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2012-11-25

わかりやすい「ポジショニング」が需要を掘り起こす!

最近、コーチングの活用を売場の数値変化にまで結びつけた『コーチング研修:実践編』を実施していただく企業が増えてきました。

このコーチング実践編は、コーチング・サイクル(コミュニケーション版:PDCA)を「現状分析」⇒「仮説立案」⇒「実行」⇒「検証」という単品管理サイクルと一体化したもので、コーチングの「聞く」「ほめる・認める」「問いかける」スキルが必要とされます。

また、実践編では仮説立案のためにさまざまなマーケティング手法を活用していますが、その中でも現場で最も活用しやすいのが“ポジショニング”です。

ポジショニングとは、同じ市場で戦っている商品群の中で自社の商品がどんな位置づけにあるのかを確認し、そこからターゲットとなる消費者を絞り込み、販売戦略を立てていくためのマーケティング手法で、主にメーカーや企業の商品部またはバイヤーなどが活用しています。

Photo_2しかし、私はポジショニングを店長や売場担当者の仮説立案に活用しています。なぜなら、売場担当者は発注端末画面の中だけで売場を考えている傾向が強く、品揃えのバランスや陳列を見直したりすることができていないからです。また、お客様へアピールするための販促策を連想することも苦手な傾向にあります。

ところが、写真(レトルトカレー)のようなポジショニングに取り組んでもらうと、その過程で陳列の見直しや訴求ポイントの気づきなど、新たな発想が生まれてくるから不思議です。これは商品を大きな塊として捉えていて分かりにくかったものが、2つの軸で分類されたことでビジュアル化されて分かりやすくなったからです。


つい先日、友人に誘われてある居酒屋チェーン店に行ったところ、メニューにポジショニングがあり驚きました!

Photo_4 その居酒屋は焼酎の品揃えの良さを売りにしているのですが、品揃えの数が多いということは選びにくいことにもなりがちです。しかし、この居酒屋はお客が選びやすいように、「芋らしい強い味わい」と「フルーティー」、「香り豊か」と「香り控えめ」という2つの軸を作り、23種類もある芋焼酎の分かりやすいメニューを作っていました。

いくら品揃えが良くてもそれだけでは不十分です。お客様が選ぶ基準にマッチングした軸を作り、選びやすさと楽しさを演出することが大切です。

ぜひ、皆さんの店でも「どんな基準でお客様はこの商品を選ぶのだろう?」「どんな軸を作ったらお客様は楽しく選べるのだろう?」と従業員に問いかけ、ポジショニングを作って掲示することで、新たな需要を掘り起こせる売場を作っていただきたいと思います。

2012-11-18

ネット依存を解消するには「認め合う」ことが必要

Photo最近、新聞や雑誌、ネット上などで「デジタルデトックス(解毒)」という言葉を目にする機会が増えてきました。デジタルデトックスとは、スマートフォンやパソコンなどの情報機器の過度使用による心身への悪影響を防ぐため、ある一定期間デジタル環境から距離を置く、つまり使用しない(できない)環境に身を置くことをいいます。
[写真は私のスマートフォン]

「おいしいから」「好きだから」と好きな物を食べ過ぎて健康を損ね、ダイエットやプチ断食をしたり、断食道場でデトックスに励むという話はよく聞きますが、デジタル機器の使い過ぎでデトックスというのは初めて耳にしました。

しかし、かなり深刻な状況に陥っている人が増えているということを、10月22日(月)のNHKクローズアップ現代の『つながりから抜け出せない ~広がるネットコミュニケーション依存~』を見て知りました。

次の文章はNHK・ONLINEの番組紹介からです。

フェイスブックやツイッターなどの利用者が急増し、5000万人を突破。それに比例して、ネット上のコミュニケーションにのめり込んで仕事や生活に支障をきたす、“つながり依存”に陥る人が増えている。6月には、フェイスブックに夢中になった主婦が、高熱の1歳の息子を放置し死なせるという事件も起きた。厚生労働省の調査では、ネット依存が疑われる成人は全国で270万人、その多くが“つながり依存”だと専門家は指摘する。国立久里浜医療センターでは薬物と同様の依存性に注目、専門の外来を開設し治療法の開発に着手した。都内のIT関連会社社長は、自らパソコンの利用時間を制限し、崩壊寸前だった家庭を取り戻そうと闘い始めた。人々は、なぜ “つながり”に依存するのか?その実態とメカニズムを解明し、ネット時代のコミュニケーションのあり方を探る。

この番組の中で私が最も注目したのは「人々はなぜつながりに依存するのか?」という疑問に対して、発信した内容にコメントをもらえたりフェイスブックであれば「いいね!」の評価をもらえたりすることが発信者の承認欲求(自分を認めてほしいという欲求)を満たすことにつながっているからであると、専門家が分析していた点です。

つまり、現実の世界(職場や家庭、友人関係など)では認めてもらえなくても、ネットの世界ではコメントや「いいね!」の数から“認められている”と感じることができるため、次第にネット上の“つながり”に依存していくというのです。

ここまでくるとデジタル機器の扱い方の問題よりも、現実の人間関係とコミュニケーションに大きな問題があると考えるべきではないでしょうか。

私はコーチングの研修時に、「ほめなくてもいいから、お互い認め合いましょう」「認めているということを言葉にして伝えましょう」といつも話していますが、まだまだ多くの職場で一緒に働く仲間を『認め合う』ということはできていないのが現況のようです。

2012-11-11

厚生労働省の大卒3年目「業種別離職率」発表の目的は?

