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2011-07-31

東北のスーパー、コンビニの売上は絶好調?

Photo 先週の仙台に引き続き今週も盛岡へと出かけ、東北地方の食品スーパー店長や管理職者向けにコーチング研修をしてきました。

1年ぶりに降りた
盛岡駅には五所川原(青森)の「立佞武多」のミニチュア版(と言っても2mぐらいある、実物は約20m)が飾られていて、これから本番を迎える東北の夏祭り開催に復興の力強さを感じました。

今回研修をさせていただいた団体に所属している食品スーパーの出店地域は、宮城県・岩手県・青森県・秋田県など北東北が中心です。そのため被災した店舗が多く、経費の面からも参加者の減少が予想されていました。しかし、当日は例年通り多くの参加者があり研修講師として大変嬉しく感じました。

その要因として東日本大震災後の復興消費を挙げることができます。
7月31日の日本経済新聞には、『復興消費 旺盛 支援者流入、需要押し上げ」という見出しで、次にような記事が掲載されていました。

東北地方で東日本大震災後の復興消費が一段と盛り上がりをみせている。生活関連商品を中心に売れ行きは好調で、東北の小売店販売額は全国的にも高い伸びを示す。生活再建を目指す被災者の需要に加え、復旧・復興に携わる人々の他地域からの流入が全体を押し上げている。(中略)経済産業省によると、東北6県の5月の大型小売店販売額は既存店ベースで前年同月比4.4%増。全国平均が2.5%のマイナスとなる中で好調ぶりが際立つ。

確かに、復旧・復興に携わる人の流入による人口増は、東北の食品スーパーやコンビニエンス・ストアの客数増・売上増に貢献しています。研修の休憩時に話を聞かせていただいた店長さんの多くも前年比で2桁以上の売上増だと言っていました。

私が仕事でお世話になっているスーパーやコンビニ業界の存在価値が高まり、業績が良くなることは喜ばしいことですが、復興需要はいつまでも続くわけではありません。いいところ、2~3年でしょうか。その後は再び人口減と厳しい競合環境にさらされることになります。

今後は復興需要を的確に捉えると同時に、そこから得た利益を人材育成に投入し、将来のより厳しい競合環境に立ち向かえる強い店を作れるかどうかが問われると思います。

2011-07-24

『東北六魂祭』の賑わいと復興の現状

7月16日、17日の2日間、東北6県の代表的な祭りが集結した『東北六魂(ろっこん)祭』が仙台市で開催されました。延べ約36万人が県外から訪れ、東日本大震災からの復興に向けて歩き出した被災地に大きな力を与えたようです。

Photo 私が行った18日も仙台駅は大変多くの乗降客で混雑していました。また、泊まったホテルのロビーには七夕の吹流しが飾られていて、震災前の観光地としての賑やかさを取り戻しているかのように見えました。

しかし、ホテルの部屋で東北放送や宮城テレビなど地元のテレビ番組を見ていると、東京では見る機会が少なくなった被災者に向けた情報番組やAC広告が目につき、復興はまだまだこれからなのだということを改めて感じました。

また、翌日、食品スーパーの研修会場となっている「岩沼市民会館」を訪れたところ、会場の周辺には約300戸の仮設住宅があり、研修の冒頭挨拶で仮設住宅に入居している人たちの生活状況や食品スーパーとしての社会的役割について社長が話された内容を聞き、被災地の現状を再確認しました。

さらに、研修終了後、JR岩沼駅まで送っていただいた店長さんから「自宅が津波で流されコンクリートの土台しか残っていないことを確認したのは震災が起こった4日後だった。ただ、家は無くなったが家族が無事で、こうして仕事がある自分は恵まれていると思っています」という話を聞き、震災直後から陣頭指揮にあたられた店長の姿勢に頭がさがりました。

震災から4ヶ月以上が経ち、被災地以外では震災そのものや復興に伴う情報が少なくなり、人々の関心も薄らいでいます。しかし、忘れずに、それぞれができる範囲で支援を続けることは大切だということを再確認してきました。

今後も東北地方へ行く度に、復興状況について見たこと感じたことをブログに書いていきたいと思います。

2011-07-17

「専門店」の顧客満足度は管理職者教育で決まる?

今週の水曜日(7月13日)の日経MJの特集は『専門店調査(10年度)』でした。
その中の「業種別売上高ランキング」の1位を見ると、
■紳士服=青山商事
■婦人服・子供服=しまむら
■カジュアル衣料=ユニクロ
■呉服=さが美
■ドラッグストア・医療品=マツモトキヨシ
■家電製品=ヤマダ電機
■総合ディスカウントストア=ドン・キホーテ
■HC・カー用品=カインズ
■家具=ニトリ

となっており、「靴」「時計・メガネ」「酒類」を除いて、大部分の業種では前年と1位企業の入れ替わりがありませんでした。専門店は競合となる対象の範囲が狭いため、業種別の勝ち組が明確になっているのかなと思います。

また、同紙の中に『専門店経営の課題解決!』という広告特集があり、「従業員の満足が顧客への価値生む源泉」として、従業員満足を追求することの大切さを『労働経済白書』の調査データをもとに解説していました。

Photo_2 確かに、このグラフを見ると「賃金への不満」は労使双方が認識しているにも関わらず、「能力開発機会の不足」「個性が発揮できない」「雇用の不安定化」「長時間労働」では、労使双方に大きな認識ギャップがあることがわかります。

特に、最近の若者は「自己の成長」や「個性の発揮」に働く上での価値を見出そうとする傾向を強めています。このような若者の価値観の変化を捉え、企業が教育・研修の場を設けたり、仕事を通した成長を上司がフィードバックする機会を作ったりすることは、モチベートされた職場環境を作る上で大変重要なことです。

また、管理職者には従業員1人ひとりから業務上の改善案や問題解決に向けた意見を聞き出し、それらを認めながら活用することのできるコミュニケーション・スキルを身につけさせることも必要です。

しかし、グラフの企業側回答のように前近代的で、働く上での従業員の価値観の変化に気づいていない企業には、そのような取り組みを望んでも無理かもしれませんね。

2011-07-10

今年の新入社員は「定年まで働きたい」が過去最高!

