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2009-07-26

「スタミナ牛焼肉弁当」と「空弁 焼さば鮨」の意義

7月23日(木):日本経済新聞朝刊に【小売業、値下げ効果見えず】というタイトルで、次のような記事が掲載されていました。

上場小売業の2009年3~5月期連結決算が出そろった。消費不振で経常利益の合計額は前年同期比22%減の1846億円。2四半期連続の経常減益だった。各社は消費需要喚起のため低価格戦略にシフトしているが成果は十分とは言い難く、先行きの不透明感は強まる一方だ」

「多くの企業が春以降、値下げ幅を拡大し結果として粗利益率の低下を招いている。粗利益率は72社中、64%にあたる46社が低下。うち11社が1ポイント以上低下した」


確かに、消費者の「生活防衛意識の高まり」への対応策として、スーパー各社は値下げ競争を激化させています。しかし、値下げは客数増や売上増という一定の効果を生み出すものの、粗利益率と粗利益額の減少という負の要素も招きます。
そのため、「販管費削減の工夫」や付加価値の高い「高単価商品」の販売をうまくミックスさせることのできない企業は値下げの原資を生み出すことができず、減益幅を拡大させています。

Photo_4 この現象はコンビニ業界も同様で、最近の弁当売り場を見ると「398円弁当」のオンパレードです。昨年までのコンビニ弁当の最低価格帯(ミニ弁当を除く)は、430円~450円程度でした。
しかし、西友の「298円弁当」に代表されるように、スーパーが低価格弁当を次から次へと発売し、コンビニから顧客を奪っているため、その対抗策として300円台の弁当を増やしているのです。

「しかし、これではスーパーとの価格競争に巻き込まれ、コンビニは適正な粗利益を確保することが難しくなるぞ」
と思っていたところ、ローソンとサークルKサンクスが「付加価値の高い」コンビニらしい弁当を発売したのでさっそく食べてみました。

まずは、24日発売のローソン:「スタミナ牛焼肉弁当(450円)」です。
ローソンによると、本来ならば700円程度の価値がある商品なのですが、牛肉を一括調達することで仕入れ価格を抑え、450円での販売が可能になったそうです。
正直、あまり期待せずに食べたのですが、肉の量・質ともに十分満足できるものでした。
また、味付けには「果物の甘みと魚介の旨みが特徴の特製だれ」を使用しており、夏バテ気味の体にはとても美味しく感じられました。時々、デパ地下にある柿安ダイニングの「黒毛和牛の牛めし弁当(1050円)」を食べるのですが、半額以下で、しかも近隣のローソンでこのような商品を買えるのは魅力だと思います。


Photo_6 次は、23日発売のサークルKサンクス:「空弁 焼さば鮨(498円)」です。
「空弁 焼さば鮨」は、羽田空港などで販売店を運営するJALUXとサークルKサンクスの 共同開発商品で、「空弁」として人気の高い「焼き鯖寿司」と「黒いなり」を詰め合わせたオリジナル商品です(8月12日までの期間限定発売)。
羽田空港に行くと、売店の「BLUE SKY(ブルースカイ)」で大々的に販売されていることは知っていましたが、食べるのは今回が初めてでした。焼さば鮨が4切れと黒いなりが 1個(半分にカット)と分量は少な目ですが、味も良く、コンビニ利用者に増えている 私のような中高年には満足いくものでした。また、なんと言っても、「空弁」がコンビニで買えるというのは魅力です。

2009-07-19

「立ち食いそば店」に学ぶ売上アップ策

Photo 前回は、この不景気な経済状況の中、売上を伸ばしている「餃子の王将」について書きましたが、「立ち食いそば」も元気な外食業のひとつではないでしょうか。
最近、立ち食いそば店の客の入り具合を観察していて、コンビニやスーパーの弁当・ 麺類など、ランチ需要の品揃えに活かせるヒントがあるのではないかと思いました。

