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2011-09-25

被災地の復興と「食品スーパー」の強さ

Photo 今週、仙台市内から仙台空港へ向かうバスで写真のような光景を見ました。
季節が5月の初め頃であれば「田植えのために水を入れているのだな」と考えるかも知れませんが、季節はすでに初秋なので当然田植えではありません。

仙台は前日の夜から、首都圏⇒北関東⇒東北太平洋側と東日本を縦断した台風15号の影響で激しい暴風雨が続いていました。明け方には台風が通り過ぎて天気は回復しましたが、風雨がもたらした被災地への影響は大きく、東北本線・常磐線・仙石線・仙山線などJR在来線は全て運休していました。

当日、私は仙南地区の食品スーパーで研修があるため前夜から仙台入りしていたのですが、研修会場までの公共交通機関はJR在来線のみであるため、別の移動手段を探す必要に迫られました。しかし、車で行くと約1時間かかるため、タクシーだと相当な料金になりそうです。レンタカーとも考えましたが私と同様に考える人が多いらしく、仙台駅周辺のレンタカー営業所はどこに問い合わせても空車はありません。

そこで考えたのが仙台空港までバスで行くことです。仙台空港は仙台駅と
研修会場とのほぼ中間地点。そこからタクシーを利用すれば料金がかなり安くなると考えての判断でした。

その空港に行く途中、震災で津波の被害を受けた名取川周辺を通った時に撮影したのが冒頭の写真です。本来であればいまの時期、稲刈りを目前にした稲穂が黄金色の絨毯を広げているはずの場所ですが、震災後から作付けできない状態の田んぼは一面雨水に覆われていました。

また、写真には写っていませんが、遠くには津波で打ち上げられた漁船が何隻もありました。震災から半年以上が経ちますが、被災地に行く度に「復興はまだまだ進んでいないのだ」ということを実感します。

今回の研修では台風後の納品対応のため数名の店長・バイヤーが欠席しましたが、参加された方の積極的な受講姿勢から改めて被災地の食品スーパーで働く人たちの“力強さ”を感じ取ることができました。

2011-09-18

笑顔を見せない人は、商人にはなれない!

Photo ある雑誌社から「ビジネス書のベストセラーをマネジメントに活かす」というテーマで執筆依頼をいただき、ひさしぶりに『人を動かす』(デール・カーネギー著・創元社)を読みました。

ビジネスコーチングの中でクライアントに本書をお薦めした時など、部分的に読み返すことはありましたが、最初から最後まで通して読んだのは30年ぶりぐらいでしょうか。

おそらく最初に読んだのは、㈱セブン-イレブン・ジャパンに入社した時か、経営指導員であるオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)になった時ではないかと思うのですが、記憶が定かではありません。

セブンイレブンはフランチャイズ・システムで店舗展開をしているため、OFCは加盟店のオーナーや店長に対して指示・命令することはできません。そのため、本部の立案した企画や新商品の仕入、売り場展開などを行ってもらうためにはオーナーや店長を説得しなければなりません。そこで、『人を動かす』だったのではないかと思います。

その『人を動かす』を改めて読んで、とても印象に残った箇所がありました。
それは、PART2-人に好かれる6原則の2番目【笑顔を忘れない】に書かれていた下記の内容です。

むかしの中国人は賢明だった。処世の道にきわめて長じていた。そのことわざに、こういう味わい深いものがある――
「笑顔を見せない人間は、商人にはなれない」。
笑顔は好意のメッセンジャーだ。受け取る人々の生活を明るくする。しかめっ面、ふくれっ面、それに、わざと顔をそむけるような人々のなかで、あなたの笑顔は雲のあいだからあらわれた太陽のように見えるものだ。とくにそれが、上司や、顧客や、先生、あるいは両親や子供たちからの圧迫感に苦しんでいるような人であれば、「世間にはまだ楽しいことがあるんだな」と希望をよみがえらせる。

確かにそれはあると思います。
仕事で疲れた帰りに立ち寄ったコンビニ、スーパー、ドラッグストア、居酒屋などで、笑顔あふれる温かい接客を受けると、その日の疲れが軽くなることを感じる時があります。すると、また笑顔が見たくてその店を訪れるため、笑顔を見せる従業員が多い店は自然と繁盛することになります。

これは、カーネギーが本書を執筆した時代も、いまも変わらない「商売の本質」だと言えます。お客様が求める商品やサービスをきちんと品揃えすることはもちろん重要ですが、いまのような時代だからこそ『笑顔』がより大きな差別化につながるのではないでしょうか。

【補足】
『人を動かす』は、デール・カーネギーの「How to Win Friends and Influence People(友をつくり人を動かす法)」の翻訳版です。原書は1936年に初版が発行され、1981年の改訂版が出るまでに、世界各国語の訳書を含めると1500万部が売れています。また、1958年に原著初版を日本語に翻訳した本書の旧版も169刷を重ねました。

