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2008-07-29

エドウィン デニム ギャラクシー 

20代の頃はいつもジーンズ(昔はGパン、いまデニム)をはいていたのですが、就職してしばらく経った頃から綿パンをはく機会が多くなり、ジーンズとはすっかり疎遠になっていました。

しかし、最近では中高年向けに、ジャケットと合わせることのできる色合いやシルエットの商品も多く発売され、百貨店の売り場でもすすめられる機会が増えました。また、綿パンよりジーンズの方が若々しく、ちょっとオシャレな雰囲気も出せるかなと思い、ここ1~2年はジーンズをはく機会が増えました。

高校時代、初めて買ったジーンズが「EDWIN」製でした。
そのEDWINが会社設立40周年の記念事業として、創業の地:日暮里(東京・荒川)に「エドウィン デニム ギャラクシー」という同社最大の売り場を持つ店舗をオープンしたというので、さっそく行ってきました。

店内に入ってまず驚いたのは、売り場の広さとデザインです(画像参照)。店舗面積はワンフロアで約350坪、ちょっとした食品スーパー並みの広さです。

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売り場はメンズ、レディース、キッズごとに分かれており、キッズ売り場にはレゴブロックで遊ぶスペースも用意されていて、子供を飽きさせない工夫と楽しさが演出されています。

また、メンズ売り場の一角には「ブルーギャラリー」という大人のための装いを提案するコーナーがあり、少しお腹の出たウエストでもスッキリ見せることのできる美脚シルエットや、シックな雰囲気を演出するジーンズなど、スラックス派でもチャレンジしたくなるようなフルコーディネイトが演出されていました。

そして、何といっても「エドウィン デニム ギャラクシー」の特徴は、その場でジーンズを客の好みに加工するサービスです。

ジーンズの好きな場所に絵型をプリントする
ステッチでリメイク加工したり、わざと穴をあけたジーンズをリペア加工する
レザーラベルにオリジナルの文字を刺繍する
ポケットの縁にスタッズ(鋲)を打ち込んだり、ラインストーンをプリントする

などがありますが、一番人気は④のポケットの縁につけるハート形やひし形の鋲打ち。1個105円からと手軽に試すことができるので、人気が高いようです。また、ラインストーンのプリントも女性には人気のようです。ちょうど私が行った時も、年配のご夫婦(60歳くらい)が注文したスワロフスキー転写のできあがりを待っていました。

また、人気の秘密は「デニム工房」にあるようです(日経MJ:2008.7.16より)。

店の真ん中にある「デニム工房」に、補修用やステッチ用ミシン、リベット機など工場の一部機能を持ち込んだ。大半は即日、ミシンで縫いつけ穴をふさいだように見せるリメーク加工などでも最大3日間で客は頼んだ商品を受け取れる。
人気の一因は、注文を受けた店員がそのまま加工を受け持つ点にある。客のこだわりを加工に反映しやすいからだ。利用者の満足度が高く、何度も店に来てもらえるようになりやすいほか、店員の接客や加工の技術の向上につながる利点もある。


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なるほど、この工房(画像参照)には2つの利点があるようです。
まず、1つ目はお客様から「作業者が見える」ということ。自分のジーンズを誰がどのように加工するのか、これが見えたら安心感と信頼感が増しますね。
まるでスーパーの野菜などに生産履歴が生産者の顔写真入りで紹介されているようなものです。

2つ目は店員のモチベーションが上がるということ。
このような加工作業の場合、通常は工場や店舗裏の作業場で行われるため、作業者とお客様が接する機会はめったにありません。しかし、エドウィン デニム ギャラクシーでは作業者がお客様の要望を直接聞いたり、お客様が作業状況を見ることができるので、作業者の加工に対する意識(自尊心)が高まり、技術の向上意欲を駆り立てているようです。

【豆知識】
DENIM(デニム)のアルファベット5文字を自由に並べ換えるとEDWINという5文字を創ることができます。新しい発想、自由な発想で、ジーンズの可能性を切り開いていく『ものづくり』のスピリットがEDWINの名に込められています。

2008-07-17

「冷やしシャンプー」とネーミング 

Photo_2最近、理髪店の店頭で「冷やし中華」ならぬ「冷シャンプー」の旗(画像参照)を見かけたことはありませんか?
この旗は、メントールやしょうのうを使ってシャンプー時に体感温度を下げる製品を開発・販売するクラシエホームプロダクツ(東京・港)が「冷やしシャンプー」普及のために製作したものです。

