« 2012年11月 | トップページ | 2013年1月 »

2012-12-30

年の瀬に見た新旧2つの商売のあり方

Photo 年の瀬になると、いつもテレビのニュースなどで話題になるのがアメ横(東京・台東区)の賑わいぶりです。先日、近くまで出かける用事があったのでアメ横商店街をのぞいてみると、特に海産物を扱っている店の前は身動きできないくらいに人が出ていました。

いまや、食品スーパーや百貨店の正月関連売り場も商品は充実していて価格も安くなっていますが、アメ横に来る人にとっては価格や商品だけが目的ではないのでしょう。この人混みと販売員の掛け声に師走の雰囲気を感じているのだと思います。

消費者のニーズが多様化してさまざま小売業態が生まれ、インターネットとスマホなど通信機器の普及によりネット販売が日常的に利用されるようになっても、このような伝統的な商売のあり方は変わらないのだなということを改めて感じました。

その一方で、商売のあり方を大きく変えている事例にも遭遇しました。

そのひとつが、西武池袋本店(東京・豊島区)の「西武食品館 50円割引クーポン」です。

スーパーやコンビニではこのような割引クーポンを利用したことはありますが、百貨店では初めてだったので驚いてしまいました。また、実際に買い物に行ってみると、私が購入した揚げ物店や中華総菜店では、5人のうち2~3人はクーポンを出して利用していました。

さらに、買い物後には2013年1月6日(日)まで使える「クリスマスフェア 50円割引クーポン券」をいただき、クリスマスの時にもオードブルやローストビーフなどの購入時に利用させてもらいました。

西武池袋本店は、セブン&アイ・ホールディングスに入ってから新しい取り組みをさまざま行なっていますが、地下食品売り場はすっかり日常使いできるデパ地下になっています。この点については、2010年7月18日のブログ「西武池袋店が狙うのは『130万人の通行客』」で書きましたが、取締役であり
ヨークベニマルの社長でもある大高善興氏の戦略なのでしょう。

2012年の年末に、激動する小売業界の中で伝統的な売り方と大きく変化する新しい売り方、2つの商売のあり方を同時に見た思いがしました。

今年も、「石川和夫の流通業界ウォッチング」をお読みいただきありがとうございました。また、来年もより幅広い視点で情報を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2012-12-23

食品スーパーや惣菜店も「野菜スープ」で男性需要を開拓しよう!

今日の昼食はファミリーマートの「野菜スープ」と十六雑穀を使った「ひじきと鮭のおにぎり」、プラス「ファミマ プレミアムチキン」でした。

Fm 店に行くまでチキンを買うつもりはなかったのですが、カウンターで販売されているチキンを見て「10月中旬に発売された『ファミマ プレミアムチキン』が半月で計画の3倍以上の800万本を売り切ったため、販売を一時休止、18日から数量限定で再開した」という昨日の新聞記事を思い出し、衝動的に買ってしまいました。食べてみると、評判どおりに肉厚でしっかりとした味わいのあるおいしいチキンでした。

最近、コンビニではミネストローネスープやポトフなどの洋物から、けんちん汁や豚汁などの和物まで、野菜がたっぷりと入ったレンジ対応スープの品揃えが充実しています。もともと女性客を意識して開発した商品だと思いますが、私はよくおにぎりとの組み合わせで買っています。

数年前まではカップ麺とおにぎりという組み合わせが多かったのですが、いまは健康のことも考えて野菜がたっぷりと入ったスープを買うようにしています。私のような中高年男性は珍しいのかなと思っていましたが、意外と多いということを日本経済新聞(12月21日)に掲載されていた『オレの昼 野菜スープ付き』という記事を読んで知りました。


野菜がたくさん入ったスープを昼休みに弁当と一緒に食べる男性が増えている。外食店などで買って職場に持ち帰ったり、専用の携帯容器に詰めて自宅から持参したりしている。弁当だけでは栄養が偏ると考え、バランスのとれた食生活を心がけている。弁当と一緒に野菜スープを食べる人は女性に多かったが、食事に彩りを添えられるため男性も取り入れている。
コンビニエンスストアでもスープは男性に人気だ。ファミリーマートは11月発売の「1/2日分の野菜が摂れるスープ」(398円)の売れ行きが計画を上回り、購入者の6割が男性だ。独自に企画したスープ全体の販売も11月は前年同月比1割伸びた。

