会社からの「期待感」がシニア社員を活かす!
30~40代の管理職者を対象とした研修をしている中で、コミュニケーション上の悩み(問題点)を聞くと、「年上の部下とのコミュニケーション」を挙げる人が増えています。
その内容を具体的に聞いてみると、
「自分よりも知識や経験があるので、どのように指示を出したら良いか迷う」
「自分のやり方に固執して、新しいやり方を取り入れようとしない人が多い」
「年上のため、注意をしたり叱ったりすることができない」
というような悩み(問題点)が出てきます。
さらに聞き進めていくと、「年上の部下」とは定年後に再雇用されたシニア社員であることが多く、そのシニア社員が元上司であった場合には悩みがより深刻になっています。
そこで、「研修の中で、年上の部下に対する効果的なコミュニケーションの取り方も教えてほしい」という要望を人事担当者からいただくのですが、年下の管理職者に教えるだけでは不十分です。なぜなら、多くの企業が採用している再雇用制度では、シニア社員の「能力」や「やる気」を引き出せないからです。
シニア社員の働き方と待遇をみると、
「定年時と同様の仕事は継続するが、職責は低下する」
「フルタイムで勤務するが、残業はなし、転勤もしない」
「能力に関係なく賃金は一律、退職時の6割程度」
「勤務評価・賞与はなし」
このような制度では、「再雇用したシニア社員には期待をしていない」という会社からの暗黙のメッセージをシニア社員は感じ取ってしまいます。その結果、持っている知識や経験、能力を職場のために発揮しようという意欲は薄れ、年下の上司に対しても協力的ではなくなってしまうと考えられます。
そこで必要になるのが「勤務評価の継続」と「事前研修」です。
まず、賃金の決定は能力・仕事・成果に基づくという原則を守り、再雇用であっても年2回の勤務評価は行い、次年度の賃金見直しに活用するか賞与を支給して個々人の能力と働きぶりを認めます。
次に、定年退職前の「事前研修」の実施です。
研修では、再雇用はいままでの仕事(雇用関係)の延長ではなく、新しい役割が求められていることをシニア社員にしっかりと理解してもらうことからスタートします。その上で、役割に合わせて自分はどのような点に注意をして勤務すべきなのか、顧客や職場に対してどんな貢献ができるのかなど、働く意識や行動を再確認してもらう場を提供します。
今後、ますます働き手が不足する中で、シニア社員の活用は経営上の重要な課題になります。全従業員の意欲と能力をより引き出し、活用して生産性を向上させるためにも、シニア社員に対する「福祉的雇用制度」は見直しが必要な時期を迎えているのではないでしょうか。