーチング」をベースにしているのだとは思いますが、本質は「メンタリング」の活用です。
企業の中でいう「メンタリング」とは、新入社員や新任者に対して、経験豊かな先輩社員《メンター》がその会社(職務)の仕事の進め方を指導したり、壁にぶつかった時の相談相手になったりすることにより、新入社員や新任者が安心して働ける環境を作ります。そして、最終的には組織の中での問題解決力や状況対応能力を高めることを目指す制度で、決して新しいものではありません。
「それじゃ、早速うちの会社も先輩を『コーチ』としてつけよう!」
と考える方がいるかもしれませんが、つける前にやることがあります。
それは、コーチとなる先輩の教育・訓練です。
同じ記事内には、入社3~7年目の若手社員約100人を「メンター(指導役)」として事前研修を行った住友スリーエムの事例が紹介されていました。
そうです。このような制度を取り入れる前には、コーチングでいうところの「聞き方」「ほめ方・認め方」「問いかけ方」の基本スキルをしっかり学んでおく必要があります。
また、新人と先輩の「組み合わせの相性」も大事なポイントとなりますので、「行動特性の違い」も学んでおくとより成果を上げることができます。
(参考:国際メンターシップ協会 http://www.mentorship.or.jp/intro/index.html )