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2007-05-21

離職率を下げる!「ジュニアコーチ」制度

「離職率の“七五三”現象」
この言葉、皆さんもどこかで一度は目にしていることと思います。これは、中学、高校、大学卒業後に就職はしたものの、3年以内に離職する割合を表しています。

厚生労働省の発表によれば、平成15年3月卒で中学卒の70.4%、高校卒の49.3%、大学卒の35.7%が3年間で退職をしています。ここから、「離職率の“七五三”現象」という言葉が生まれました。
また、参考のために見てみると、平成17年度卒の場合、中学卒の44%、高校卒の24.8%、大学卒の15%が1年目で退職しています。
(年次別詳細は右記アドレス参照 http://www.wakamononingenryoku.jp/pdf/data_1.pdf

このように入社した若者が定着せず、短期間に退職してしまう現象が一般化している雇用環境の中、「3年間で71人入った高卒社員が今も全員働き続けている」という新聞記事に目が止まりました。

この記事は、日本経済新聞(2007年5月10日付:朝刊)の「人は財―雇用革新に挑む」というコーナーに掲載されていたものです。

「『やっとの思いで採用したのに』。ほぞをかむ多くの企業を尻目に、2005年に高卒採用を再開して以来、『脱落者ゼロ』を誇る会社がある。化学・セメント大手のトクヤマだ。3年間で71人入った高卒社員が今も全員働き続ける。秘密は高卒採用の再開と同時に導入した『ジュニアコーチ』制度にある。20代前半の社員が自ら仕事をこなしつつ、マンツーマンで新入社員に約1年間付き添い、仕事の進め方や上司との接し方を教える。先輩社員から必要なノウハウを自ら聞き出すのがこれまでのやり方だが、『指示待ち』の傾向が強い今の若者には通じにくい」

最近、このような制度を導入する会社は増えてきています。
というのも、入社したばかりの若者は人間関係や仕事そのものに多くの「不安」を抱えています。昔ならば、友人や同僚・先輩に相談するなどして、それらの不安を自分自身で乗り越えていくのが当たり前でした。
しかし、今の若者は社会人としてのコミュニケーション能力が著しく低下しており、会社側から手を差し伸べ、コミュニケーション環境を整えないと、「不安」を乗り越えることができない場合が多いのです。

ただ、この取り組みに対して、「最近の若者への甘やかしだ!」と思う方もいるかもしれません。
しかし、それは違います。

この制度は「コーチ」という名称がついているので、「コーチング」をベースにしているのだとは思いますが、本質は「メンタリング」の活用です。
企業の中でいう「メンタリング」とは、新入社員や新任者に対して、経験豊かな先輩社員《メンター》がその会社(職務)の仕事の進め方を指導したり、壁にぶつかった時の相談相手になったりすることにより、新入社員や新任者が安心して働ける環境を作ります。そして、最終的には組織の中での問題解決力や状況対応能力を高めることを目指す制度で、決して新しいものではありません。

「それじゃ、早速うちの会社も先輩を『コーチ』としてつけよう!」
と考える方がいるかもしれませんが、つける前にやることがあります。
それは、コーチとなる先輩の教育・訓練です。
同じ記事内には、入社3~7年目の若手社員約100人を「メンター(指導役)」として事前研修を行った住友スリーエムの事例が紹介されていました。

そうです。このような制度を取り入れる前には、コーチングでいうところの「聞き方」「ほめ方・認め方」「問いかけ方」の基本スキルをしっかり学んでおく必要があります。
また、新人と先輩の「組み合わせの相性」も大事なポイントとなりますので、「行動特性の違い」も学んでおくとより成果を上げることができます。

(参考:国際メンターシップ協会 http://www.mentorship.or.jp/intro/index.html

2007-05-06

「テスコ・エクスプレス」の視察

Photo_6 小売業世界3位の英国テスコが日本で展開を始めるというコンビニエンスストア:「テスコ・エクスプレス」1号店が開店したというので、さっそく見てきました。

場所は、東京都練馬区東大泉。西武池袋線「大泉学園」駅から住宅地へ向う幹線道路沿いにその店はありました。当日は、現役でコンビニ店を経営する店長と一緒に行ったのですが、店内をひと回りしたのち、お互いに発した言葉は「これって、コンビニ?」でした。

テスコ店内に入ると、まず花束と青果売場があります。通路にも特売の野菜類が山のように積まれて販売されています。正面突き当たり角は鮮魚売場で、売場奥のガラス張りの向こうでは店員が刺身を盛り合わせています。さらに、左に折れると精肉売場(パック売りのみ)。突き当たりはお弁当やお寿司売場、その横には惣菜売場がありました。
島ゴンドラの商品構成とレイアウトは、ほぼスーパーと同じです。特徴的なところを挙げるとすれば、ジャムやお菓子などは独自開発の英国ものが多いところでしょうか。

しかし、雑誌ゴンドラは申し訳程度の2台のみで、コピー機やATMはありません。また、弁当・惣菜類を温めるレンジは家庭用のレンジ(600W程度)が1台で、お湯を提供するポットと一緒にサッカー台の横に置かれています。

確かに、経済産業省の商業統計:業態分類としての「コンビニエンスストア」の定義=【飲食料品を扱い、売り場面積30㎡以上250㎡未満、営業時間が1日で14時間以上のセルフサービス販売店】には当てはまりますが、この店は「コンビニエンスストア」というよりもミニスーパーといった方がしっくりきます。

4月20日の日本経済新聞によると、「テスコ・エクスプレスは出店規制の厳しい英国市場でのシェア向上を目的に、同社が開発した店舗業態。すでに英国では700店超を展開、07年度は出店計画の約7割に当たる96店が同業態での出店となる。エクスプレスは海外での出店も積極化しており、小売業1位の座にあるタイでは266店を保有。韓国では40店の店舗網を今年度中に倍増させる計画を立てているほか、トルコなどでも出店を積極化している」とありますが、日本のコンビニ各社が出している同様の生鮮コンビニの経営状況を見ると、テスコの商品構成やサービス、運営体制では、拡大が難しいのではないかと思います。

せっかく「テスコ」というブランドを掲げているのですから、そのブランドを活かした商品をより打ち出すべきだと思います。
また、他の生鮮コンビニが苦戦しているのは、コンビニよりもはるかに低い荒利益率問題(廃棄ロスも含めた)があるからですが、テスコでは、「牛乳や豆腐、卵など12品目は競合するスーパーなどの店頭価格を調査し地域最安値を設定」(日経)するそうなので、より荒利益率は下がりそうです。その分の荒利をいかに他の商品やサービスで補うことができるかが、成功の可否になりそうです。

「SHOP99」、ローソンの「ローソンストア100」、サークルKサンクスの「99イチバ」、スリーエフの「キュウズマート」に、「テスコ・エクスプレス」を加えた生鮮コンビニの今後の動きには、さらに注目していきたいと思います。

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