« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010-11-28

「女性ファッション誌」に食われた?バッグ業界

昨日、近所の書店に入ってみると平台に女性ファッション雑誌が1メートルぐらいの高さで積まれており、そのボリューム感に圧倒されました。「なんで、ここまで積むの?」と思いましたが、よく見ると積まれている冊数はさほどでもなく、高さの原因は雑誌の間に入っている付録でした。

Photo いま、手提げ袋やポーチなどを付録にする女性ファッション誌が急増中で、「CanCam」「JJ」「ViVi」など、その多くが毎月23日発売のため、私が見たような売場になっていたのです。そういえば、つい先日の日経新聞にも「雑誌が売れてかばん不振」という見出しで、バッグの小売市場が縮小しているという記事が掲載されていました。

矢野経済研究所によると、09年のかばん類の小売市場規模は08年比9.2%減の9352億円。減少は8年連続だが、09年はマイナス幅が突出して大きい。経済産業省の工業統計で見ると、ハンドバッグ類(なめし革製とプラスチック製の合算)の出荷も08年に数量で07年比2.6%、金額で4.7%減った。
同研究所の担当者は「リーマン・ショック後にブランド品が落ち込んだほか、旅行需要の減少と付録雑誌の好調が影響した」とし、「付録とはいえ人気ブランドのものも多くメーンに使う人も少なくない。それが(かばん自体の)買い控えにつながった」とみる。[日本経済新聞、2010年11月10日]

それにしても、まったく異なる業種の「女性ファッション雑誌」が競合になるとは、バッグ業界の人は想定しなかったのではないでしょうか。

景品表示法の「懸賞による景品類を提供する場合の制限」のうち、『懸賞によらないで景品類を提供する場合の制限』では、取引価格が1000円未満の場合、景品類の最高額は200円とされています。ということは、女性ファッション雑誌の多くが600円台なので、景品も200円以下ということになります。

付録のバッグを見ると「これが200円以内で作れるの?」と思いますが、最近の100円ショップではとても100円と思えない商品もあるので、発行部数の多い雑誌になれば調達は可能なのでしょう。

それにしても、思わぬところに「競合」がいるものです。

2010-11-21

「わかば」「エコー」は“新ジャンルビール”になれるか?

いま、コンビニのビール売場に行くと、ビールが並んでいる棚は2~3段で、それ以外の棚はキリンの「のどごし生」、サントリーの「金麦」、アサヒの「クリアアサヒ」、サッポロの「麦とホップ」など、新ジャンルのビール(別称:第三のビール)が占めています。一時は売場の多くを占めていたキリン「淡麗」などの発泡酒も、いまではほとんど見かけなくなりました。

「発泡酒」はビールの税率アップとディスカウントストアの価格競争対策として開発された商品です。
当時、酒税法では麦芽の比率が67%(3分の2)以上のものをビール、それ未満は発泡酒とし、ビールと比べると税率が大幅に安く定められていました。そこに目をつけたのがサントリーです。サントリーは平成6年に、麦芽比率を65%におさえた発泡酒「ホップス」を販売して低価格を実現させました。その後はビール各社からさまざまな発泡酒が発売され、多くの消費者がビールから発泡酒へと流れました。

しかし、平成15年の酒税法改正で発泡酒の税率が引き上げられると、ビールメーカー各社はより低税率(低価格)になるよう麦芽以外の原料を使用して作った、もしくはビールや発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜて作った、発泡酒と同じような味わいのアルコール飲料を開発しました。これがいわゆる第三のビールという商品群で、現在各メーカーは「新ジャンルビール」という名称で呼んでいます。

いまでは家計支出防衛対策のひとつとして、この「新ジャンルビール」はすっかりと定着化しています。通常のビール(350ml)が217円なのに対して、新ジャンルは137円と80円も安くなっています。もし、1年間毎日1本飲んだとしたら、29,200円も節約となるのですから、飲むことをやめられない人にとってはありがたい商品です。

いま、これと同じような現象がタバコでも起きています。
それは、「わかば」「エコー」の人気化です。

Photo 「わかば」「エコー」というと、“お年寄りのたばこ”というイメージがありますが、10月1日の値上げ以降、いままで購入していなかった客層の購入が目立ち始めているそうです。あるコンビニでは売上順位がベスト20に入ったという話を聞きました。いままでは常に40位以下だった商品がこれだけ売れているのは驚きです。

マイルドセブンが300円から410円、セブンスターが300円から440円へと値上がりしている中、「わかば」250円、「エコー」240円という価格は、タバコをやめられない人にとっては魅力的なのかも知れません。

2010-11-14

セブンイレブンの「複数店チャージ軽減」と活用法は?

