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2010-09-26

『成城石井』に学ぶ、高価格帯:PBの売り方

私が週2回ほど通っているスポーツクラブの敷地内に、スーパーの『成城石井』があります。
3~4年前までは店内に活気がなく、商品も魅力的に感じられない店でしたが、ここ1~2年大きく変わってきました。

何が一番変わったかというと、従業員の表情と声出しです。以前は品出し作業をしていても、通路ですれ違っても「いらっしゃいませ」の声がありませんでした。しかし、最近では従業員から明るい表情で積極的に声をかけてきます。

Photo 次に変わったことは、価値訴求型PBである「成城石井オリジナル商品」(一例として写真:うなぎ蒲焼 1790円)を中心に重点商品を決め、お客様に推奨販売する経営スタイルになったことです。そのため、それらの商品をお薦めしようという従業員の思いが陳列やPOP、試食販売、さらには声がけ(商品説明やお薦め販売)から感じ取ることができる店になってきました。

その結果、売上高に占める重点商品の構成比は6.5%(2006年頃)から現在では約25%まで高まったといわれています。価格が高くて利幅の大きい商品の比率が上昇すれば、おのずと利益もついてきます。

一方、多くのスーパーでは価格訴求型のPB商品が中心で、長引くデフレによりメーカー品との価格競争も激化、さらに客単価の低下を招き業績が悪化するという負のスパイラルに陥っています。しかし、そのようなスーパーでも成城石井の取り組みを見て、方向転換する動きも出てきました。

大手小売業が品質や機能にこだわった高価格帯のプライベートブランド(PB=自主企画)商品を強化する。セブン&アイ・ホールディングスは既存PBの2~4倍の価格のPB食品を発売して参入。
セブン&アイは28日、PB「セブンプレミアムゴールド」シリーズを発売する。「ビーフカレー(348円)」、「ハンバーグステーキ(258円)」などレトルト食品4品目を全国のコンビニエンスストア「セブンイレブン」で販売する。既存PB「セブンプレミアム」のビールカレー(88円)、ハンバーグステーキ(118円)」に比べると高いが、具材の量やスパイスなどを充実させて製法にもこだわり「人気の飲食店と同等以上の品質を実現した」という。年間売上高見込みは60億円。販売動向をみて品ぞろえの拡大やグループのスーパーなどでの取り扱いを検討する。[2010.9.23:日本経済新聞]


しかし、価値訴求型PBを開発すれば良いというものではありません。それが、売れて、なおかつお客様から支持を得るためには従業員教育が不可欠です。

なぜなら、販売する従業員がその商品に対する知識をしっかり持ち、価値を理解し(納得し)、お客様に伝える手法を知らなければ、『価値訴求型PB』はお客様に買っていただけないからです。

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女性パート・従業員の潜在能力を活用するコミュニケーション力アップセミナー
【詳細については下記アドレスで確認することができます】http://www.shogyokai.co.jp/seminar/index.html#comme

2010-09-19

「女性パート・従業員の“潜在能力”を活用する」セミナーを開催します

いまから10年ほど前、「話を聞かない男、地図が読めない女」というタイトルの本が一大ブームを起したことをご存知の方も多いと思います。

この本は、男女の物事の捉え方や行動傾向の違いを社会化する過程やしつけの違いだけではなく、男女の脳の構造や働きに要因を求めたもので、日本で200万部、全世界で600万部以上の販売実績があったと言われています。これだけ売れたということは、それだけ多くの人が「男女の違い」について悩み、苦しんでいると同時に、うまくやっていくための解決策を求めていたということだと思います。

現在、チェーン化されたスーパーやコンビニ、または飲食店などのサービス業に目を向けると、現場で働いている人の大部分は女性ですが、売場主任や店長などの管理職者は男性という企業がほとんどです。しかし、その管理職者が「男女のコミュニケーションの違い」を十分理解していないため、女性パート・従業員のモチベーションが上がるような職場環境を作ったり、潜在能力を活かしたりすることができていないのが現状です。

また、消費の主役であり、地域に生活する消費者としての視点を持っている女性は、「もっとこうすれば売上が伸びるのに・・・」 「お客様が喜ぶのに・・・」というアイデアをたくさん持っています。 しかし、そのアイデアは『潜在意識』の中に眠ったままで活用されていない職場がほとんどです。

Photo_2 そこで、現場で働く女性の潜在能力をより活用し、この不況を乗り切ることを目的に、新たなテーマでオープンセミナーを開催することになりました。

その名も、
「女性パート・従業員の“潜在能力”を活用するコミュニケーション力アップセミナー」です。
【詳細については下記アドレスで確認することができます】
http://www.shogyokai.co.jp/seminar/index.html#comme

当セミナーでは女性パート・従業員との効果的なコミュニケーションの取り方、「アイデア」や「能力」の活用法をロールプレイも体験しながら学びます。

“石川和夫の流通業界ウォッチング”読者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2010-09-12

「最低賃金:改定」がコンビニの加盟店利益を圧迫する

先日、1年ぶりに妻の実家がある仙台に行ってきました。
東京は立っているだけで汗ばむ暑さでしたが、仙台駅を降りると空気が涼しく感じられ、実家の目の前にある定禅寺通りも気持ちよく歩くことができました。