日経MJ(2008.7.4)によると、
横浜市の理髪店「ヘアーステーショサイトウ」では、2005年から「カキ氷シャンプー」を始めた。今年も6月に入り、冷やしシャンプーの旗を掲げ、来店客に向けてアピールを始めている。氷やシャンプーを混ぜる比率を工夫し、シャーベット状のシャンプーが飛び散らないように工夫をした。
冷やしたシャンプーを使ったお試し用の「冷やしシャンプー」(200円、体感温度10℃)、来店客の目の前で氷とシャンプーをシェーカーで振る「カクテルシャンプー」(500円、同5℃)といったメニューも用意。気温が30度を超える7、8月が最需要期で、来店客の半分が利用する人気。

「ヘアーステーションサイトウ」では、若者ほど冷やしシャンプーの利用比率が高くなっているそうです。店内には昔ながらのカキ氷を作る手動の機械を置き、お客様の目の前でシャカシャカとカキ氷を作ってシャンプーと混ぜるというのですから、涼しさをより演出する効果も大きいのでしょう。

この「冷やしシャンプー」、発祥の地は山形です。
山形市内の理髪店が、最初は「クールシャンプー」とネーミングして始めましたが、人気はいまひとつ。そこで、地元の名産である冷やしラーメンをヒントに「冷やしシャンプー」と名称を変え、冷やし中華をイメージした旗を店頭に飾ったところ大ヒット。今では山形市周辺にあるほとんどの理髪店が、冷やしシャンプーを提供しているそうです。

確かに、ネーミングによって商品の売れ行きは変わりますね。
以前セブンイレブンを経営している時、肉まんの徳用サイズ(具だくさん)が新商品として発売されました。先行地区で売れているという情報を本部から得ていたので、私の店でも大量に仕入れましたが、予想の半分も売れません。その原因は「豚まん」というネーミングでした。

私の店は事業所立地で、販売のピークは昼休み。
客層の中心はOLです。
OLにとって、レジで「『豚まん』1個ください」というのは大きな抵抗があったようです。また私の店では、ファーストフードやタバコの注文を受けた際、必ず大きな声で復唱することを徹底していたので、「ハイ、豚まん1個ですね!」という声がけが余計に気はずかしさを助長していたのでしょう。

そこで、「豚まん」というネーミングをやめ、「特製肉まん(具だくさん)」というネーミングを店独自につけたところ、OLの購入が増えて予想通りの数を販売することができました。

同じものを販売するにしても、そのネーミングひとつでお客様の受けとめ方は変わります。

しばらく前に、宅配食品専門スーパーが市場流通規格外の野菜を集めて「ふぞろいな野菜たち」というネーミングをし、野菜セットを大ヒットさせたことがありました。これは「ふぞろい」というキーワードに、お客様が「安い」「農家直送」などのプラスイメージ(期待感)を持ったからだと言われています。

「たかがネーミング、されどネーミング」です。
POPを書く時には、お客様が商品名を言葉にしやすく、また「期待感」をイメージしやすいネーミング(サブキャッチコピー)をつける工夫をしましょう

2008-07-03

コンビニ深夜規制と温暖化問題

6月に入ってから、京都市、埼玉・神奈川県と、地方自治体のコンビニ深夜営業規制に関する新聞記事が目につきます。これは、7月7日から開催される「環境」と「食料」をテーマとするサミットと何か関係があるのでしょうか。

深夜営業規制について、地方自治体の主張は大きく4つにまとめることができます。
《資料出所:日本経済新聞、2008.6.21》

1.景観配慮
 「コンビニの照明を消すことで、夜間の景観保全になる」
この主張は特に京都市が唱えています。京都市は、昨年9月に中心部の建物の高さやデザインを厳しく規制する新景観政策を導入しており、コンビニの深夜営業規制はその一環と位置づけています。

■コンビニ側の主張
 「立地に応じて看板の形状や色、照度などを変更して対応できる」
確かに、最近ではコンビニの看板も建物や施設に合わせて変えられています。(2008.5.5 「『駅ビル』の変化と対応策」もご参照ください)
東京大学(東京・文京区)にあるローソンの看板と店頭は、周りの緑(景観)と調和するように工夫をされています。
さらに、夜間の照明が外に反射するのを抑えるために、「反射板の角度を夜間のみ変える」「フロントガラスに店内からの照明を吸収するレフテルを貼る」などの対応をすることができれば、外から見た夜間の印象はかなり落ち着いたものとなります(画像参照)。
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2.防犯効果
 「青少年の非行防止につながる」

