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2009-03-22

「スタッフの“やる気”を引き出す法則」:発売中!

先日、あるコンビニ大手チェーンのスーパーバイザーと新しい求人情報サイトの活用について話をしていたところ、「いまは利用する店、少ないと思いますよ。最近、求人広告出すとすぐに集まるから」という意見が返ってきました。

確かに、昨年の前半までスタッフ集めに苦労をしていた外食チェーンやスーパーなどからも、「最近は採用しやすくなった」という声を頻繁に聞きます。

その最大要因は、昨年の秋口から始まる世界的な経済危機の影響でしょう。派遣社員が解雇され、新しい職場を探すまでのつなぎとしてアルバイトをしたり、親のリストラや賃金減少の影響で今までアルバイトをしていなかった学生が働き始めたり、また減少した世帯収入を補うため主婦がパートで働き始める機会も増えています。

小売業や飲食業の分野でスタッフの採用がしやすくなったことは喜ばしいことですが、ひとつ懸念していることがあります。

それは、昨年前半までの数年間、スタッフ採用に苦慮していた企業の多くが「いかにスタッフの定着率を高めるか」という視点を重要視して、さまざまな人材育成策に取り組んでいました。しかし、ここにきて、「採用しやすくなったから」とせっかく始めた人材育成策を中止する企業が増えていることです。

しかし、現在の採用環境の好転は景気悪化によるものです。景気は循環するので、また数年後にはなかなか採用ができない厳しい環境になることが考えられます。なぜなら、少子高齢化や学生のアルバイト時間の減少等は今後も続くと考えられているからです。

本来は優秀な人材が採用しやすくなった今だからこそ、人材育成策を継続・強化し、店舗スタッフの戦力化を図り、人時生産性で競合他社との差別化を図る必要があるのです。

Photo そのような先見性のある企業にぜひ活用していただきたいと考え、このたび新しい本を出しました。書名は、スタッフの“やる気”を引き出す法則」(商業界:1680円【税込み】)です。

以下、【はじめに】の内容と目次を掲載しておきます。
パート・アルバイトや若手社員の定着率をより高めたい、能力を伸ばし活用し、売上アップに結びつけたいとお考えの方に、社内の教育研修テキストとしてご活用いただければ幸いです。

【はじめに】
 前著「店長のための現場を活かすコーチング」(2003年4月10日発行/商業界)を執筆した6年前、商業分野の企業で「コーチング」はほとんど知られていませんでした。そのため前著は、まず「コーチングを知ってもらう」ことを目的に、スーパーの店長が新入社員の教育をする過程でコーチングを学んでいく、というストーリー仕立てにしました。
 前著は出版後、ストーリー仕立てという読みやすさが支持され、スーパーやコンビニ、外食・美容院・アパレルなど多様な企業で店長やスーパーバイザーのコミュニケーション・スキル向上の課題図書として活用されています。

 現在ではコーチングの認知度も高まり、多くの企業で上司と部下のコミュニケーション改善やスタッフの定着率アップを目的としたコーチング研修が行われています。しかし、経営者や教育担当者から、コーチングの活用を単なる管理職者と部下の人間関係改善の範囲に留めず、「店や企業の業績改善に結びつけたい」というニーズが高まっています。

 そこで本書では、店長や管理職者がコーチングを活用することで職場の「目標管理」や「問題解決」を効果的に行い、スタッフの成長を図ると同時に職場の生産性を高め、企業業績を向上させることができるよう、“コーチング・サイクル”の活用を薦めています。
 “コーチング・サイクル”とは、典型的なマネジメント・サイクルのひとつである「PDCAサイクル」と同様に、【目標(問題)の明確化】⇒【解決策・実行策の検討】⇒【実行の確認】⇒【フィードバック】というサイクルを通して、部下の“成長”と組織目標の達成を両立していこうとするものです。

 しかし、コーチング・サイクルを活用し続けるためには、部下のことを十分理解すると同時に、管理職者がコーチング・スキルと共にコーチング・マインド(相手に期待感を持つこと、共に成長しようとする姿勢)を身につけることが必要になります。
 そのため、第1章では特に若いスタッフの「働きがい=自己の成長」に焦点を当て、“価値観の違い”を理解する必要性を述べています。また、第2章・第3章ではスタッフ一人ひとりの「成長過程」に合わせたアプローチの仕方や「行動パターン」の“違い”を理解し、コミュニケーションを図ることの重要性も解説しています。

 目標管理制度や定期面談などの仕組みを作っている企業や店長から、「形だけで終わってしまう」「期待するような成果が得られない」という声をよく聞きます。その原因の多くは、仕組み(ハード)のみを作り、活用のために必要不可欠なコミュニケーション・スキル(ソフト)を学んでいないことにあります。
 そのような企業や店長には、ぜひ本書を「目標管理制度」や「定期面談」を効果的に進めるためのソフトとして活用していただき、スタッフの“成長を促す”と共に、企業の“業績向上”につなげていただきたいと思います。


