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2009-11-29

百貨店の食品売場に何を求めるのか?

11月23日(月)の日経MJに掲載されていた「10月度の百貨店売上高」の前年比を見ると、総額で全国が-10.5%、東京地区が-13.1%と共に2ケタ減で厳しい状況です。しかし、販売部門ごとの内容に目を向けてみると、「食料品」は全国で-5.4%、東京地区で-7.7%と比較的落ち込み度合いが低くなっています。そのためでしょうか、最近では来店客数を増やそうと、販売構成比が高い食品売り場に力を入れている百貨店が増えてきています。

その典型的な事例が、11月28日(土)にリニューアルオープンした西武池袋本店(東京都・豊島区)の「西武食品館」です。今回のリニューアルにあたっては、単に有名店をテナントとして入れるだけではなく、運営方法にもさまざまな工夫をしていることが日経MJ:11月27日(金)版に掲載されていました(一部抜粋、青字部分)。

また、これまでは惣菜店や鮮魚店などの取引先に運営を「お任せ」していた点を改めた。ヨークベニマル、イトーヨーカ堂といったグループのスーパーから2月にバイヤー3人を受け入れ、「生鮮活性化プロジェクト」がスタート。取引先の店長や運営担当者、そごう・西武のバイヤーらが毎朝、店舗ごとに品ぞろえや販促策などを共同で考案する仕組みを導入した。

このリニューアルで私が最も注目したのは、「夕食セレクト」という売場とサービスです。この売場では惣菜売場にある7つの人気店のメニューを1品単位で、好きな組み合わせで購入することができるのです。それも、各店からさまざまな「主菜」「副菜」「主食」がバランスよく選ばれているので夕食メニューを組み立てる楽しみがあると同時に、自分の好みの味や店を探すのに良い機会となりそうです。

また、これらの商品には「インターネットご予約サービス」があるというので、思わず利用してしまいました。
これは受け取り当日の午後1時30分までに好きな商品の組み合わせを申し込むことで、夕方の5時以降に受け取ることができるサービスです。女性会社員らが「仕事帰りに広い売場を回るのは疲れる」という声が多かったことから始められた売場とサービスだと日経MJには書かれていました。
【詳細は下記のアドレスをご確認ください】
https://netorder.sogo-seibu.co.jp/ikesei/yushoku/

Photo 私がインターネットで予約したのは、写真の上から時計回りに
①新宿高野:人気サラダ3種=315円
②まつおか:香豚ネギチャーシュー=315円
③桂林:エビ塩炒め:315円
④まつおか:和惣菜盛りB=315円
⑤桂林:酢豚=315円
⑥桂林:プチあんかけ焼きそば=210円
⑦【中央の商品】ホワイトベアー:しらすのペペロンチーノ=210円

合計7品目、金額にして1995円でした。2人分の夕食(つまみ)として購入したのですが量的には十分でした。また、一人当たり1000円で色々な店の味を楽しむことができた点では満足度も高いものがありました。

消費者が百貨店に求めるものは「高品質」と「新たなサービス(買い物をする楽しさ)」だと思います。大変厳しい経済環境下ではありますが、百貨店には単なる価格競争に陥ることなく、買い物をする楽しさを私達に常に提供していただきたいと思います。

2009-11-22

シニア層の消費意欲を喚起しよう!

Photo 私が入会しているスポーツジムには大変珍しいものがあります。それは、ジムの利用回数を掲示する「トレーニング回数ボード(写真)」です。
まるで、剣道や柔道の道場に掲げられている有段者の木札のようだと思いませんか。
また、その回数を見ると驚きます。最高回数位の2名は、なんと!「7200回」です。このジムは月に2回の定休日があり、年始に3日間休館しているので、毎日ジムに通ったとしても7200回を達成するためには21.3年かかる計算になります。下位クラスの1000回であっても、週3回のジム通いでは6.4年以上かかることになります。

実はこのジム、かなり昔からあるのですが、最近は特に中高年齢者の利用が増えており、「仕事を引退したあとの余暇をジムで過ごしている」人達が相当いるようです。私がよく行く夕方の時間帯に限定すると、利用している約8割は私よりも年齢が上の人達です。中には、午前中からお弁当持参で来館し、夕方にはジャグジーとサウナに入り風呂も済ませて帰宅するというお年寄りまでいます。いまや、このスポーツジムの経営はシニア層の利用なくして、成り立たない状況です。
[シニア層=60歳以上と仮定]

