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2008-06-16

進化するスーパーのメニュー提案

妻:「今日のお夕飯、何か食べたいものある?」
夫&子供:「別に、なんでもいいよ」

「霜降りのステーキが食べたい!」
「国産のおいしいうなぎが食べたい!」
「すきやきが食べたい!」
と好き勝手を言われても家計は限られているので困りますが、日々の食事を準備する主婦にとって「別に、なんでもいいよ」という返事が一番困るそうです。いつの時代も、夕食の献立を考えることは主婦の「悩みの種」のようです。

そこで、最近はスーパーの食品売り場でメニュー提案が盛んに行われています。ただその多くが、売りたい商品(特売商品)を食材として活用したメニューを実演と紙ベースのレシピで提案し、使用する食材や調味料を一括陳列して購入を促しているのが現状です。
とはいえ、夕食の準備のためスーパーに買い物に来ている主婦の約8割は、献立を決めていないともいわれますので、このようなメニュー提案は来店客に向けた有効な販促手法にはなると思います。

しかし、このレベルの取り組みでは買い物や夕食の準備が楽しくなるような付加価値=「コト」としては不十分であり、“来店動機”として主婦を引きつけるにはインパクト不足だろうと感じていました。
そんな折、6月13日(金)の日経MJ:「ヨーカ堂売り場を刷新『栗原はるみさんとタッグ』料理提案コーナー」という記事が目にとまりました。

∞∞∞∞∞∞∞∞引用開始∞∞∞∞∞∞∞∞
イトーヨーカドーは、料理研究家で主婦に人気の高い栗原はるみさんと組んで、店舗メニュー提案コーナー「クッキングサポート」を刷新する。本格的な調理器具や家庭の雰囲気のある装飾を取り入れるほか、栗原さんが考案したメニューを分かりやすく提案できるよう、スタッフの教育にも力を入れる。
イトーヨーカドーは栗原さんと「イメージキャラクター」の契約を結んだ。新タイプのクッキングサポートは30平方メートル前後で、まずアリオ亀有店(東京・葛飾)、大森店(東京・大田)の食品売り場内に導入した。

∞∞∞∞∞∞∞∞引用終了∞∞∞∞∞∞∞∞

早速、アリオ亀有店に出かけてきました。
新しいメニュー提案コーナー「クッキングサポート」は、ヨーカ堂の食品売り場奥、食器売り場と隣接した場所にありました。全体的に白を基調にとても明るく、レストランのオープンキッチンを思わせるようなコーナーです。栗原はるみさんのクッキング本や大きな瓶に入った色とりどりのパスタがディスプレイされており、とても楽しい雰囲気が演出されていました(画像参照)。

Photo_2 
Photo_6 また、コーナーには[栗山はるみさんのレシピ実演中(画像参照)]というポスターが掲げられ、“うなぎの混ぜずし”の試食とモニターによる栗原はるみさんの調理法実演が行われていました。

私も試食をさせていただきましたが、ちょうど最高気温28度と暑い日だったこともあり、さっぱりとした“混ぜずし”がとても美味しく感じられました。また、紹介コーナーの右横にあるオープンケースでは【本日特売】の国産うなぎ蒲焼をはじめ、みょうが・青じそ・すだちなどの食材が販売されており、試食の後、レシピと一緒に買い物かごに入れているお客もいました(画像参照)。

Iy_2
単なるメニュー提案だけではなく、主婦に人気のある「栗原はるみさん」監修というブランド価値を加えたことで、メニュー提案コーナーと試食メニューの価値も大きくアップしていることがよくわかります。おそらく、このコーナーの売上のみでは採算は取れないと思います。しかし、来店を促す大きな動機づけにはなると思います。

ただ、1点だけ「改善した方が良いのでは…」と思うことがありました。
それは、食材の販売方法です。レシピに4人分の食材として、「キュウリ2本」「みょうが2個」「すだち2個」とあるのですが、コーナー横で販売されていた商品は全て3個入りでした。

また、最近では夫婦二人のみという家族構成の買い物客も多いと思います。そんな人向けに前述の各食材を1個ずつ入れたパック商品も販売すべきではないでしょうか。

最近の消費者は無駄を出すことを嫌う傾向が強いので、多少割高であってもこのような商品があれば、提案メニューを作ってみようという気持ちが一層強くなり、このコーナーの付加価値がよりアップするはずです。

