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2009-08-30

「朝カレー」の発想で新規需要を開拓!

最近、レトルトのカレーが良く売れているようです。
日本缶詰協会(東京:千代田区)のホームページを見ると、2008年のレトルトカレーの国内生産量は約14万トンと前年比9%の伸び、2001年の約11万トンから3万トンも増えています。また、この国内生産のほとんどは日本の市場向けだそうです。

レトルトのカレーは、「独身男性が1人で食べている」というイメージを持たれがちですが、それだけではないようです。専業主婦が子供や夫のいない昼食に手間をかけずに済む食事としてレトルトカレーを利用しているケースが多いようです。また、世帯収入がなかなか増えない中、安価に食事を済ますことのできるレトルトカレーの需要は確実に伸び続けています。

Photo カレーというと、どうしても夕食や昼食に食べるという印象が強いのですが、レトルトカレーにその常識を覆すような商品が登場しました。
それは、今年の2月にハウス食品から発売された「朝カレー」です。忙しい朝に温めなくても食べられる手軽さや分量がごはん茶碗1杯分という使いやすさも受け、静かなブームになっています。
【商品詳細は下記サイトへ】
http://housefoods.jp/products/catalog/cat_1,1020,1059,1453.html

「朝にカレーを食べると脳にいいらしい」という評判は、昨年のはじめ頃から受験生の間で広がっていました。実際、私の息子も大学受験日の朝は、妻が作ったいつもより辛目のジャワカレーを食べて受験に臨んでいました。

「カレーを食べると病気はよくなる」 (ビタミン文庫) の著者である日本薬科大学教授の丁 宗鐵 医師の実験によると、カレーを食べると脳内の血液量が増加し、「情報処理」を担当する部分の働きが活発となり、集中力や計算力がアップされる。また、カレーを食べるとその成分であるスパイス(漢方薬で使用する生薬と共通のものが多い)が脳や体の交感神経を刺激して、抵抗力を高めると同時に人を「やる気モード」にするそうです。

私達はどうしても、「カレー=昼食か夕食」という固定概念を持っています。
しかし、それを捨て、「朝食にカレー」という視点を持つことができれば、レトルトカレーだけではなくカレールーや使用する肉・野菜などの食材、さらには付け合せや飲み物などの関連販売も含めた新たな需要を開拓することができるのではないでしょうか。

2009-08-23

「従業員教育」に再注目する食品スーパー

8月14日(金)の日経MJに、「ライフ・マルエツの研修施設:スーパー各社の利用増加」というタイトルの記事が掲載されていました。

食品スーパー最大手のライフコーポレーションと首都圏地盤のマルエツが共同で設立した食品スーパーの従業員向け研修施設、日本流通未来教育センター(埼玉県蕨市、JeFR)が活況だ。2008年度の利用者は、前年比1割増の約5万人。各社が店舗の競争力向上のため、従業員教育に再び注目し始めたことが背景にある。JeFRも多様化する教育ニーズに応じるため、講座の拡充に乗り出している。
店長や主任など店舗で核となる人材を対象にしたコースが主で、費用はおおむね1人当たり1万円~6万円台。内容は生鮮品などの加工技術に加えて、接客技術や食の安全、店舗マネジメントやクレーム対応、パート従業員のやる気を引き出す「コーチング」などにまで広がっている。

Photo_2 実はこの「コーチング研修」、日本流通未来教育センター設立当初から私が担当している『店長コーチング実践コース』なのです。
基本的には年2回開催されており、スタート当初はライフやマルエツの店長が中心でしたが、最近では他の地方の食品スーパーチェーンの店長さん達の参加が増えてきました。また、スーパー以外でもコンビニエンス・ストアやリサイクル・ショップの店長などの参加もときどきあります。さらに、ライフでは店長に次ぐ職位の「店長代理」育成にも力を入れて始めており、年2回以外にも臨時開催もしています。

