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2007-11-27

大丸東京店にみる「音楽とマーケティング」

先週の土曜日夕方、移転開業した百貨店:大丸東京店に行ってきました。開業から2週間以上経っているので、もう人出も落ち着いた頃だろうと思って出かけましたが、とんだ誤算でした。
地下の食料品売り場は連休中の夕方ということもあり、夕食のお弁当やお惣菜を買い求める人で身動きが取れないくらい混雑していました。また、百貨店としては珍しい1階の菓子売場もスィーツの人気店は長蛇の列でした。

大丸東京店に出かけたのには理由がありました。それは、売場ごとに工夫をしているというBGMなどの音響効果を体感するためです。
11月23日付の日経MJには次のように紹介されていました。

∞∞引用開始∞∞
東京駅付近の再開発で6日に移転開業したJ・フロントの大丸東京店(東京・千代田)は、サウンド・プロデューサーの野川和夫さんを起用した音響マーケティングの実験場だ。騒々しい駅構内から足を踏み入れると、買い物客でごった返す店内は意外と静か。BGMや店内放送を抑制した。
エントランスやエスカレーター、トイレなどの公共空間を中心に、和風や自然を重視した同店独自のメロディーや効果音を11個作った。
・・・中略・・・
ほのかに聞こえる音に耳を傾けると、透明感と軽やかさを感じる。例えば、ガラスの多用や照明具合で近未来的なエントランスだが、石と金属の響き合いなどで、吹き抜ける風の素朴なさわやかさを表現。洗練された大人の都市生活を標榜するストアコンセプト「TOKYO・オトナ・ライフスタイル百貨店」を演出する。
∞∞引用終了∞∞

あまりの混雑ぶりに、エントランスの「吹き抜ける風の素朴なさわやかさ」は実感できませんでしたが、婦人服売場の働くOLをイメージした躍動感ある「ボサノバ」や「R&B」、また紳士服売場の落ち着いた「ジャズ」などは体感することができました。これらの曲は、テーマの範囲内で午前はさわやかな曲、夜は落ち着いたムードのある曲というように、1日を3つの時間帯に分けて流す曲を変えているそうです。

確かに音楽(音響)が買物や飲食時間に与える影響は大きいと思います。
しばらく前に、うちの近所にちょっと感じの良い、落ち着いた雰囲気のもつ料理店ができました。早速食べに行ってみると、とても美味しい料理とお酒の店でした。しかし、その後二度と行くことはなく、その店はつい最近閉店してしまいました。美味しい料理とお酒があるのになぜ行かなくなったかというと、BGMが歌詞入りのJ-POPだったからです。

その店に行った日、私たちは食事をしながらゆっくり話がしたくて落ち着いた感じの店を選んだのです。周りを見ると私たちが一番若いくらいで、年配の夫婦や2~4人連れで来ているお客が大部分でした。
それなのに、若い人が好むような歌詞入りの音楽が流されており、話をしていても耳障りで仕方ありません(特に、座っていたカウンターの上にスピーカーがありました)。
こういう店だったら、歌詞のない落ち着いたジャズでも流してくれればもっとゆっくりできるし、滞店時間が長くなれば客単価も上がるのに…とついコンサルタント的視点で店を見てしまいました。

店作りのコンセプトに音楽まで配慮していなかったのか、それとも働いているスタッフが自分達の聞きたい音楽を選んでいるのかは分かりませんが、BGMのミスマッチが売上不振要因のひとつであったことは確かだと思います。

いまのようにお客様の求めるニーズが高度化している時代は、商品のみならず買物や飲食をする空間(時間)の快適さまで配慮した店作りが求められています。

快適な空間作りには「音楽」や「照明」、さらに「香り」までも含めたトータルのコンセプトを作ることが大切です。

そのコンセプトの具現化が商品をより引き立て、お客様の満足度を高めることにつながるのだと思います。

2007-11-11

「ウォームビズ」人気と売場の対応不足

重ね着をしてオフィスなどで暖房使用を抑える環境活動「ウォームビズ」の取り組み開始から3年目を迎えました。今年は原油価格の高騰に伴う暖房代負担増や地球温暖化への関心の高まりもあり、ウォームビズ関連商品の需要は一層高まりそうです。