2008-06-02

コンビニの客層拡大策と「商品開発」

最近コンビニへ買い物に行くたびに、品揃えコンセプトが変化していることに気がつきます。どのような変化かというと、従来の若者向け中心の品揃えから、中高年や高齢者向けの商品が増えつつあるということです。

先日もファミリーマートに行ったところ、惣菜陳列ケースの最下段に透明の引き戸がついた専用ケースがあり、刺身が販売されていました。
陳列してあったのは、下記の6アイテム。

「いかそうめん」298円
「きはだまぐろ湯引き漬け」
358円
「めばちまぐろ刺身」
358円
「まぐろたたき」
298円
「漬けまぐろ&たたきセット」
398円
「海鮮サラダ(甘エビ・いくら)」
360円

Fm_2 私は「きはだまぐろ湯引き漬け」(画像参照)を購入しました。
正直なところ、【コンビニの刺身】ということで期待はしていなかったのですが、なかなかどうして、下手なスーパーの冷凍まぐろよりもずっと美味しいまぐろでした。
このようなコンビニ商品があれば、「ちょっとツマミに刺身でも…」と思った時に、中高年男性や高齢者には大変ありがたく、大きな来店動機につながります。

いままでコンビニでは配送温度や店頭での陳列温度管理等の問題で、「いかソーメン」や「たこのぶつ切り」程度しか扱うことができませんでしたが、ファミリーマートでは一貫した鮮度管理体制を整えることで、「まぐろ」まで販売を可能にしました。

∞∞∞∞ファミリーマート:ホームページより抜粋∞∞∞∞∞
水産商品の配送は、従来のファミリーマートの「チルド便」(3~8℃)でお届けしますが、「刺身」については、ファミリーマートの配送センターと店舗間を保冷材で挟んだ専用ジッパーに入れて配送することで、加工メーカーから店舗まで、一貫した1~4℃以下での物流を実現いたしました。店舗においても、従来のチルド温度帯オープンケースに、刺身専用の販売補助什器を設置することで、1~4℃以下での鮮度を保持した販売を可能にしました。
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また、年齢層拡大への取り組みは、このように商品の取り扱い幅を広げるだけではありません。1人暮らしや高齢者の増加に合わせ、量というニーズへの取り組みも始まっています。
それは、ローソンの「105円:低価格PB」の全国展開です。

∞∞∞∞日経MJ 2008.6.2版「戦略を聞く」より∞∞∞∞∞
低価格というコンセプトで導入したわけではない。1つの価格にしてはいるが、狙いは1~2人で使いきれる量で提供するということだ。今まではコンビニが若い世代を主要顧客層としていたが、環境が変化してきており、顧客層を拡大していかないといけない。使い切り商品を並べることが購入の動機につながる。
(川村隆利・ローソン筆頭専務執行役員兼COOのコメント)

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これは確かに言えますね。いくら安いとは言っても、量が多く賞味期限内に使い切れない商品では価値がありません。
(特に醤油などは濃くなり、風味が落ちてしまいます)

今後はますます1人や2人暮らしが増加し一世帯あたりの消費量が減少するとともに、家庭内調理機会の減少傾向も強まると考えられます。また、消費者は環境への配慮や無駄なものは買わないという「合理的消費行動」も取るようになっています。
これらの点を考慮すると、「量」という消費者ニーズへの取り組みは、新たな顧客の拡大につながる可能性は大きいと思います。

まだ他にも、スリーエフの水産品:店内調理品第1弾としての「イカ焼きぐし」(5月中旬から)、ファミリーマートの“ひと手間かけた大人の惣菜シリーズ”「アジフライ(店内調理)」(7月上旬から)、セブンイレブンの会員制食事宅配サービス:「ミールサービス」扱い商品の店頭販売の拡大など、取り組み事例はたくさんあります。

今後しばらくは各コンビニチェーンが客層拡大策としてどのような手を打ってくるのか、またどのような商品を開発してくるのか、目が離せなくなりそうです。

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