大丸東京店にみる「音楽とマーケティング」
先週の土曜日夕方、移転開業した百貨店:大丸東京店に行ってきました。開業から2週間以上経っているので、もう人出も落ち着いた頃だろうと思って出かけましたが、とんだ誤算でした。
地下の食料品売り場は連休中の夕方ということもあり、夕食のお弁当やお惣菜を買い求める人で身動きが取れないくらい混雑していました。また、百貨店としては珍しい1階の菓子売場もスィーツの人気店は長蛇の列でした。
大丸東京店に出かけたのには理由がありました。それは、売場ごとに工夫をしているというBGMなどの音響効果を体感するためです。
11月23日付の日経MJには次のように紹介されていました。
∞∞引用開始∞∞
東京駅付近の再開発で6日に移転開業したJ・フロントの大丸東京店(東京・千代田)は、サウンド・プロデューサーの野川和夫さんを起用した音響マーケティングの実験場だ。騒々しい駅構内から足を踏み入れると、買い物客でごった返す店内は意外と静か。BGMや店内放送を抑制した。
エントランスやエスカレーター、トイレなどの公共空間を中心に、和風や自然を重視した同店独自のメロディーや効果音を11個作った。
・・・中略・・・
ほのかに聞こえる音に耳を傾けると、透明感と軽やかさを感じる。例えば、ガラスの多用や照明具合で近未来的なエントランスだが、石と金属の響き合いなどで、吹き抜ける風の素朴なさわやかさを表現。洗練された大人の都市生活を標榜するストアコンセプト「TOKYO・オトナ・ライフスタイル百貨店」を演出する。
∞∞引用終了∞∞
あまりの混雑ぶりに、エントランスの「吹き抜ける風の素朴なさわやかさ」は実感できませんでしたが、婦人服売場の働くOLをイメージした躍動感ある「ボサノバ」や「R&B」、また紳士服売場の落ち着いた「ジャズ」などは体感することができました。これらの曲は、テーマの範囲内で午前はさわやかな曲、夜は落ち着いたムードのある曲というように、1日を3つの時間帯に分けて流す曲を変えているそうです。
確かに音楽(音響)が買物や飲食時間に与える影響は大きいと思います。
しばらく前に、うちの近所にちょっと感じの良い、落ち着いた雰囲気のもつ料理店ができました。早速食べに行ってみると、とても美味しい料理とお酒の店でした。しかし、その後二度と行くことはなく、その店はつい最近閉店してしまいました。美味しい料理とお酒があるのになぜ行かなくなったかというと、BGMが歌詞入りのJ-POPだったからです。
その店に行った日、私たちは食事をしながらゆっくり話がしたくて落ち着いた感じの店を選んだのです。周りを見ると私たちが一番若いくらいで、年配の夫婦や2~4人連れで来ているお客が大部分でした。
それなのに、若い人が好むような歌詞入りの音楽が流されており、話をしていても耳障りで仕方ありません(特に、座っていたカウンターの上にスピーカーがありました)。
こういう店だったら、歌詞のない落ち着いたジャズでも流してくれればもっとゆっくりできるし、滞店時間が長くなれば客単価も上がるのに…とついコンサルタント的視点で店を見てしまいました。
店作りのコンセプトに音楽まで配慮していなかったのか、それとも働いているスタッフが自分達の聞きたい音楽を選んでいるのかは分かりませんが、BGMのミスマッチが売上不振要因のひとつであったことは確かだと思います。
いまのようにお客様の求めるニーズが高度化している時代は、商品のみならず買物や飲食をする空間(時間)の快適さまで配慮した店作りが求められています。
快適な空間作りには「音楽」や「照明」、さらに「香り」までも含めたトータルのコンセプトを作ることが大切です。
そのコンセプトの具現化が商品をより引き立て、お客様の満足度を高めることにつながるのだと思います。