ところで、「立ち食いそば屋」は利用していますか?
私は昔、コンビニ本部で担当店を巡回する仕事をしていたため、週3回以上は街道沿いの立ち食いそば店を利用していました。その後、独立してコンビニやレストランを経営するようになり、さすがに利用回数は減りましたが、それでも週1回は利用していました。
今でも、仕事の移動で時間がない時などは、駅前や駅ナカにある店をよく利用しています。最近では「立ち食いそば」と言いながら、イスとテーブルが用意されている店がほとんどで、ビールなどもあるため重宝しています。

では、この“和製ファースト・フード”とも言われる「立ち食いそば」はどの程度利用されているのでしょうか。
昨年2月に日経MJ(2008.2.13)が調査したデータを見ると、
■よく利用する=男性:16.5%、女性:2.3%
■たまに利用する=男性:45.5%、女性:21.4%
■あまり利用しない=男性:26.2%、女性:32.0%
■利用しない=男性:11.8%、女性:44.3%
《調査対象者=男性:1,095人、女性:1,087人》

この調査は昨年の2月時点で景気もまだまだ良かった時です。
「よく利用する」と「たまに利用する」で男性合計は62.0%ですが、現在調査をしたら80%を超えているかも知れませんね。半年ほど前に、立ち食いそば店3店を経営している知人に話を聞いたら、リーマンショック以来売上が大きく伸びていると話していました。

Photo_2 また、最近、近隣の駅前にある立ち食いそば店を観察していると、ひと月の間にも客の入り具合に特徴的な変化が見られます。
まず、サラリーマンの多くが給料日前で苦しんでいる20日~24日の平日・12時頃に行くと、店の外まで食券を買い求めている人が並んでいます。「天ぷらうどん」を食べても350円~380円程度。ミニカレーなどのセット物にしても500円以内で済むような昼食は、この時期のサラリーマンにとっては大きな魅力なのだと思います。

しかし、25日~月末の同じ曜日・時間に行ってみると、その様子は大きく変わります。 食券を買い求めている列がないどころか、店内もガラガラということがよくあります。 この変化は、サラリーマンの懐具合と昼食に求めるニーズの変化を如実に現していますが、平日のランチ需要の多い立地のコンビニやスーパーはどうでしょう。

弁当や麺類の『品揃え価格帯』を給料日前後で変化させ、アピールすることができれば、給料日前の機会ロス(来店減少)と給料日後の機会ロス(客単価アップ)の両方を減らすことができるはずです。
しかし、そのような取組みもせずに、「売れない」とあきらめている店があまりに多いのではないでしょうか。

2009-07-12

「餃子の王将」と「スーパー」のオープンキッチン

Photo 先日、テレビ番組で「餃子の王将」が取り上げられているのを見て、久しぶりに「餃子の王将」の餃子が食べたくなり、最寄りの店まで出かけてきました。
ちょうど、土曜日の昼時ということもあり、店内は2階まで満席、待っている人が店内には3人ほどいました。また、この店は駅前ということもあり以前からテイクアウトの人が多く、私が行った時も主婦らしき人が3~4人、注文の品が出来上がるのを待っていました。

私が食べたのは『東京ラーメンセット』(924円:税込み:写真)です。
醤油ラーメン・チャーハン共に量は少な目ですが、さすがに全体のボリュームはたっぷり、最近食が細くなった私には完食するのが苦しいくらいでした。(学生時代は平気でビールを飲みながら5~6人前の餃子を食べていたのですが・・・)


Photo_2 不況期の今、この安さとボリューム満点の中華料理が消費者から支持され、「餃子の王将」を全国で500店舗以上展開する【王将フードサービス(大証1部)】の業績は絶好調です。一昨日に発表された6月度の既存店売上高は前年比で25.9%増と過去最高。株価は5月まで1500円前後で推移していましたが、7月10日の終値では2395円と大きく上昇しています。