生活関連消費に目を向けると、このような状況はスポーツジムばかりではありません。過去10年間で国内市場が2割弱縮んだといわれる眼鏡市場でも老眼鏡の需要が増加し、売上の5割を超えようとしています。そういえば、私もここ3年間で老眼鏡を2度作りました。
また、紙おむつ市場も2008年度には大人用が1500億円と乳幼児用と並び、今後はさらに増加するといわれています。さらに、売上不振の携帯電話機で異例のヒットとなっているのが、機能を絞ったNTTドコモの「らくらくホン」です。99年の発売以来シニア層中心に売れており、今春までの販売台数は1500万台を超えました。
このようなシニア層需要の生活関連消費を挙げればまだまだたくさん出てくるはずです。しかし、GMS・スーパーやコンビニの売場対応はどうでしょうか。

買い物カゴの軽量化、通路幅の拡大、値札に大きな文字の活用、少量パックの拡充など、ハード面の対応は進んでいるようです。しかし、多くの店が商品は多少変化させているものの、平日の午前中行っても、夜8時ごろ行っても、週末に行っても同じような売場展開で客層の変化に合わせた“売場の演出(ソフト面の対応)”が不足しているのが現状です。

今後は、シニア層にとって買い物は日常の楽しみのひとつであることを十分理解し、「買い物の楽しさ」や売場からの「新たな発見」を演出する仕掛け・仕組み作りがますます重要になってくるのではないかと思います。

2009-11-15

「カロリーオフ商品:氾濫時代」の売り方

今日、近所のサンクスに昼食を買いに行ったところ、『肉まんライト』なるものが発売されており、思わず買ってしまいました。いまや、ビール類からカップラーメン・お菓子まであらゆる食品でカロリーを抑えた商品が販売されていますが、中華まんで発売されたのは初めてではないでしょうか。

この『肉まんライト』は1個:128Kcalと、通常の肉まん(208Kcal)よりも80Kcalもカロリーが低減されているそうです。どのようにしてカロリーをダウンさせたのかというと、まず生地の主原料である小麦粉の一部を食物繊維に置き換え、上白糖を減少させました。また、具材では油脂や調味料を調整するほか、一部にタケノコを使用し、食感をアップさせました(サークルKサンクス:HPより)。小麦粉の代わりに食物繊維を使用した点はカップヌードル・ライトと同じ手法ですね。

Photo_3 食べた時にどのような違いがあるのかを確認したく、通常の肉まんも一緒に買ってみました。写真の左側が通常の肉まん、右側が『肉まんライト』です。大きさは、わずかですが『肉まんライト』の方が小さく感じます。また、食べた時の生地の感じは通常の肉まんが「ふわふわ」なのに対して、『肉まんライト』は「もっちり」とした感じです。また、具材は、通常の肉まんは肉が多いため「しっとりした重さ」を感じますが、『肉まんライト』は「シャキシャキ」「あっさり」とした感じです。これは肉の量を減らし、カロリーの少ないタケノコを使用しているためでしょう。
この生地の「もちもち感」と具材の「シャキシャキ感」はとても新鮮な組み合わせで、カロリーオフという商品特徴を抜きにして私は気に入りました。

Photo_2 最近では、クリスマスケーキにまでカロリーオフ商品が登場し、売場は「カロリーオフ」商品で溢れています。このような状態になってくると、「カロリーオフ」という商品特性だけでは目新しさに欠け、消費者の購買意欲を喚起することは難しくなるでしょう。

今後は、私が「新鮮な組み合わせ」と感じたような商品特性をカロリーオフと同時に消費者にアピールしていくことが、新たな需要開拓には必要だと思います。

2009-11-08

百貨店化する? ヤマダ電機「LABI1日本総本店池袋」

Photo 先日、10月30日(金)に開業したヤマダ電機「LABI1日本総本店池袋」(東京・豊島区)に行ってきました。
三越池袋店・撤退跡への出店、売場面積が2万3000平方㍍とヤマダ電機約600店の中で最大、ビックカメラ池袋本店との正面対決など話題性が高かったためか、1週間経っているにも関わらず業界関係者と思われるスーツ姿の男性や学校帰りの生徒、さらには中高年の買い物客で大変賑わっていました。