研修の様子などは、日本流通未来教育センターの下記サイトから見ることができます。
【研修通信】平成19年6月号 http://www.jefr.co.jp/tuusin/tuusin0706.htm

今までの食品スーパーの従業員教育の多くは、職場内訓練(OJT)が中心でした。しかし、競合の激化や従業員の働く価値観の変化、消費者ニーズの多様化・高度化などに対応するためには、従来の教育手法では不十分だということに多くのスーパーの教育担当者は気づいています。
ただ、そのような従業員教育の重要性に気づいていても、ノウハウや教育投資資金が不足しており自前で研修ができないスーパーも多々あるのが現状です。このような食品スーパーや小売チェーン店にとって、手頃な価格で従業員教育ができる「日本流通未来教育センター」の役割はとても重要だと思います。


※次回の「店長コーチング実践コース」開催は、2009年11月12日(木)となります。
  詳細確認・申込み等は下記サイトからどうぞ。
http://www.jefr.co.jp/index.html

2009-08-09

キリン「フリー」に見る消費者ニーズの変化

今から遡ること25~26年前、私はセブン-イレブン・ジャパンで加盟店の経営指導をするOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)をしていました。OFCの大切な仕事のひとつとして、毎週火曜日に推奨される新規商品を加盟店に案内し、できるだけ多くの商品を発注してもらい、新鮮な売り場作りを支援するという業務があります。

Photo_2 ところがある時、火曜日でもないのに『バービー缶』(写真)を全店に導入するという話が持ち上がりました。
「急にどうしたのだろう?」と思い、上司に確認したところ、「鈴木敏文社長(当時)が暑い日にドライブに出かけ、途中でノンアルコールのビールを買おうとセブンイレブンに立ち寄ったところ、扱っていないことを知って怒ったらしい」という説明が返ってきました。
「えっ、そんな理由で推奨するの?」と思いましたが、翌週にはバービー缶のポスターまで送られてきて、私の担当店もしっかり品揃えをしました。
しかし、当時はノンアルコールビールに対する需要が少なく、3ヶ月程度で本部推奨からはずれ、売り場からも姿を消しました。

また、10年ほど前、レストランの経営をしていた時にも車で来店した人やアルコールがダメな人向けに、ドイツの「ゲステル」というノンアルコールビールをメニューに加えたのですが、この時も注文が少なく半年ほどでメニューからはずしました。

このような経験があったため、「2009年上半期新製品 売れ筋ランキング」(日経MJ:2009.7.27)の酒類部門で「キリンフリー 350ml」(写真)が1位になっているのを見て驚きました。
売れている理由はいくつかあるようです。

Photo_4  まず、従来のノンアルコールビールは「ノンアルコール」と言いながら、アルコールが0.5%未満は入っていたのに対して、「フリー」のアルコール分は0.00%で、アルコールに弱い人でも安心して飲むことができる点です。また、飲酒運転に対する意識の高まりもあるのかも知れません。

次に挙げられるのは、ビールの麦汁製造技術と香味調合技術を組み合わせ、発酵させずにビールに近い味を実現できたことです。確かに、バービー缶やゲステルに比べると格段に美味しく、ビール感覚を味わうことができます。

さらに、お酒に求めるニーズが変化していることも挙げられます。従来は、アルコールに『酔う』ことを目的にお酒を飲む人が多かったのですが、最近ではお酒は主役ではなく雰囲気のもり立て役にまわっている世代も増えています。


先日、私がよく通っている接骨院のビール好きの先生(女性)が、
「最近、ビールを飲む前に『フリー』を飲むのよ、こう暑いとついビールを飲みすぎちゃうでしょ、だから『フリー』を飲むことでセーブしているのよ」と言っていました。

「なるほど、このような利用の仕方もあるのだなぁ」と、商品に求める価値の変化と多様性を改めて感じ、このような変化に対応していくことがますます今後の小売業には必要だと思いました。

