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2008-04-20

「エキタマ」に見る“駅ナカ”の変化

JR東日本ステ―ションリテイリングが東京・JR田町駅構内にオープンした「エキタマ」を見てきました。エキタマの開発コンセプトは「駅に新しいたまごを産み出す」ということですが、店舗を見ると“たまご”というよりもコクーン(まゆ)をイメージさせるようなデザインでした(写真参照)。
【営業時間:平日午前8時~午後9時。土日祝日は休業】

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エキタマが販売しているのはホットドックです。
しかし、ただのホットドックではありません。ソーセージは豚肉の最高峰といわれる金華豚と三元豚を使用した平田牧場のもの。
【平田牧場】 http://www.hiraboku.info/
さらに、パンは石窯で丁寧に焼いたタカキベーカリーのものを使用しています。
【タカキベーカリー】 http://www.takaki-bakery.co.jp/

イチ押しメニューはシンプルな「ヒラボクプレーンドック」(280円)ということでしたが、野菜好きの私としては「香りほおばるシャキシャキバジル」(370円:写真参照)を注文しました。野菜たっぷりの上にバジルソースがトッピングされ、ネーミングぴったりの香り豊かな商品でした。この野菜やサイドメニューのサラダなどはデパ地下:サラダ惣菜売り場で有名なRF-1と提携をしています。

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ただ、このエキタマはホットドック店として展開していく計画ではありません。4月2日(水)日経MJのエキタマ紹介記事を見ると、
「楽しいモノ」や「新しいコト」を発信する店舗を目指している。だから、販売する商品に制約はない。今後新店を展開する際には、現在の店舗形態を生かしながら別の商品を広げる見通しだ。
と書かれていました。
コンビニやスーパー、さらには飲食店にとって「駅ナカ」はますます競合としての位置づけが強まりそうです。そのことが「2007年商業統計」にも明確に現れています(2008.4.7.日経MJ)。

∞∞∞∞∞∞∞記事要約:開始∞∞∞∞∞∞∞∞∞
今回の商業統計は鉄道駅の改札内に立地するいわゆる「駅ナカ」店舗を初めて調査した。これによると、駅改札内にある事業所は1960店。年間販売額は2337億6千万円、12600人強が就業している。売り場面積1平方メートル当たりの販売額は小売業平均の約8倍に達し、群を抜いて販売効率が高いことが明らかとなった。駅ナカの実力が際立つのは505万円に達する1平方メートル当たりの販売額。小売業平均の65万円を大きく上回る。書籍・雑誌小売業は11倍強。コンビニエンスストア業態(161事業所)も3倍の421万円だった。
∞∞∞∞∞∞∞記事要約:終了∞∞∞∞∞∞∞∞∞

確かにコンビニ平均日商を見ても、JR東日本が展開するコンビニ「ニューデイズ」は2007年中間期決算で662千円(前年通期比8.7%増)と、セブンイレブンの平均日商:606千円(前年通期比0.7%減))を大きく上回っています。
この逆転現象は、JRのキオスク閉店縮小(2007年3月末:813店⇒9月末:685店)に伴うニューデイズの日商増ということもありますが、それよりセブンイレブンの日商減が大きな要因であると思います。

私はコンビニの客単価低迷要因のひとつとして、「駅ナカ」の商業施設充実があると考えています。
例として、今までは仕事の帰りに自宅近くのコンビニで夕食(つまみ類含む)とビールを購入していた独身男性の購買行動を挙げることができます。

【会社 ⇒ ターミナル駅 ⇒ 最寄り駅 ⇒ 帰宅途中のコンビニ ⇒ 自宅】

この帰宅ルート中の「ターミナル駅」または「最寄駅」にスーパーや惣菜の持ち帰り店等が増え、品揃えも充実しています。さらに、夜7時~9時頃の間には値引き販売もされています。すると、当然のように夕食やつまみは「駅ナカ」で購入した方が選び甲斐があるし、お得ということになります。その結果、自宅近くのコンビニではビールしか購入する必要がなくなり、客単価が低下するということです。

JR東日本ステ―ションリテイリングでは大宮、品川、立川で成功した「エキュート」に続く新しいプロジェクトとしてエキタマを位置づけ、他の駅でも展開をしていく予定です。

今後ますます「駅ナカ」の変化には目が離せなくなりそうです。

2008-04-04

「表の承認」で新入社員を活かそう!