2011-09-11

進化する「サウンドマーチャンダイジング」の活用

Cd_2 研修プログラムや企画書の作成など集中してデスクワークをしたい時や、移動中の電車内で周りの話し声が気になり読書に集中できない時など、写真のCD『精・神・集・中』を聞いています。このCDを流しながら仕事や読書をしていると集中力が高まり、あっという間に1~2時間経過しているのでとても重宝しています。

このように音楽を単なるBGMとしてではなく、作業効率を上げるためや販促活動に活用している企業が最近では増えています。

食品スーパー「ライフ」の近畿圏店舗では開店前の商品陳列などの作業時に、1分間のリズムが110程度のゆっくりした音楽を流し、それを次第に150程度まで徐々に高め、脳を活性化させると同時に作業効率を高めているそうです。(日経MJ:2011.8.22参照)

また、同じ8月22日の日経MJには、アサヒ飲料が試した音が出るポスターが紹介されていました。

アサヒ飲料は今年2月、都内のJRや地下鉄の駅で音の出るポスター広告「サウンドサイネージ」を試した。普段は忙しく通り過ぎるだけの人たちが驚き、振り向く。存在感を示すという点では上々の効果を上げた。
サウンドサイネージはデジタルサイネージ(電子看板)の一種。広告の世界で、音の威力が見直されている。広告媒体として開発したのはヤマハ。厚さ1.5ミリ㍍の「TLFスピーカー」はほぼ正面方向のみに音を出す。遠近による音量の差があまりないのも特徴で、曲面でも利用できる。

厚さ1.5ミリ㍍のスピーカーというのがすごい!
それに、コスト的にも通常のデジタルサイネージに比べて1桁小さい金額に抑えることができるそうです。

このポスターの制作費がより安くなり、飲食店のポスターからビールを注ぐ音や焼肉の焼ける音が聞こえてきたり、コンビニやスーパーのから揚げのポスターから油で揚げる音などが出てきたりしたら、シズル感がいっぱいで食欲がそそられ、思わず食べに行ったり買ったりしてしまいそうです。

また、記事内では認知心理学に詳しい千葉大学の一川誠准教授が、「聴覚刺激は、視覚刺激に比べ警告信号として機能しやすいことが知られている。いろいろな情報が流れている中で注意を引き付けるのに有効」と評価しています。

スーパーやコンビニの現場では「音(サウンド)」の重要性はあまり認知されていませんが、作業効率アップや疲労感の回復、さらには販促活動のために、より音を利用する必要があるのではないでしょうか。

2011-09-04

今年のおでんは「和風惣菜」として売ろう!

毎年9月に入ると、コンビニでは70円均一セールなどの「おでんキャンペーン」が始まります。今年もセブンイレブンが先頭を切って9月1日からスタートしたので、さっそく今日のランチはおでんにしました。

Photo 台風が来ているため蒸し暑い日ですが、冷房の効いた部屋で久しぶりに食べるおでんはなかなかおいしいです。先週のブログでも「薬味」について書きましたが、セブンイレブンではいま3種類の薬味を用意しています。そこで三種類全てもらってきて、こんにゃくと大根には『八丁味噌』を、ちくわには『ゆず胡椒』を、そのほかの具には『和がらし』をそれぞれつけながら食べてみました。

数多くおでんを食べていると飽きることがありますが、薬味が違うだけでさまざまな味わいを楽しむことができるので飽きることがありません。

さて、そのおでんキャンペーンですが、コンビニ事情に詳しくない方は「何で、このまだ蒸し暑い日が続く時期にキャンペーンをやるの?」と思われるかも知れません。
実は、それには訳があります。

Photo_2 添付のグラフを見てください。[グラフ出所:月刊コンビニ10月号(商業界)]
見てお分かりのように、コンビニのおでん販売ピークは11月です。毎年、8月の旧盆を過ぎた頃から昼間はまだまだ気温が高いものの、夕方から夜にかけては風がどこか秋めいて虫の音なども聞こえてきます。この頃になると、冷やし麺やそうめんなど冷たいものは食べ飽きている人が多く、食の嗜好は温かいものへ変わり始めます。

そこで、この時期にキャンペーンを行なうことにより商品の認知度を高め、11月に向って上昇するグラフの山をできるだけ高くしようとしているのです。そうすることで季節指数的に低下する11月~4月にかけて、おでんの総販売量をより多く確保することができるからです。

さて、今年のコンビニ各社のおでんの販売はどうなるでしょうか。

私は最近のコンビニ利用者の変化から、おでんをいかに『和風惣菜』としてアピールできるかどうかが、決め手になるのではないかと思っています。なぜなら、最近では食品スーパーが弁当や惣菜に力を入れ、コンビニの中食部門から売上を奪っていますが、おでんだけは手薄になっているからです。

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