企業の管理職者向けコーチング研修やセミナーの時、冒頭で必ず話すことがあります。それは、部下との間の「コミュニケーション環境を整える」障害要因となっている『世代間のギャップ』を理解してもらうことです。

仕事やお金、人間関係や生活と仕事のバランスなど、働く上での価値観は、学生時代から就職して間もない頃の社会環境に大きな影響を受けます。その社会環境による違いは「団塊世代」「新人類世代」「団塊ジュニア世代」など、15年単位の括りで比較することができますが、より細かく経年変化を観察するには日本生産性本部が毎年行っている「新入社員『働くことの意識』調査」がとても参考になります。

その調査結果に対する分析が日本経済新聞の7月8日(金)版に、
『今年の新入社員 安定志向 顕著に』というタイトルで掲載されていました(グラフは日本生産性本部:調査データより)。

2011_2 自分が入社した企業に定年まで勤めたいと考える新入社員が全体の34%にのぼることが、日本生産性本部の新入社員調査でわかった。前年に比べて9ポイント上昇し、比較可能な1971年以降で最も高くなった。今春卒業の大学生の就職率が最低となるなど、厳しい就職戦線をくぐり抜けた新入社員だけに安定志向が強いようだ。(中略)
仕事と生活でどちらを中心にするかを聞いたところ、「両立」との回答が8割を占めたが、「仕事中心」との回答が10%となり、「生活中心」と答えた人(8%)を2年連続で上回った。

定年まで勤めたいと回答した人が過去最高となったのは、「厳しい就職戦線を乗り越えてようやく入ることができた企業なので・・」という想いの表れなのでしょう。また、この調査が行われたのは東日本大震災直後の3月14日~4月30日なので、震災による企業の倒産や失業などが報道される中、雇用の安定や働く上での安心感に対する関心が高まったことも影響しているのではないでしょうか。

2011じっくりと腰を落ち着けて働きたいと考える若者が増えたことは管理職者(企業側)にとって大変喜ばしいことですが、一人ひとりのモチベーションが高まる職場環境を作り、能力を発揮してもらうには「ワークライフバランス」により注目した関わり方が大切なようです。

2011-07-03

「アイスクリーム」の品揃えで節電需要を取り込もう!

昨夜、隣のコンビニに買い物に行ったところ、アイスケースの前で母親と娘2人が次のような会話をしていました。

Photo 娘A
 「ジャイアントコーン、1個しかないよ」
娘B 「えっ、ショック!」
母親 「在庫があるかも知れないから聞いてみたら」
娘A 「ムダ、出てないんだから無いよ。他へ行こう」

このコンビニはいつ行ってもアイスクリームの品揃えが悪く、あまりにひどい時は顔見知りの発注担当アルバイトにアドバイスをしています。昨夜も母娘が帰ったあと、いまグリコで「AKB48福袋プレゼント」というキャンペーンをやっていて、ジャイアントコーンやアイスの実、パナップなどが対象商品になっているから売れているのだと話すと、「そうですか、知らなかった。じゃ、発注量を増やします」と感謝されてしまいました。

Photo_2 アイスクリーム市場はグラフを見ても分かるように拡大傾向にあります。特に昨年は猛暑の影響で対前年比6%も伸びています。今年は節電対策のためにエアコンの使用を控えている企業・家庭が増えているので、よりアイスクリームの販売額は伸びることが予測されます。しかし、先述のコンビニのように、アイスクリームの売り場作りと販売体制に力を入れていない店が目立ちます。

店全体の販売額に占めるアイスクリームの割合は2~3%程度と低く、また廃棄ロスも出ないため、発注をアルバイト任せにしてはいないでしょうか。また、本部のスーパーバイザーから盛夏対策として「アイテムを売れ筋に絞り込み、欠品させないようにしましょう」と言われ、アイテムを大幅に減らしてはいないでしょうか。

アイスクリームは販売構成比が低いものの、荒利益率は40%~45%と大変高く、夏場にはソフトドリンクと並び「荒利額」を稼ぎ出す重要なカテゴリーです。また、最近では中高年や男性客の購入頻度が高まり、さらにスイーツとしての需要もあるため、客層や時間帯別ニーズに合わせた多様な品揃えが必要となっています。

「アイテムを絞り込む」というのは、アイスクリームに対するニーズが多様化していなかった一昔前の発想です。そのような過去の成功体験に基づいた発想では顧客ニーズの変化に対応することができません。例えば、セブンイレブンであれば、アイスケース内の陳列カゴひとつにつき、最低でも2アイテム(売れ筋上位1~2アイテムを除く)は品揃えすべきです。

しかし、そうすると1アイテムあたりの在庫量が減って欠品しやすくなるというリスクが生じます。この対策としてはバックヤードに在庫保管用の冷凍庫を準備することをお薦めします。なお、本部の設置支援を受けられないケースでは、店独自で冷凍庫を購入して対応している事例もあります。

このようなニーズへの設備投資と小まめな補充品出しができるコンビニだけが、お客さまの多様化したニーズを捉え、この夏の『節電需要』というチャンスを“利益”に変えることができるのだと思います。

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