さっそく、私も「暖かい下着でも調達しようかな」と大型スーパー:A店に出かけました。下着売場では新聞で見かけた「WARMBIZ」のオレンジ色販促物が天井からいくつも下がり、また柱にもオレンジ色POPがディスプレイと一緒に目立っていました。

「保温性に優れています」
「吸湿性・発熱性抜群」
「温かいのに薄い」
など、さまざまな機能的特長をアピールした商品が下着売場のあちらこちらにブランド別に陳列されています。あまりにたくさんありすぎて迷ってしまうくらいです。

チラシで見てチェックしていたオリジナル商品(下着のシャツ)を見ると、Vネック:Mサイズだけ売り切れていました。仕方なく他にVネックの商品を探したのですが、丸首やU首ばかりでウォームビズ対応商品ではありませんでした。

このA店には夏も下着のシャツを買いに来ました。その時には、「クールビズ」対応商品としてVネックの機能的に優れたシャツがたくさんありました。
クールビズでは豊富に品揃えされていたVネックが、ウォームビズで無いのはどうしてなのでしょうか。もしかしたら、クールビズはノーネクタイで襟元を開けるから「Vネック」を品揃えし、ウォームビズでは必要ないという発想なのでしょうか。

しかし、この発想は間違っていると思います。
確かに、私も以前は丸首やU首の下着を着ていました。しかし、クールビズ対応でVネックを着るようになってからU首は着なくなりました。もうすっかりVネックに慣れたことと、Vネックに比べU首はワイシャツに透けて見えた時「おじさん臭いイメージ」(おじさんの年齢なのだけど)があると感じてしまったからです。
またクールビズを契機として、年間を通してノーネクタイの職場が増えてきていることも考慮すべきでしょう。

日本経済新聞の消費者調査(2007年10月30日付朝刊掲載)によると、この冬にウォームビズに対応した服装を予定している人は31.3%で、昨年を8.3ポイント上回っています。
また、「今冬、ウォームビズのために買う主な衣料品・雑貨は?」というアンケート結果を見ると、
1位:下着(39.3%)
2位:カーディガン(24.6%)
以下、3位:シャツ、4位:ジャケット、5位:ベスト、6位:婦人用スカート・パンツ、7位:ひざ掛け、と下着がダントツに多くなっています。

また、商品を選ぶポイントは「素材・機能性」が78.6%、「価格の安さや値ごろ感」が69.2%で集中しています。さらに、買う場所は「大型スーパー」が46.6%で最多。カジュアル衣料専門店の27.6%、百貨店の25.8%を大きく引き離しています。

これらの調査結果を見ると、A店は大きな機会損失をしていると思います。
機会損失を減らすためには、まずウォームビズでもVネックの商品をより品揃えすべきです。また、あまりにも多くのウォームビズ対応下着があり、選ぶのに迷ってしまいます。お客様は「分からない」「選べない」という状況に陥ると、買物に疲れ、買うのを諦めてしまう傾向があるのでその対応も必要でしょう。

上記の調査を見ると、商品を選ぶポイントは「素材・機能性」「価格の安さや値ごろ感」に集中しているのですから、縦軸に「価格」、横軸に「素材・機能性」を配した商品比較一覧表を作成し、売場に出しておけば、お客様は選びやすく、ストレスを感じることなく買物ができるようになります。

結局、私はウォームビズ対応商品の購入をあきらめ、A店オリジナルの基本的商品を購入しました。その結果、私の客単価は1024円(チラシの商品)から680円に下がってしまいました。

「客単価が上がらない」
のではなく、
「販売する側の対応が不十分なため客単価を下げている」
という現象が、多々あることを自分の買物で改めて確認しました。

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