消費者が百貨店の食品売り場に求める「価値」とは?
ここ最近、毎週火曜日にテレビ東京で放映されている「ガイヤの夜明け」では、スーパーやディスカウントストアの低価格競争ぶりを取り上げ続けていました。しかし、今週はそんなデフレ傾向が続く中でも安売りに走らず、着実に売上を伸ばしているスーパーなどの特集でした。
そのスーパーは本社を兵庫県尼崎市に置き、近畿・関東の百貨店や駅ナカを中心に店舗を展開する『北野エース』です。番組内では、この年末商戦に100種類近くのかまぼこを取り揃え売り切った店舗の様子や、180種類ものレトルトカレーが書店のようにブック陳列されている売場が紹介されていました。
確かに、豊富な品揃えの売場作りは『北野エース』の特徴です。しかし、私がそれ以上に興味を持ったのは、“店の鮮度”を保つため常に新商品の発掘を続けているバイヤーの姿と、発掘した商品を店長向けに行う商談会(月1回)の様子です。
北野エースでは、バイヤーが仕入れた商品がそのまま店頭に並ぶわけではありません。その商品のうちどれを自分の店舗に置くかは、店長に任されています。そのため、バイヤー達は自分が見つけてきた商品の価値を伝えることに必死です。また、店長もどの商品だったら自店の客層に受け入れられるのか、仕入れる商品と数量を真剣に検討しています。
おそらく、この主体的な仕入体制が、より積極的は店頭販売に結びついているのでしょう。 そんな『北野エース』の売場を見てみたいと、早速、東武百貨店:池袋店(東京・豊島区)に出かけてきました。売場は本館食品売り場ではなくプラザ館の中、エスカレーターから東武百貨店の“強み”である鮮魚売場に向かうメイン通路の両側に面していました。この売場配置から東武百貨店の『北野エース』に対する評価と期待がうかがわれます。
扱っていたグロッサリーと日配食品はこだわりの商品ばかりでした。また、商品特徴もPOPでしっかりとアピールされているので、見ているだけでも楽しい売場です。つい、今夜の酒のつまみになりそうなものを探してしまいました。
また、店員が小まめに売場を回り、商品の残数をチェックしたり、フェィスアップしたり、お客様に声をかけたりと、商品・お客様と積極的にコミュニケーションを取っている様子が印象的でした。このような点も百貨店の売場としてお客様から支持されている要因なのだと思います。
その後、同じ池袋にある西武百貨店の食品売場に行ったのですが、東武百貨店との経営戦略の大きな違いに疑問を感じました。
というのも、西武百貨店にも北野エースのようなこだわりの食品売場はあるのですが、地下食品売場の一番奥に追いやられ、品数も少なく陳列も乱れており、とても見ていて楽しい売場ではありませんでした。しかし、そんな売場とは対照的に、地下食品売り場の中央には『セブンプレミアム』の商品をフルライン扱った売場が大々的に展開されています。
消費者が「百貨店」という業態に求める価値を考えた時、どちらの経営戦略が消費者の支持を得ることができるのでしょうか。すぐに答えを出すことは難しいと思うので、今後も定期的に両店の売場を観察し、自分なりの答えを出したいと思います。