« 2008年4月 | トップページ | 2008年6月 »

2008-05-20

「食の安全・安心」を商機に変える

Photo_6いなだ鰤」という食品をご存知でしょうか?
「いなだ」はいわゆる出世魚、東京付近ではワカシ⇒イナダ⇒ワラサ⇒ブリの順に成長につれ呼び名が変わります。

その鰤を半年以上軒先につるし、手間暇かけて干物にしたものが、能登半島氷見周辺で昔から伝わる伝統食品「いなだ鰤」です。流木のようになった鰤をのこぎりで引いてスライス片になっているもの(画像参照:10g966円)をかるく火で炙り、口に含むと、かむうちに鰤の脂と潮の香りが口の中に広がり、冷えた純米酒との組み合わせは至福のひと時をもたらしてくれます。

この「いなだ鰤」、どこでも手に入るものではありません。
私が買い求めたのは、渋谷:西武百貨店(東京)の地下食品売り場にある「平翠軒コーナー」(画像参照)です。私は平翠軒を日経MJの4月13日号で知りました。

Photo_2

∞∞∞∞∞日経MJより一部抜粋∞∞∞∞∞
岡山県倉敷市。古い町並みが残る美観地区に平翠軒はある。約100㎡の店内には珍味や海産物、肉加工品、調味料など1000~1100点がずらりと並ぶ。百貨店の熟練バイヤーが「初めて見た」とうなる逸品ばかり。1年間で新たに店頭に並ぶ商品は約150点に上る。
各商品に添えられたPOP(店頭販促)広告は森田が文を練り、径子夫人が一枚一枚和紙に筆でしたためたもの。作り手や製法、食べ方まで内容は様々。照明をあえて抑えているので、じっくりと読むことになる。結果的に滞在時間が延び、店内に5時間いた客もいる。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

社長の森田氏はもともと造り酒屋を営んでいました。しかし、冒頭で紹介した「いなだ鰤」と出会ったことで、自然への畏怖と、風土や素材と向き合うモノづくりの素晴らしさを再確認、酒造りに改めて向き合うとともに「そんな商品を集めた店を作ろう」と決意し、3年がかりで全国各地を訪ね歩き、約150点の商品を集め「平翠軒」を立ち上げたそうです。
いま、「食の安全・安心」に対する消費者意識の高まりから、平翠軒の商品は百貨店にもならび、全国に広がっています。

このような流れは百貨店や専門店特有のものではありません。最近では、全国展開しているコンビニエンスストアも地方自治体と連携を強化し、地元の食材を利用した弁当やお惣菜の開発に力を入れ始めています。
セブンイレブンでは、奈良県で地元産の大豆やシイタケを使用した弁当を販売。価格が550円と通常の弁当よりも割高にも関わらず、1店当たり1日30個も売れているそうです。この数字はコンビニで販売している弁当単品としては異例の売れ行きです。

また、自治体との連携は農協や生産者からの商品調達が容易になると同時に、自治体のキャラクターなど認証マークもつけることが可能なので、主婦やお年寄りにも安心感を持って買ってもらえ、客層の拡大にも貢献しているようです。

最近は、新聞や雑誌等で「地産地消」というキーワードを目にする機会が増えました。「食の安全・安心」問題から、多くの人が地元の食材や食文化に関心を持つことは大変有意義なことだと思います。
5~6年前に注目を浴びた、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動である「スローフード」、いま一度取り組むことが必要な時期なのかも知れません。

2008-05-05

「駅ビル」の変化と対応策

前回のコラムは“駅ナカ”ネタでしたが、今回は引き続き“駅ナカ”も含めた「駅ビル」の変貌ぶりについてです。

先日、大丸ピーコックが始めたコンビニエンスストア型の新業態「エクセ ピーコック」を視察するため、JR蒲田駅(東京)に行ってきました。京浜東北線を蒲田駅で降り、改札に向かうエスカレーターを昇っていると、発車のベルの代わりに映画「蒲田行進曲」のテーマ音楽が流れてきて、私の脳裏には遥か昔に見た“階段落ち” のラストシーンが浮かんできました。

まず、改札を出て最初に目に入ってきたのが、JR東日本が駅構内に展開する「NEWDAYS(ニューデイズ)」です。普通の「NEWDAYS」の看板は赤と黄色を主体にしたものですが、ここの看板は濃紺に近い黒のベースに白文字で店名がデザインされていました(写真参照)。
そのデザインは「NEWDAYS」だけではなく、隣にあるスターバックス、BEGEL&BEGELも同じで、改札出口正面がとてもシックに統一されていました。

Photo_4

目的の「エクセ ピーコック」に向かうためエスカレーターを1階に降りると、右手の白い壁に「KIOSK」という見慣れないデザイン文字を見つけました。「KIOSK」というと、思い浮かぶのは駅構内やホームにある白のベースに赤と緑などでデザインされたキオスクの看板です。

しかし、この「KIOSK」のロゴが白い壁についているショップは、一面がガラス張りで柱なども銀色のステンレス製、一見するとファッション関係のショップに見えます。しかし、陳列されている商品をよく見ると、雑誌やドリンク、お菓子に新聞などキオスクと同じ品揃えです(写真参照)。
新しい駅ビルのコンセプトに合わせ、キオスクをここまで変えてしまうJR東日本には感心してしまいました。

Kiosk_2

さらにエスカレーターを地下に降りると、目的の「エクセ ピーコック」がありました。売り場面積は65坪程度、レジは2箇所に分かれて4台、コンビニ型を目指しているだけあり生鮮品の扱いはなく、パンや惣菜・お弁当類の売り場が広く充実していました(写真参照)。

Photo_5

惣菜や弁当類を見ると、まだ夕方の5時30分だというのに値下げ品(30%OFF)が目立ちました。例えば、
■  二色ごはん和風幕の内(今週のおすすめ) 480円⇒336円
■  ざるそば 298円⇒208円
■  海老とお豆のカルパッチョ風サラダ 280円⇒196円

商品そのものと値下げ後の価格を見ると大変魅力的です。私が観察している間にも、数人の仕事帰り風のOLや近隣の住人と思われる年配の主婦が買い求めていました。これでもう少し遅い時間になると、仕事帰りの男性も増えてくるのではないでしょうか。

3月19日(水)の日経MJによると、「大丸ピーコックは首都圏や近畿地方に約70店を展開。東京都心部などの賃料上昇の影響でマンション内など出店立地を多様化している。今回の新業態も小規模パッケージによる『出店機会の拡大』が狙いだ」と出店目的を報じています。

前回のコラムでも書きましたが、このような新業態が生まれてくると会社から自宅という経路の中に競合が増えることになります。一つひとつの影響は少ないかも知れませんが、最寄り駅から自宅に向かう途中にあるコンビニにとってはボディーブローのようにじわじわと効いてくることになります。

しかし、対抗策が無いわけではありません。
エクセ ピーコック」を見ると、お酒の扱いは得意なワインのみです。ということは、お酒を飲む顧客の利用は客層的にも利用単価的にも限定されることになります。また、酒類は「重量がある」「冷えているものがほしい」などの理由で、自宅近くで買われる傾向が強い商品です。

商圏内に競合店ができても相手の「強み」と「弱み」をしっかり分析し、自店の品揃えを変更する、自店の強い商材の「消費シーン」をPRするなど、変化に合わせた手を打つことにより利用機会を維持することは十分可能なのです。

« 2008年4月 | トップページ | 2008年6月 »