4月1日(火)の昼前、取引先との打ち合わせのため新宿に出かけました。電車の中や新宿駅周辺では、黒の細身スーツに身を包んだいかにも新入社員という雰囲気の若者があふれていました。また、取引先近隣のイベントホールでは入社式があるらしく、地図を片手に会場を探していた数人が「あった、あった、発見!」と大きな声で盛り上がっていました。

その初々しさに、
「社会人になるとはじめに考えていた会社や仕事とのギャップを感じる機会も多いし、壁にあたることも多いだろうけど、ガンバレよ!」
と思わず心の中で応援してしまいました。

(財)社会経済生産性本部が1991年より継続的に行っている「新入社員 半年間の意識変化調査」2007年度版を見ると、最近の新入社員が感じる会社と仕事に対する“ギャップ”と、会社が取るべき対応策が見えてきます(本コラムでは一部の回答のみ紹介しています)。
《参考HP》http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/mdd/activity000846.html

1.入社前後のイメージギャップに関する設問の回答
入社前に描いていたイメージより配属後の状況が「期待以上」とする回答の1位は「職場の人間関係の良さ」35.8%、逆に「期待以下」とする回答の1位は「給料の額」31.1%でした。

期待以上の1位が「職場の人間関係の良さ」というのは意外でした。新入社員は職場の人間関係をもっと殺伐としたものだと思っていたのでしょうか。もしそうだとしたら、成果主義や実力主義などを取り上げたマスコミ記事などが、会社の人間関係に対する学生の認識を歪曲させているのかもしれません。

また、期待以下の1位が「給与の額」とありますが、これは新入社員が給与の仕組みについて理解をしていないことが要因にあると思います。
例えば、初任給20万円という募集要項で入社していれば、多くの学生は所得税控除後の手取り金額を19万円程度と想定しているのでしょう。しかし、実際には厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料なども引かれます(2年目からはさらに地方税も控除)。また、社内的な控除もあれば更に手取りは少なくなります。このようなイメージギャップ差は、入社前に給与の仕組みについて教えておくことで回避できる内容です。

2.「今の会社に一生勤めようと思っている」とする回答
この回答は4年連続で上昇傾向にあり、2007年春の調査では45.9%。秋の調査では若干減るものの、34.6%と共に過去最高の数値です。2000年のそれぞれが20.5%、18.3%なのですから、いかにこの数値が高くなっているかがわかります。

3.「自分には仕事を通じてかなえたい『夢がある』」とする回答
2007年春には「そう思う」という回答は68.8%でした。しかし、秋には55.1%となり、そのポイント差は13.7%と1991年の調査開始以来最高の数値になっています。現実の厳しさに直面した表れといえるでしょうか。

4.「先輩と意見が対立しそうな時に、先輩の顔を立て黙っている」とする回答
2005年は春・秋ともに約38%、2006年も春・秋共に37%台であったものが、2007年春の回答では37.1%、秋の回答は46.2%と半年間で過去最高の数値に上昇していると共に、そのポイント差も過去2番目であることが特徴的です。

これらから、夢を持って入社するものの、仕事を通じた夢の実現は厳しい現実の前に長続きせず、職場の空気を読みつつ、
「慣れてきた会社にできるだけ居続け、自分の生活を大事にしよう」
という最近の若者の傾向が読み取れるのではないでしょうか。しかし、これでは若者の可能性は閉じ込められてしまい、会社としてもせっかく採用した若い力を活用することができません。

同志社大学教授の太田肇氏は、著書【お金より名誉のモチベーション論】の中で、「わが国では大きな成果をあげたり、卓越した実力を示したり、あるいは自分の個性を発揮したりすることで積極的に認められるよりも、義理を果たしたり周りとの調和を保ったり、あるいは自分を殺したりすることで消極的に認められる場合が多いのです。私は前者を〈表の承認〉、後者を〈裏の承認〉と呼ぶことにしました」と書いています。

もちろん、チームで仕事をする機会が多い日本の会社では〈裏の承認〉も必要なことです。しかし、今後ますます国際競争力を求められる経済環境を考えると、若い人材がもっと〈表の承認〉を得ることのできる組織風土と仕組み作りが必要になるのではないでしょうか。

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