このような男性客のニーズ変化に対応できていないのが食品スーパーや持ち帰り惣菜店です。
いずれの業態もコンビニに市場を取られて厳しい状況にありますが、専門性を活かしてコンビニに対抗できるような野菜スープを作ることは可能だと思います。

ぜひ、大手コンビニにはまねのできない「地域性の高い食材や調味料」を使った独自性のある野菜スープを開発してほしいと思います。

2012-12-16

「食に対する意欲が低下している」若者への対処法は?

もともと食べることが好きな私ですが、今年は食品スーパー、コンビニエンスストア、持ち帰り惣菜チェーンなど、「食」への関わりが深い企業様で仕事をさせていただく機会が多く、「ますます食に対する興味と関心が高くなったな」と感じる1年でした。

しかし、我が家の大学生になる息子は食べることにあまり興味を示しません。このような特性は息子だけかと思っていたのですが、20~30歳代の若者に共通する傾向だということを知りました。

Photo 知るきっかけとなったのは、12月3日(月)の日本経済新聞の『経営の視点』に書かれていた「誰がマックを『食べた』のか」というタイトルの記事です。この記事では、マクドナルドの既存店売上高が7ヶ月連続のマイナスで、8年続いた年間の既存店売上高プラスが2012年で途切れる可能性があり、その要因がコンビニや牛丼、カフェチェーンなどとの業態間競合ではなく中食市場全体の落ち込みであるとしており、次のような分析記事が書かれていました。


外食どころか、好調と見られていた弁当・総菜などの中食市場も実はいまひとつ。厳しく出費を抑えている消費者の姿が浮かび上がってくる。とりわけマックが主戦場とする20~30歳代の食生活が変わりつつある。企業はその行動をとらえきれていないようだ。

出版不況を尻目に好調な雑誌がある。主婦向けの雑誌を手がけるオレンジページ(東京・新宿)が今年6月から月刊化した「食べようび」だ。20~30代向けをターゲットとした料理雑誌で、とことん読みやすさを追求している。使用する素材や調味料の形、量から料理の流れまですべて図解で記載。火の強さ、時間まで事細かく示し、一切迷うことなく1人分のメニューを作ることができる。しかも低額で。(中略)

外食不振について「食への欲求が低下している」と分析するのは電通総研の大屋洋子主任研究員だ。いつでもどこでも食べられる環境で、3食をしっかりとる生活パターンが崩れた。電通が食生活について調べたところ、10~20代の女性では7割が「食事を抜くことがある」と回答している。


このように食事を低額で簡単に済ませたり食事をしない消費者が増えたら、私の仕事先のような企業はどうしたら良いのでしょうか。今後は、子供や若者に企業側から接近して、食に対する意欲をかき立てるような長期的視点を持った新たな戦略が必要になりそうです。

2012-12-09

「デジタル」よりも意欲を引き出す「アナログ」の時計

Photo 私は企業研修やセミナーで講師をする時、いつもアナログ時計を持参しています。
ほとんどの企業やセミナー会場の演台、机には講師用に時計が置いてあるのですが、これがデジタル時計の場合に困ってしまうからです。

「どちらでも時間がわかれば同じではないの?」と思われる方がいるかも知れませんが違います。

デジタル時計は単純にいまの時刻を数字で表示するため、時刻をひと目で把握できるというメリットはあります。しかし、時間量を感覚的に捉えにくいというデメリットもあります。つまり、数値のみの表示であるため、経過した時間量や残りの時間量を感覚的に一瞬で把握することができません。

研修の時にこれでは困ります。なぜなら研修はいつも時間との戦いで、プログラムの進捗状況と時間の経過を常に計算しながら進めなければならないからです。

その点、アナログ時計は時刻表示と同時に「円グラフ」という素晴らしい機能を持っているので助かります。つまり、時針、分針、秒針が経過した時間や残りの時間をひと目でわかりやすく示してくれているのです。

