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2010-01-31

消費者が百貨店の食品売り場に求める「価値」とは?

ここ最近、毎週火曜日にテレビ東京で放映されている「ガイヤの夜明け」では、スーパーやディスカウントストアの低価格競争ぶりを取り上げ続けていました。しかし、今週はそんなデフレ傾向が続く中でも安売りに走らず、着実に売上を伸ばしているスーパーなどの特集でした。

そのスーパーは本社を兵庫県尼崎市に置き、近畿・関東の百貨店や駅ナカを中心に店舗を展開する『北野エース』です。番組内では、この年末商戦に100種類近くのかまぼこを取り揃え売り切った店舗の様子や、180種類ものレトルトカレーが書店のようにブック陳列されている売場が紹介されていました。

確かに、豊富な品揃えの売場作りは『北野エース』の特徴です。しかし、私がそれ以上に興味を持ったのは、“店の鮮度”を保つため常に新商品の発掘を続けているバイヤーの姿と、発掘した商品を店長向けに行う商談会(月1回)の様子です。

北野エースでは、バイヤーが仕入れた商品がそのまま店頭に並ぶわけではありません。その商品のうちどれを自分の店舗に置くかは、店長に任されています。そのため、バイヤー達は自分が見つけてきた商品の価値を伝えることに必死です。また、店長もどの商品だったら自店の客層に受け入れられるのか、仕入れる商品と数量を真剣に検討しています。
おそらく、この主体的な仕入体制が、より積極的は店頭販売に結びついているのでしょう。

Photo_2 そんな『北野エース』の売場を見てみたいと、早速、東武百貨店:池袋店(東京・豊島区)に出かけてきました。売場は本館食品売り場ではなくプラザ館の中、エスカレーターから東武百貨店の“強み”である鮮魚売場に向かうメイン通路の両側に面していました。この売場配置から東武百貨店の『北野エース』に対する評価と期待がうかがわれます。

扱っていたグロッサリーと日配食品はこだわりの商品ばかりでした。また、商品特徴もPOPでしっかりとアピールされているので、見ているだけでも楽しい売場です。つい、今夜の酒のつまみになりそうなものを探してしまいました。
また、店員が小まめに売場を回り、商品の残数をチェックしたり、フェィスアップしたり、お客様に声をかけたりと、商品・お客様と積極的にコミュニケーションを取っている様子が印象的でした。このような点も百貨店の売場としてお客様から支持されている要因なのだと思います。

その後、同じ池袋にある西武百貨店の食品売場に行ったのですが、東武百貨店との経営戦略の大きな違いに疑問を感じました。

というのも、西武百貨店にも北野エースのようなこだわりの食品売場はあるのですが、地下食品売場の一番奥に追いやられ、品数も少なく陳列も乱れており、とても見ていて楽しい売場ではありませんでした。しかし、そんな売場とは対照的に、地下食品売り場の中央には『セブンプレミアム』の商品をフルライン扱った売場が大々的に展開されています。

消費者が「百貨店」という業態に求める価値を考えた時、どちらの経営戦略が消費者の支持を得ることができるのでしょうか。すぐに答えを出すことは難しいと思うので、今後も定期的に両店の売場を観察し、自分なりの答えを出したいと思います。

2010-01-24

「鶏のから揚げ」で競合店との差別化を図ろう!

Photo 我が家の息子は近所にある肉屋さんのから揚げが大のお気に入りです。なぜなら、その肉屋さんは息子の好みを昔から知っていて、揚げる時に衣をたくさん付けてくれるからです(写真)。

そのように子供に喜ばれるおかずの代表である「鶏のから揚げ」ですが、最近は販売する店が増え価格競争も激化しているようです。

その中でも特に最近「鶏のから揚げ」の販売に力を入れているのは、コンビニとスーパーではないでしょうか。

ファミリーマートでは昔から店内調理商品のひとつとして扱っており、その販売量もケンタッキーフライドチキンに次いで国内2位と圧倒的な強さを誇っています。
しかし、最近ではローソンやセブンイレブンでも店内調理を始めたため、ファミリーマートでは骨なしチキン「ファミチキ」を発売したり、タイムセールを取り入れるなどして売上の確保に努めています。また、ローソンではボリューム感とお得感のある「Lチキ」やLチキを挟んで食べるバンズを発売したり、セブンイレブンではから揚げを1個36円で販売したりと、新規ニーズの開拓競争はますます激しさを増しています。