第1章  スタッフの「働きがい」の変化と対応策

第2章 スタッフ一人ひとりの「成長過程」の把握と対応策

第3章 スタッフ一人ひとりの「行動パターン」の把握と対応策

第4章 スタッフとの「コミュニケーション環境を整える」:聞き方

第5章 スタッフのモチベーションを高める:認め方・ほめ方

第6章 スタッフの“考える力”を伸ばし、“潜在能力”を活かす:問いかけ方

第7章 スタッフの“成長”を促す「コーチング・サイクル」の実務

2009-03-01

百貨店に「セブンプレミアム」登場!

私が通っているスポーツジムは、池袋(東京都豊島区)にあります。
営団地下鉄丸の内線を池袋駅で下車、すぐ地上に出ても行けるのですが、私はできるだけ西武百貨店(池袋本店)の地下食品売り場を通ってジムに向かいます。
なぜなら、同じ売り場を毎週のように定点観測(ウォッチング)していると、季節感や行事、さらには食のトレンドなど、さまざまな変化を肌で感じることができ、商品や販売手法に対するマーケティング・マインドを磨くことができるからです。

Photo_2そんな私のジムへの通り道である食品売り場の一角に、セブン&アイのPB商品「セブンプレミアム」を集めた専用コーナーが2月10日に出現しました(写真参照)。
もともと、ここは地下2階にある生鮮食品売り場から、高品質食品スーパーとして営業をしている「ザ・ガーデン自由が丘」へ抜ける通路で、両壁面には世界各国のスパイスや調味料、乾物類や健康食品などが陳列・販売されていた場所です。そのスペースの約半分を使って、セブンプレミアムは展開されていました。

「へえ~、ついに百貨店でも『セブンプレミアム』を扱うようになったんだ」と、その変化対応ぶりに感心をしていたのですが、2月16日(月)の日本経済新聞朝刊には下記のような記事が掲載されていました。

販売開始から4日間で売上高は目標値を2割程度上回っており、すべり出しは好調。菓子類や飲料がよく売れるという。「ごく一部の百貨店にふさわしくないという意見もあったが、大半の人が『一度に買い物ができて便利』と評価してくれている」(ミレニアムリテイリング)
セブンイレブン&アイと傘下百貨店の連携強化策の一環だが、高級な食材やスイーツなどを売る「デパ地下」で、低価格が売り物のPBを売るのは異例中の異例。低迷中の百貨店のテコ入れという側面が強いが、セブンプレミアムの販路拡大という面で大きな意味を持つ。


確かに一部には、スーパーやコンビニが扱うPB商品を百貨店が扱うことに対して否定的な見方もあるようです。しかし、そのような発想では消費者ニーズの多様化や価値観の変化に対応することはできません。
もともと、日本の百貨店はあらゆる所得層の人が利用しており、欧米の百貨店のように利用者の所得層が特定されていなかったため、PBが受け入れられる土壌はあったと思います。また、最近の消費者は一人の中にもさまざまな消費シーンや商品価値を持っており、今までのような所得や職業、年齢、家族構成などのセグメントは通用しなくなっています。

日経ビジネスの2月16日号には、そのような多様化の現実と対応の必要性を感じさせる記事が、「キリンが挑む多様化への道」というタイトルで掲載されていました。

■消費者は「千手観音」
消費の多様化に対応した売り場作りに、購買データを参考にしながら取り組もうとする小売業がある。コンビニ大手のローソンだ。
(中略)
人によってアルコール飲料に期待する役割が違うこともあれば、同じ人でも生活シーンによって飲みわけている場合もある。ローソンのデータでは、4週間のうちに20代男性の4割強、同年代の女性では約3割が、ビール系飲料4ブランド以上を手にしていることがわかった。1人の消費者がいろいろな商品に手を伸ばしている。まるで千手観音のごとくたくさんの手を持っていることになる。これが多様化の現実だ。


西武百貨店セブンプレミアム売り場を観察していると、「ザ・ガーデン自由が丘」の買い物袋を持った年配の人が、お菓子や調味料・冷凍食品などを購入している姿を見かけます。
日常的な食品等については、サイズが小さく使い切ることができ、なおかつメーカーや販売先などに信頼感のあるPBは、利用価値が高いのでしょう。


今後、生活シーンや求めるベネフィットによる消費者の価値観の多様化はますます進化するものと考えられます。
その変化に、百貨店の食品売り場がどのように対応していくのか、これからますます“定点観測”が楽しみになりそうです。

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