また、アナログ時計は心理学的にも大きなメリットがあると言われています。それは、アナログ時計だと直感的に残りの時間がわかるため、「帰るまでにあと1時間半、それまでに終わらせるよう仕事のピッチを上げよう」などと、自分自身で意欲を高めたり行動を速めたりしようとする心理が働くという効果です。


この効果については、6月7日(木)の日本経済新聞に次のような記事で科学的にも証明されていました。

授業中に残り時間を示すと生徒の疲労感が軽減され、やる気が少し湧いてくる――。疲労と意欲の関係を研究する理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市)の水野敬特別研究員(33)らのグループが2つの感情に影響する脳の働きを明らかにした。
水野さんは19~37歳の男女17人に、パソコンの画面に次々と数字を表示して記憶力を試す課題を授業時間と同じ45分間与えた。同時に残り時間を計25回画面に示し「機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)」を使って、意欲を感じる脳の側坐核の血流を調べた。
実験の結果、残り時間の提示で側坐核の血流が活発になり、側坐核の活動が高いほど疲れを感じさせる眼窩(がんか)前頭野の活動が低くなることが分かった。水野さんらのグループは今後、側坐核と眼窩前頭野の間で働く脳内物質を解明する。

この記事を読んで以来、研修が午後に入り参加者の集中力が途切れそうになってきた時には、「このワークは14時30分までを予定しています。ワーク終了後は休憩時間になります」と残り時間を明確にして、参加者の取り組み意欲を引き出す工夫をしています。

2012-12-02

「100%MALT(モルト)」の発売で酒類のPB化が進む?

いま、コンビニエンスストアやスーパーの食品売り場はPB(プライベートブランド=自主企画)商品のオンパレードです。それもひと昔前のような知名度の低い会社(ブランド)が作ったPBではなく、それぞれの分野の業界トップ会社が作ったPBが陳列されています。

酒類分野も同様でイオンの『麦の薫り』はサントリー、『みがき麦』はサッポロ、セブン&アイ・ホールディングスの『ザ・ブリュー』はサントリーが作っています。しかし、これらはあくまでもビールではなく、ビールや発泡酒とは別の原料、製法で作られたビール風味のアルコール飲料、つまり「第三のビール」です。

「セブンイレブンには、『グランドキリン』や『アサヒ ザ・エクストラ』があるじゃないの?」と思われる方がいるかも知れませんが、これらの商品はPBではありません。セブンイレブンだけの販売ですが、メーカーが自社のロゴで特定の小売業者に供給する専売商品で「留め型」という位置づけがされています。
100_malt
そのビール分野にもついにPBが現れました。それがサッポロビールの『100%MALT(モルト)』です。
11月28日(水)の日経MJには、1面トップで次のように紹介されていました。

サッポロビールがセブン&アイ・ホールディングスと共同開発したPB(プライベートブランド=自主企画)ビール「100%MALT(モルト)」が27日発売された。ビール系飲料のうちブランドの指名買いが多いビールは、小売業のロゴがつくPBで前例のない「最後の聖域」だった。市場縮小のなか、安定的に売れる新定番商品の創造へ、サッポロは一線を越える決断を下した。同社が投じた一石は業界にどんな波紋を及ぼすか。

ここ最近、セブンイレブンでは酒類の品揃え強化をしていることが売場を見るとわかります。まず、冷蔵ケースの売場が扉2枚から3枚になった店が増えました。次に、常温売場もゴンドラ2本から3本に増えると同時に、ワインを立てずに横にして陳列する什器を導入することで陳列スペースをより拡大しています。

酒類のディスカウント店やスーパーとは購入動機が異なるため、コンビニでは酒類を購入する客の多くが惣菜や菓子などのつまみを一緒に購入しています。その割合は3~4割にもなると言われているため、セブンイレブンでは酒類の品揃えを強化することで他チェーンと差別化を図っているのだと思います。

今回の『100%MALT(モルト)』の販売状況によっては酒類のPB化が一気に進むことも考えられます。今後、セブンイレブンのビール売場で『100%MALT(モルト)』の陳列がどのように変化していくのか、その動きに注目をしたいと思います。

« 2012年11月 | トップページ | 2013年1月 »