また、スーパーでも惣菜売場の「鶏のから揚げ」は人気商品のひとつとなっています。
以前は、スーパーで買ってきたから揚げをオーブンで温め直すと、肉が硬くパサパサになることが多く主婦に敬遠されがちでした。しかし、最近では業務用厨房機器の技術革新が進み、調味料に鶏肉を漬け込む際に真空状態に保ったり、揚げる前に蒸気オーブンで加熱したりすることで時間が経過しても肉が柔らかくジューシーな状態を保つことができるようになりました。
そのため、「以前よりもおいしくなった」「手間がかからなくて助かる」と主婦からの評判もよく、着実に売上を伸ばしているようです。

Photo_2 安くてボリューム感のある「鶏のから揚げ」は、生活防衛意識の高まりや内食機会の増加を背景に今後ますます販売量を増やしていくでしょう。調査機関の富士経済(東京・中央区)では、2009年の業務用冷凍鶏から揚げ・フライドチキンの売上見込みは923億円、5年前の2割弱増になると見込んでいます(日本経済新聞:2009年10月4日より)。
ただ、それと同時に、新しい販売先の業態(写真)が増え価格競争もより厳しくなりそうです。

しかし、「鶏のから揚げ」のような定番商品こそ味や品質を徹底的に追求し続ける必要があります。そして、「○○○スーパーのから揚げはおいしい」「あのから揚げがあるから○○○スーパーに行ってしまう」というレベルにまで商品を育てることができれば、価格競争に巻き込まれる心配もなくなります。

2010-01-17

東京高裁判決に見る:「SV教育の必要性」

つい先日行った居酒屋で驚くべき光景を目にしました。
それは、店に入ってすぐの大型水槽内で死んでいる「カワハギ」の姿です。

横幅:約150cm、高さ:約70cmの水槽にはたくさんのアジやタイが泳いでいたのですが、底の部分に5匹のカワハギが腹を上にして沈んでおり、手前ガラスに一番近いカワハギの目は真っ白にふやけ、一部分は溶け出していました。
近所の魚屋のご主人に確認したところ、「カワハギの目がそのようになるのは、死んでから相当経っているね。半日や1日じゃそこまでならないよ」と言われました。

このような店が「海鮮居酒屋」としての看板を出し、全国にフランチャイズチェーン展開されているのですから驚きです。また、この店は売上が厳しいらしく、夕方になると女性スタッフが店の外でメニューを持ち、呼び込みをしています。しかし、経営者は自店の売上低迷要因が分かっていないのではないかと思います。

さらに思ったことは、この店がフランチャイズ・チェーンの加盟店だとした場合、「本部の経営指導とチェック体制はどのようになっているのだろう」ということです。上記のような水槽の状態を見た客は、この店の「海鮮居酒屋○○○」という看板にどのようなイメージを持つでしょうか。それは、この店の問題だけではなく、「ブランドイメージを傷つける」という点で他の加盟店にも大きなマイナスイメージとなります。

そのため、フランチャイズビジネスを展開する本部にはスーパーバイザー(SV)による訪店チェックと適切な経営指導が欠かせないのですが、その体制が整っていない本部も多く存在します。しかし、そのような本部もSVの指導体制を見直すことが必要となりそうな東京高裁の判決が昨年末に出ました。

大衆食堂「ごはん家まいどおおきに食堂」の元フランチャイズチェーン(FC)店3社が、「不十分な経営指導で損失が拡大した」などとして、FC展開する「フジオフードシステム」などに計約7,200万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(南敏文裁判長)は25日、請求を退けた一審判決を変更し、約4,700万円の支払いを命じた。
南裁判長は判決理由で「FC契約によれば、専門性を持つ社員が店の経営指導を負っていたのに、形式的なチェックしかできないような経験と能力に乏しい若手社員を充てた」と指摘。「経営指導義務を履行しなかったことで、損害が発生したのは明らか」として賠償責任を認めた。
【日本経済新聞:2009年12月26日付より】