歩きながら思ったのは、「いつの間にかセブンイレブンが増えたな」ということです。もともと、定禅寺通り沿いにはセブンイレブンが1店あったのですが、定禅寺通りと交差した道沿いに2店も増えていました。「同じ商圏内の出店で、もとからあった店は相当打撃を受けているだろうな・・・」と、先週の週間ダイヤモンドの記事『フランチャイズの悲鳴』が頭に浮かびました。

また、仙台滞在中に気になったのが、コンビニの店頭にある求人ポスターの金額です。 なぜか、『662円』という金額が目につくのです。東京では10円単位の表示がほとんどで、1円単位は見た記憶がありません。

その意味が分かったのは、東京に帰ってきて9月11日(土)の日本経済新聞に掲載されていた『最低賃金、平均17円上げ』の記事を読んだ時です。

厚生労働省は10日、2010年度の最低賃金の改定状況を発表した。都道府県ごとに決める最低賃金の全国平均は時給730円で、前年度に比べ17円上がった。最低賃金を時給で表すようになった02年度以降では最大の上げ幅を記録した。政府の方針に沿って低所得者への配慮を示した結果だが、中小零細企業の経営を圧迫する恐れもある。(中略)最低賃金が生活保護の支給額を下回るのは、現時点で12都道府県。今回の改定で北海道、宮城県、東京都、神奈川県、広島県を除く7府県で差額が解消される予定だ。

2010 図表は、「2010年度の最低賃金」の全国版から生活保護を下回る都道府県だけを抜粋したものです。これを見ると宮城県の改正前(現在)の最低賃金は『662円』であることがわかります。
では、どのくらいの店が最低賃金で求人募集を出しているのか、また今回の改定金額を下回っている店がどのくらいあるのか、セブン-イレブン・ジャパンのホームページにある「アルバイト情報」コーナーの宮城県版で調べてみました。

すると、宮城県全体では求人を出している店が45店舗あり、その内最低時給:662円が9店舗、665円が8店舗、670円が8店舗という状況でした。つまり、求人を出している宮城県内のセブンイレブンの約55%が今回の改正で時給を上げる必要があるということです。

現在、時給を662円に設定してる店が改定どおり12円上げた場合、どのくらいの負担増になるのでしょうか。仮に、24時間2人体制でアルバイトを配置している店が、全ての時間帯で時給を12円上げた場合、48人時×12円×365日=210,240円。さらに、深夜の時給割増や雇用保険・労災保険等なども考慮すると、25万円近くの負担増になる計算です。

猛暑効果、たばこの値上げ効果もなくなる10月以降、人件費の負担増も加わり、利益確保に苦戦する加盟店がますます増えそうです。

2010-09-05

セルフレジはどこまで普及するのか?

Photo_3 最近、仕事先でセルフレジに出会う機会が増えました。

まず最初は、食品スーパーのセルフレジです。
写真は群馬県を中心に食品スーパーなど約50店舗を展開する「フレッセイ」のセルフレジです。このスーパーは北関東では戦後初めての食品スーパーで、地元に密着した商売を長年続けており、競合環境が厳しい中でも地域のお客様から高い支持を得ています。

Photo_4 私が訪問したのは午後1時ぐらいでしたが、セルフレジコーナーでは親子連れの買い物客が多く、4台あるレジは常に使用されている状態でした。特に目立ったのはお子さんの利用です。自分で会計できることがよほど嬉しいらしく、皆さん笑顔で大変楽しそうに利用していました。

4台のレジの中央にはパソコンが置かれたカウンターがあり、担当者が会計でトラブルが起きた時やお客様からの問い合わせに対してきめ細かく対応していました。また、担当者の手元のパソコンには4台のセルフレジの利用状況が映し出されているので、これならば会計上の心配などもなさそうです。
《写真撮影はフレッセイ本部の許可をいただいています》

Jr 2番目はJR東京駅ホームのセルフレジです(写真)。
駅のコンビニにあるセルフレジは見たことがありますが、ホームのキオスクで見たのは初めてです。それも、Suicaを利用するとポイントが10倍! セルフレジ利用を促進させようとする意気込みを感じます。ただ、酒とタバコが買えない点に不便さを感じる人も多いことでしょう。

3番目は名古屋の地下鉄改札入り口にあったローソンです。
小さなローソンなのですが、レジが4台もあり、その内の1台がセルフレジでした(写真)。ただ、私が使用したレジ側には従業員がいなく、従業員がいるレジからも死角になって見えない状態です。「これじゃ、ガムやキャンディーなど小さなものであればスキャンする数をごまかしても分からないのでは?」と思わず考えながら会計をしてしまいました。

Photo_5 コンビニでセルフレジ導入を考える時、一番の心配事は入力の不正だと思います。
一般的にコンビニの棚卸減耗(仕入れミス、会計ミス、万引きなどで発生するロス)は売上対比で0.5%ぐらい、つまり1日の売上が50万円で、2,500円(売価)程度の金額です。ただ、管理が優秀な店であれば0.25%(1,250円)以下にもなります。

この数字がセルフレジを導入することで、どこまで増えるのかが心配です。しかし、朝や昼のピーク時に従業員を増やし、その時給が発生することを考えると、2~3千円棚卸減耗が増えたとしてもコスト的には一緒なのかもしれません。

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