私が一番見たかったのは、地下の食品と書籍の売場です。何故なら、10月28日(金):日経MJに下記のような記事が掲載されていたからです。

Photo_2 平均的なヤマダ店舗の6倍にあたる広さを生かし、取り扱い商品は豊富だ。家電はもちろん、メガネやブランド雑貨、化粧品、おもちゃ、食品に加え、調剤薬局も入る。書籍は10万冊と周辺の中規模書店並みに用意し、全部合計すると、これまで最多だったLABI1なんば(大阪市)の倍近い150万点に達する。レストランもあれば子供向けの遊戯スペースもあり、まるでファッション衣料だけがない「ヤマダ百貨店」の様相だ。
ヤマダが家電以外の取り扱い商品を増やす目的は、ポイントの使い道を広げることにある。家電店の中心顧客である成人男性だけでなく、女性や家族でポイントを使ってもらう作戦だ。

しかし、実際見てみると、地下の食品売り場と書籍売場は思ったより品揃え点数が少なく、魅力ある売場作りという点で疑問を持ちました。
書籍売場の面積は確かに中規模の地方書店という感じですが、品揃えの3分の2は雑誌とコミックで占められており、実用書などはほんのわずかしかありません。「女性・家族の利用」を想定してのことでしょうが、私のような中高年男性にとっては利用価値が低く、不満が出そうです。
また、食品売り場の面積(ドリンク・酒は除く)は少し大きめのコンビニエンスストア程度で、菓子ゴンドラが3尺約30本、加工食品が3尺ゴンドラ約8本でした。ドリンクコーナーは500mlのペットボトルを中心に6尺オープンケースが約8本。酒コーナーはビックカメラ池袋本店の4分の1程度の品揃えではないかと感じました。

あくまでも、販売が目的ではなく「ポイント利用の促進が目的」ということですが、売場の商品構成や扱っている商品自体が魅力不足であると、ポイント利用であっても買い物をしようとする気持ちにはなれません。
私が見た限り、書籍・食品売り場は「とりあえず売場を作った」という印象です。おそらく今後、利用状況を見ながら売場レイアウト変更や商品の入れ替えをしていく予定だと思いますので、どのように変化するのか、定点観測をしてみたいと思います。

2009-11-01

コンビニ、スーパーの「食」と「TFT活動」のコラボを進めよう!

Photo 先日、久しぶりにファミレスに行きました。
子供が小さい頃は週末にドライブや買い物に出かけ、「食事をファミレスで」という機会も多かったのですが、最近では子供が大きくなり車も手放してしまったためなかなか行く機会がありませんでした。そんな私が行こうと思った目的は、セブン&アイ・フードシステムのファミリーレストラン「デニーズ」のTFT専用メニュー(写真)を食べるためです。
(注)デニーズのTFT賛同キャンペーンは10月28日で終了しました。

「TFT(テーブルフォーツー)」活動の趣旨は、摂取量過多な先進国のカロリーを通常よりも抑え、その分をアフリカなどの開発途上国に回すというものです。
具体的には、活動に参加した企業・団体の定食メニューを購入すると、一食につき20円の寄付金がT FTを通じて開発途上国の子どもの学校給食になります。20円というのは、 開発途上国の給食1食分の金額だそうで、先進国で1食販売されるごとに開発途上国に1食が贈られるという仕組みなのです。
世界の人口約67億人の内、開発途上国を中心に約10億人が飢えに苦しんでいると言われています。その一方で、飽食の時代と言われている日本をはじめ先進国では肥満など食生活問題から生活習慣病に苦しんでいる人が約10億人いるとも言われています。

【TFTの詳細は下記HPアドレスからご参照ください】
http://www.tablefor2.org/jp/index_jp.html

確かに、今の日本をみると、テレビでは一日中食べ物の話題を提供する番組が放送され、書店やコンビニに並ぶ雑誌も話題の飲食店を紹介する特集のオンパレードです。その傍らで、メタボリック対策やダイエット番組・雑誌も溢れています。また、コンビニエンス・ストアやスーパーなどからは毎日大量の弁当や惣菜などの食品が廃棄され、大きな社会的問題にもなっています。

最近ではTFT活動の認知度も徐々に高まり、デニーズのような飲食店や社員食堂、さらには一部のコンビニでも商品を限定して参加する企業が増えていました。しかし、まだまだ参加企業は少ないのが現状です。

食品スーパーやコンビニは、毎日の「食」に関わることを生業(なりわい)としているのですから、より一層TFT活動に参加してもらいたいと思います。
参加する店(企業)が増えれば、「ボランティア活動や募金はちょっと・・・」というお客様も抵抗なく社会貢献に参加する機会が得やすくなります。また同時に、肥満・メタボリック対策にもなるのですから、スーパーやコンビニにとっては新しいニーズを喚起するチャンスにもなるのではないでしょうか。

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