私の知り合いのFCビジネスに詳しい弁護士は、「判決文中で東京高裁が『わが国においてSVによる臨店、経営指導はFC契約の不可欠の要素であり・・・これらの指導がなければ、フランチャイズにかかる料金を支払う意味は皆無である』と断言したことは無視できない」と話していました。
私も同感です。

このような判決が出たことにより、売上不振の加盟店からSVの来店頻度や滞店時間、能力、経営指導内容に対するクレームが増えることも想定されます。
今後、FCビジネスを展開する本部には、SVによる継続的指導とSVの能力向上のための教育がより一層求められることになりそうです。

2010-01-10

セブンイレブンの直営店に見た「売上低迷要因」

先日、初詣に行った帰り道、途中にあったセブンイレブンに入りました。
そのセブンイレブンは大規模な娯楽施設の中にあり、人気アイドルのコンサートや野球の試合などが開催される時は最寄駅と会場を行き交う人で大変賑わうそうです。そのため、年末年始などは1日数百万円の売上があると聞いていたので、一度は入ってみたいと思っていた店でした。

しかし、入って驚きました!
というより、あきれた!?

何故なら、店に入るとカウンター内にスタッフが2人、そしてカウンター越しのメイン通路に社員と思われる若い男性が2人いたのですが、4人とも話に夢中で店に入ってきた私達(妻も一緒)に誰も気がつかず、「いらっしゃいませ」を言いません。

私達は男性社員2人の後ろを通り抜け、店の奥に向かいました。
店の奥にはゴンドラ清掃をしている女性スタッフがおり、先ほどカウンターにいた社員が来て話しかけ始めました。しかし、その脇を通る私達には全く無関心で、もちろん「いらっしゃいませ」の声はありません。

あまりに腹が立ったため何も買わずに出ましたが、結局、店に入ってから出るまで、5人いた従業員の視線は一度も私達に向くことはありませんでした。

これがセブンイレブンの本部社員が運営する『直営店』だというのですから驚きです。

しかし、このような現象は私が入った直営店やセブンイレブンだけのものではありません。最近ではどのチェーンの直営店でも同様の体験をすることが増えてきました。特に多いのは、「いらっしゃいませ、こんにちは」「ありがとうございます、またお越しくださいませ」という接客用語は言っているのですが、全く感情の入っていない機械的な対応の直営店です。

私が入った直営店の品揃えやPOP等の販促対応、売場のフェイスアップ状態、クリンリネスは「さすが直営店!」というレベルでした。しかし、「何のためにゴンドラ清掃をしているのか?」、ということは分かっていないようです。

まさに、「仏作って、魂入れず」の状態です。

このような直営店で店勤務時代を過ごした社員が、スーパーバイザー(経営相談員)として加盟店の経営アドバイスや指導をしているのであるとすれば、本当の意味での『顧客満足』を得ることはできず売上が低迷する店が増えるのも当然です。

いま、コンビニ業界の売上が低迷している主な要因は、コンビニ間・業態間競合の激化とコンビニエンス・ストアという「ビジネスモデル」が時代のニーズに対応できていない点にあると思いますが、上記のような直営店が増えていることもひとつの要因ではないかと思いました。

2010-01-03

2010年への想いと「初詣」

新年、明けましておめでとうございます。
旧年中は『石川和夫の流通業界ウォッチング』をご愛読いただき、誠にありがとうございました。今年も小売業・サービス業・飲食業界等の動きを、私なりの視点でウォッチングしていきたいと思います。

Photo さて、昨年よりも一層厳しい経済環境になると予測されている今年ですが、せめて気持ちだけは前向きに新年を迎えたいと思い、元旦の初詣は神田明神(東京・千代田区)に出かけてきました。

神田明神は正式名称を“神田神社”といい、東京の中心である神田、日本橋、秋葉原、大手丸の内、旧神田市場、築地魚市場など、108町会の総氏神様です(神田明神HPより)。また、御祭神として二之宮に商売繁昌の神様:「えびす様」を祭っているということもあり、毎年、仕事始めの日には企業の経営陣や多くの社員が参拝に訪れています。

そんな「明神さま」のご利益に私もあやかりたいと、自分自身と顧問先や研修先企業の“商売繁昌”をしっかりと祈念してきました。

今年は、価格による差別化ではなく「『顧客満足』と『従業員満足』による差別化をいかに目指していくか」、これをメインテーマにコラムを書いてゆきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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