先週は日本経済新聞の朝刊に『働けない若者の危機』というタイトルで、「シューカツ受難」に関する連載記事があり、毎回とても興味深く読みました。

連載の中で私が特に興味を持ったのは厚生労働省がまとめた大卒3年目の業種ごとの離職率です。一般的に大卒の3年目離職率は約3割といわれています。厚生労働省の発表でも全産業の平均離職率は28.8%となっていますが、業種ごとには大きな開きがあることが分かります。

■教育、学習支援 48.8%
■宿泊、飲食サービス 48.5%
■生活関連サービス、娯楽 45.0%
■医療・福祉 38.6%
■不動産・物品賃貸 38.5%
■小売業 35.8%
■学術研究など 31.7%
■建設 27.6%
■卸売業 26.8%
■情報通信 25.1%
■運輸・郵便 20.8%
■金融・保険 18.9%
■製造業 15.6%
■電気・ガス・水道など 7.4%
■鉱業・採石 6.1%

離職率が高い上位にならぶのはサービス業ばかりです。
記事の本文ではサービス業は価格競争に陥りやすく、その価格競争のしわ寄せが人件費におよび長時間勤務や夜間・休日勤務などの労働強化につながりやすいと書かれていますが、それはサービス業だけの問題ではありません。

最近では多くのスーパーで競争戦略が取られていて、小売業でも値下げ競争が厳しくなっています。この傾向が進めば小売業でもサービス業と同様に離職率が上昇することが想定されます。なお、厚生労働省がこのようなデータを発表した理由については次のように書かれていました。

研修や教育制度が不十分な会社で経験を積めずに辞めれば、次に正社員として再就職することも難しくなる。入社前に学生が企業の実態を把握しやすくするため、離職率などの情報開示が必要との指摘もある。厚生労働省が産業別の離職率を初めて公表したのも、その要請に応えるためだ。

このような数値まで発表されるようになってくると小売業はより積極的に人材育成に力を入れ、研修や教育制度などの取り組みを学生に分かりやすく具体的に発信していかないと、ますます優秀な人材を確保できない時代になりそうです。

2012-11-04

コンビニの「個店対応」は加盟店だけの責任?

Photo 最近、都心部のセブンイレブンでは陳列棚の高い店が増えています。
中には、私の身長よりも高いところに商品があり、「こんなに高くしたらお年寄りなどは手が届かないのではないか」と思えるような高さの店もあります。

かつては商品を高く陳列することに否定的だったコンビニ業界ですが、最近では幅広い顧客のニーズに対応するため、売場面積の狭い店ではやむを得ず陳列棚を高くしているようです。しかし、単に陳列棚を増設して取り扱い商品数を増やしただけでは売上を伸ばすことができません。

10月10日(水)の日経MJには『コンビニ、売り場膨張』というタイトルで、下記のような内容が書かれていました(一部抜粋)。


想定する客層が広がるほど売場作りは難しくなる。セブンイレブンでは店に並ぶ商品は約2800だが、発注可能な商品リストは、たばこと雑誌を除いても4300品目以上に及ぶ。3年前に比べ約700品目も増やした。現場の発注負担をどう軽くするか。同社では今秋、「立地・客層に関係なく必要」と位置付ける基本商品をより明確にした。酒、加工食品、菓子、雑貨の4分野で約800品目。「背骨」となる商品群では加盟店が迷わないようにし、そのうえで商圏特性に合わせた品揃えを考えてもらう。

また、記事の最後には取材した記者の意見として「客層拡大、客数増を確かな流れとするためには、個店個店が商品構成を突き詰める努力が欠かせない」と、立地を見極めた商品構成の必要性が指摘されていました。

確かにその通りだとは思いますが、どれだけのコンビニ個店(経営者や店長)に立地を見極め、そのニーズに合わせた商品構成を考える力があるのでしょうか。また、それは加盟店だけの責任(役割)なのでしょうか。

コンビニはフランチャイズビジネスであることを考えると、立地を見極めてその商圏ニーズに合った品揃えを提案・指導することは本部の役割でもあります。なぜなら、加盟店は「継続的な経営指導」の対価も含めて、毎月多額のロイヤルティを本部に支払っているからです。

記者の方にはフランチャイズビジネスという仕組みをよく良く理解し、本部の「個店対応」指導についても言及していただきたかったと、記事を読んで思いました。

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