【来週はお盆期間のため、1回お休みさせていただきます】

2009-08-02

商品の付加価値を高める「ストーリー性」

今日の朝食は、カフェオレと「シロワッサン」でした。

「えっ、クロワッサンの間違いでは?」と思われた方も多いかもしれませんが、けっして間違いではありません。あくまでも『シロワッサン』です。

昨夜のテレビ番組「めちゃ×2イケてる」を見ていたら、フジテレビが開局50周年記念イベントで行っている「09’お台場合衆国:めちゃ畑牧場」で、『シロワッサン』が8月2日からローソンで発売されると紹介されていたので、さっそく買ってきたわけです。

Photo 実はこの「シロワッサン」、1月24日の「めちゃイケ」で矢部のオファーシリーズとして取り上げられていた商品なのです。
オファーをしたのは、東京足立区「ゆうやけ通り:千住緑町商店街」にある小さな昔ながらのパン屋さんでした。矢部と店主は店の売上と認知度を上げるために新しい商品開発に取組むのですが、その中で目をつけたのが白いクロワッサンでした。
そこで、さらに特徴を出すため、中に入れる具材を店主と一緒になり試行錯誤を繰り返します。試作品として出来たのは、ねぎワッサン・モツワッサン・しゃけワッサン・シチューワッサンなどさまざまな商品で、その中でも一番人気があったのがシチューを入れたものでした。そして、この商品を『シロワッサン』として発売し、販売目標数量も達成することができたのです。

当時、「食べてみたいな」とは思いましたが、さすがに千住まで買いに行くことはしませんでした。しかし、ローソンでの発売を知って思わず朝一番で買いに行ってしまったわけです。

消費者が商品を買い求めたくなる要素は、商品そのものの価値だけではありません。その商品開発等にまつわる情報(ストーリー性)も購買意欲を喚起する重要な要素です。

私が以前、イタリアンレストランを経営していた時の事例を1つご紹介します。
その店は、目の前に教会があり、教会関係者の方にたくさん利用していただきました。しかし、ワインのオーダーが少なく、「どうしたら、もっとワインを飲んでいただけるだろう?」と考えていたところ、スタッフの一人が「ラクリマクリスティ」というイタリアワインに注目しました。

「ラクリマクリスティ」は“キリストの涙”と言われるワインで、そのネーミングから教会関係者の注目を引くことは可能です。また、そのネーミングの由来となる伝説は次のようなものでした。

『その昔、神によって天国から追放された大天使-サターンは、天国の土地を一部持ち去り、逃げ出しました。その途中、サターンは盗んだ土地を落としてしまい、その場所にナポリの街ができました。しかし、街の人々は悪徳の限りを尽くします。ナポリの悲惨な様子を、天上から眺めていたキリストは、あまりの悲しさに涙を流しました。すると、その涙が落ちたところから葡萄の樹が生えてきて、素晴らしいワインが生まれたのです。』【ワインショップサイト「エーワイン」より】

この由来となる伝説をワインリストに記したところ、教会関係者の多くがこのワインを注文してくれるようになりました。また、友人などを誘って来ては、「このワインはね、『キリストの涙』と言ってとても素敵な伝説があるんだよ」と伝説を話しながら楽しそうに飲んでいる方をたくさん見かけるようになりました。

最近、コンビニやスーパーなどで企画モノの商品が増えています。また、スーパーでは生産者の名前を出すことによって、安心感をアピールしている商品も増えてきました。
しかし、それだけではこの厳しい競合環境の中、買っていただくには不十分です。

「この商品をお客様にお薦めしたい!」
という想いや理由について、ストーリー性をよりアピールすることが必要なのではないでしょうか。

そうすれば、「このトマトはね、○○のスーパーで買ったんだけど・・・」と食卓での会話も生まれ、商品そのものや店に対する価値もより高まるのではないでしょうか。

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