■コンビニ側の主張
 「07年度にコンビニへの女性の駆け込みが1万3000人あり、この半数が深夜」
特に夏になると、明かりに集まる虫のごとくコンビニにたむろする若者は増えます。
しかし、最近ではカラオケボックスやゲームセンター、ネットカフェなど深夜に若者が遊ぶ場所は増えており、「コンビニに集まる若者は減っている」という加盟店主の声を聞きます。コンビニが非行の温床になるという考えはひと昔前の発想でしょう。
また、昨今は女性も深夜まで仕事をする機会が増えています。コンビニ側の主張にあるように「まちの安全・安心拠点」として、深夜のセーフティステーション的役割は重要だと思います。

3.環境効果
 「営業時間短縮でCO2削減効果が大きい」

■コンビニ側の主張
 「夜11時~朝7時の間店を閉めても、日本のCO2の0.009%の削減にとどまる」
地方自治体のお役人は電気使用量を24時間のうちの8時間、つまり3分の1を単純に減らせると考えているのでしょうか。
仮に、夜の11時から朝の7時まで店を閉めたとしても、最も電力消費量の多い200V動力を使用する冷蔵・冷凍機器は止めるわけにいきません。
また、店外の看板を消すことはできますが、店内では閉店作業と開店作業があるため、閉店後1時間(発注作業等があると2時間ぐらいになることもある)、開店前の約1時間は照明をつけることになります。エアコンも同様です。

さらに、現在コンビニの一般商品の多くは深夜時間帯に納品されています。これを昼間の時間帯に変更すると交通渋滞に巻き込まれ、物流段階ではCO2排出量が増えることにもなります。この結果、コンビニ全体でのトータルの排出量は4%程度の削減にとどまるとコンビニ側は主張しています。
《計算の詳細は日本フランチャイズチェーン協会のHPを参照ください》
http://jfa.jfa-fc.or.jp/pdf/press_080620.pdf

4.経営への影響
 「夜間の人件費などを削減でき、受け入れやすいはず」

■コンビニ側の主張
 「消費者ニーズが強いうえ、売上高が15%~20%減る」
コンビニ側の主張として、この部分はより強調すると同時に、コンビニ経営について知識のない人を前提に具体的で分かりやすい説明をすべきだと思います。
なぜなら、「売上高が15%~20%」減少したら、現在のコンビニ店の多くは経営が成り立たなくなるからです。

それでは、日商60万円の店を事例に考えてみます。
(前提条件・・・月間:31日営業、深夜2人体制)

①深夜閉店に伴う人件費の削減金額=334,800円(1日:10,800円)
閉店後1時間、開店前1時間の人員は必要なため、実質的に減らすことのできる深夜アルバイト人件費は、夜0時~朝6時までの分となります。
(時給900円、0時~朝5時は深夜割増時給で1125円、休憩1時間として)

②昼間の人件費増加金額=139,500円((1日:4,500円)
深夜時間帯に納品になっていた加工食品、酒類、菓子、雑貨、雑誌類などが開店後に納品されるため、その品出し要員が必要になります。また、深夜に行っていた床清掃などの業務が昼間に移行するため、1日平均5人時程度のシフトを増やす必要があります。(時給900円×5時間)

③加盟店収入の減少=477,090円(月間)
「深夜営業をやめた場合、15%~20%売上が減る」という主張は、16時間営業店が24時間営業に切り替えた場合、この程度の割合で売上が伸びるのが一般的であるという経験則があり、適切な予測数値だと思います。
仮に、セブンイレブンのAタイプ(建物・設備等オーナー所有、本部ロイヤルティ売上総利益の43%)日商60万円、荒利率30%の店で日商が15%下がったとします。
そうすると、1日9万円×31日=279万円の売上減少です。
279万円×30%×オーナー収入比率57%(ロイヤルティ控除後)=477,090円

差し引き結果は、
②+③-①=-281,790円(20%減の場合は、-440,820円)

単純に、深夜営業廃止に伴う人件費増減と売上減で試算しても、これだけのオーナー収入が減ることになります。

多くのコンビニ店の財務状態を見ると、損益分岐点が高く安全余裕度が15%~20%もある店はごくわずかです。それこそ加盟店にとっては死活問題になります。

コンビニの深夜営業が中止されれば、環境問題に取り組む姿勢として象徴的な意味合いはあるかも知れません。しかし、問題解決にはほど遠いと思います。
地方自治体には特定の業種や業態に対する安易な規制ではなく、地域社会全体として何ができるのか、何をすべきなのかを考え、政策を打ち出してもらいたいものです。

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