そんな絶好調の「餃子の王将」にも苦しい時期があったことを初めて知りました。
その当時、「餃子の王将」はファミリーレストランがブームになっていることを参考に、厨房をクローズ化し、きれいなコジャレた店に変えていました。しかし、お客様が求めていたものはそのような店ではなかったのです。

チャーハンを炒める音、餃子を乗せた鉄板に水を注ぐ音、餃子の焼き上がった音と匂い、すごいスピードで餃子を作る職人技、お客様の入退店時の声がけ、スタッフ同士の声がけ。そのような五感に訴えかけてくる全てのものが、料理をさらに美味しくさせると同時に、エンターテイメントとしてお客様に支持されていたことに気づかなかったのです。ある時、それに気づいた社長は財務的に厳しいながらも全店の厨房の壁を取り払い、再度オープンキッチンに変えました。その後、次第にお客様の支持は回復していったそうです。

この話を聞いて、思いついた事があります。
それは、スーパーの惣菜やパン等のオープンキッチンの使われ方です。レストランを見れば分かるように、オープンキッチンは作っている過程を目だけではなく、耳(音)や鼻(匂い)でも体感してもらい、より料理を美味しく食べてもらうための演出装置です。

しかし、スーパーのガラス張りのオープンキッチン(厨房)はどうでしょうか?
まず、いつ見ても気になるのが作業をしている人達の表情が暗く、惣菜などを選んでいる私と目が合っても会釈(あいさつ)ひとつしないことです。また、最も売上がピークとなる時間帯には作業が終わり、厨房内にスタッフはほとんどいません。見えるものと言えば、お世辞にもきれいとは言えない使い終わった厨房機器や棚に積まれたビ二ールに入ったトレーなどの在庫です。

このような状態のオープンキッチンは「見せる」意味があるのでしょうか?
見せることによりかえって、商品価値が下がってしまうのではないでしょうか?

見せるなら、見せるなりの創意工夫をスーパーにはしてもらいたいものです。

2009-07-05

コンビニの「独立支援制度」を活用しよう!

今日はホテルパシフィック東京(港区)で開催された中堅コンビニチェーン:「スリーエフ」の『独立支援セミナー』に行ってきました。目的は、【独立に向いている人・いない人】というテーマで講演をするためです。

Photo このセミナーは年2回開催されているのですが、今回は年初に実施された時よりも大変多くの参加希望者があり、担当者の方も驚いていました。やはり、昨年からの景気低迷による雇用環境や企業業績の悪化が背景にあり、独立開業を検討している人が増えているのでしょうか。

ただ、独立をしたいと思いながらも「開業資金」や「加盟金」が足りない、「パートナー(配偶者など)」がいない、小売業の「経験」がない、「自信」がない、という理由でなかなか独立に踏み切れない人も多いようです。

そのため、近年、コンビニ業界ではさまざまな「独立支援制度」を作り、より優秀な加盟希望者を確保しようとする動きが増えてきています。
詳細については、日本経済新聞社主催の「フランチャイズショー」ホームページ内にあるコラム【最新フランチャイズマーケットトレンド・第7回:コンビニ業界リポート】で私が執筆していますので、下記のアドレスからアクセスしてみてください。
http://www.shopbiz.jp/fc/column/market/36226.html

これらの制度、私はぜひ20代~30代の若者に活用していただきたいと思います。
独立意欲や能力(可能性)を持っていながら、経験や資金面で独立開業をあきらめている若者はたくさんいます。そのような若者には「独立支援制度」を活用することで、『独立開業=経営者になる』という夢を叶え、雇用の創出や地域社会・経済への貢献もしていただきたいと思います。

また、日本にコンビニエンスストアが誕生してから30年以上が経ち、コンビニ業界も大きな転換期を迎えています。このような時期だからこそ、新たな時代に対応したコンビニを作っていくためには、若い経営者のエネルギーや発想(取組み)が必要なのだと私は考えています。

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