Photo 日経ビジネス:2010年11月15日号の特集は「コンビニ決戦」です。
登場から約40年、常に成長を遂げてきたコンビニ業界ですが、最近では「成長神話」に疑問を投げかける雑誌記事が目立つようになりました。

そのような状況の中、セブン‐イレブン・ジャパンのホームページに驚きのニュースリリースが掲載されました(2010年10月29日)。

それは、新たな加盟店支援制度として「複数店経営奨励制度の内容拡充」を11月から実施するというものです。同社は、2009年7月に『複数店経営奨励制度』を導入しているので、1年2ヶ月での追加支援となります。

2009年7月に導入された制度は、開業後5年経過したオーナーが新たな複数店を開店する場合、その2号店の平均日商が30万円以上であれば1%、粗利益額(年間売上総利益額)が年間5000万円以上であれば+1%、7000万円(同))以上であればさらに+1%を加算し、最大3%までチャージ(ロイヤルティ)を軽減する『インセンティブチャージ制度』の適用でした。

今回はこれとは別に、複数店全店を対象にチャージから売上総利益の3%を減額する制度です。日商60万円、粗利益率30%の2号店とした場合、チャージは合計で5%軽減され、オーナー収入は2009年7月の制度導入前と比較して、年間約328万円増える計算になります。

コンビニ業界最大手のセブンイレブンですが、複数店経営への支援策ということでは遅れを取っていました。そのため、最も複数店経営支援制度が充実しているファミリーマートの複数店割合が全体の約46%(約3,300店)なのに対して、セブンイレブンは約16%(約2,100店)と低い数値となっています(数値出所:日経MJ、2010.9.6)。

コンビニ店舗数は45,000店を超え飽和状態にあると言われていますが、セブンイレブンはまだまだ都市部を中心に出店できる余地があると考えているようです。しかし、出店が可能となる立地は既存店の商圏と重なることが多く、無理に出店すれば既存オーナーの不満を招きトラブルの原因にもなります。

最近では加盟店の近くに物件候補が出た場合、まず既存オーナーに「近隣にコンビニとして可能な物件が出たのですが、2号店をやりませんか?」と声をかけているようです。
しかし、新しい投資に対する資金や人件費等を考えると、2号店を持つことをためらうオーナーも多いのが現状です。そこで、このような問題を解決するために制度の充実を図り、複数店経営を促していくつもりなのでしょう。

今後、ますますコンビニを取り巻く立地環境・競合環境の変化は激しさを増していきます。そのため、単独店経営では将来に対するリスクも大きなものとなるでしょう。そのように考えると、リスクヘッジを目的とした複数店経営は今後のコンビニ経営に必要な選択肢なのかも知れません。

2010-11-07

雇用の「ミスマッチ」原因は親の関わり方にもある?

先日、明治大学が商社、IT関連、製造業、サービス業などの企業約65社の採用担当者を招いて、「学内企業採用選考会・面接会」を駿河台キャンパスで開催したというニュースを聞きました。11月に入ったにも関わらず、昨年にも増して多くの内定未定者がいるための対応だとのことですが、これは昨年も実施されていました。

しかし、このような状況になっているのは、企業業績の悪化による求人数の低下だけが要因ではありません。求職者の希望する企業規模や職種と求人とが合わないことによる「ミスマッチ」が大きな要因となっているようです。

雇用のミスマッチはどの程度あるのか。シティグループ証券の劒崎仁氏の推計では、9月の完全失業率5.0%のうち、ミスマッチ要因による失業率が約3.7%を占め、需要不足要因の約1.3%を大きく上回った。需要不足要因は、リーマンショック後の1.9%から改善してきたが、ミスマッチ要因は3%台半ばから後半で横ばい。求人が回復しても失業率がなかなか下がらない理由はここのある。[日本経済新聞:2010年11月1日]

大手企業へ応募者が集中して、中小企業への応募者はあいかわらず少ないと言われています。また、医療や介護分野では人手が足りない状況が続き、多くの施設で求人募集を出しているにもかかわらず、求職者は増えていません。

Photo_2 政府はこのようなミスマッチ解消が雇用問題解決のカギだと考え、卒業後3年以内の既卒者について、3ヶ月の試用期間は1人あたり月10万円、正社員として登用すれば、さらに50万円を企業に支給する「既卒者トライアル雇用奨励金」など、さまざまな雇用対策を打ち出しているのですが、成果は思うように上がっていないのが現状です。

一方で、ミスマッチの原因が「就職活動をしている学生の親にもある」と報道していた番組がありました。大企業の方が安定しているから中小企業はやめなさいとか、介護関係の仕事はきついから大変だとか、小売業は休みが少ないからと、子供が関心を持っている企業や職種に対してマイナスのことを言って反対する親が増えているそうです。

親の心配も分かりますが、大変だと思っても子供が関心を持っった企業や仕事であれば、そこにチャレンジさせてみることが必要だと思います。なぜなら、自分の「能力」や「適性(強み)」は社会人としての一歩を踏み出し、仕事をしていくプロセスの中でしか知ることができないからです。

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »